電子書籍が普及しはじめてだいぶたちますが、現状ではまだまだ紙の本がメインです。しかし、大学の受験時に使う学習参考書を考えてみると、持ち運びが容易な電子書籍を活用する意義は大いにあります。今回は、受験参考書としての電子書籍、サブスクの活用について解説します。
電子書籍は参考書と相性がいい
電子書籍は、紙の本をデジタル化して読めるようにしたものです。スマホやタブレットなど何らかの電子デバイスの画面で紙の本が読めることをイメージしてもらえればよいでしょう。電子書籍には大きく分けて2種類あり、紙の体裁をそのままデジタルにした定形のタイプと、文字と図の情報だけを持っていて文字サイズは可変でき、サイズ変更によりページ数が増減していくタイプがあります。前者は雑誌など、後者は小説などに向いており、参考書にはどちらのタイプもあります。
実は、書類や本の紙情報を電子化するという流れは1980年頃からと、かなり前からあり、電子書籍を配信する事業者も、主だったものだけで20種を超えるほど提供されていますが、まだ紙の本を一掃するほどには普及していないようです。そうはいっても、受験や学習の参考書として使うことを考えると、とても利便性が高いので積極的に活用していくと有利でしょう。費用面でも大きく抑えることができます。
受験勉強に役立つ、電子参考書の活用法
電子書籍の利便性としては、まず紙の重量がまったくないことがあげられます。これはデジタル化のメリットとしては当たり前過ぎますが、ページ数の多い参考書を何冊も持って歩くことを考えると、とても利便性が高いといえます。すでに電子辞書やスマホに辞書アプリを入れて勉強に活用している人もいるかと思いますが、これに慣れると重い辞書を何冊も持ち歩くことは考えられないはずです。
また、気軽に外や通学時の電車内で勉強できるという点も、電子書籍ならではの強みです。入学試験時、遠方に出向いて前夜に勉強するといった場面があるかもしれません。そのとき、紙では不可能な何十冊という量の参考書を持ち歩いて外出することもわけなく実現できます。
また、音声読み上げ機能を使うと、歩きながらや入浴時など、勉強時間以外の時間を有効活用して暗記モノなどを効率よく進めたりすることもできます。
さらに、Kindleにはハイライトという、任意の重要箇所に蛍光ペンを引く機能があります。色分けやメモを追加することも可能で、参考書を読む際にはとても便利です。なお、ハイライトした部分は、後ほどリスト化してチェックすることもできます。このハイライトは他人とも共有ができるので、うまく使えば重要な部分を客観視でき、理解を深めるために役立てることができます。
紙の書籍と電子書籍の比較
項目 | 紙の書籍 | 電子書籍 |
---|---|---|
複数本の持ち歩き | 重い | 端末の重さのみ |
保管スペース | かさばる | 端末の大きさのみ |
線引き | 自由 | 可(制限あり) |
メモや書き込み | 自由 | 可(制限あり) |
しおり付け | 自由 | 可 |
検索 | 目次、索引 | 文字検索可(リフロー版) |
音声読み上げ | なし | 可(サービスによる) |
電源 | 不要 | 必要 |
書籍の種類 | 豊富 | サービスにより限定的 |
価格 | 定価、中古価格 | 割引もあり |
使用後の買取 | 可 | 不可 |
書籍費の節約方法 | 図書館利用 | サブスクサービス利用 |
サブスクなら参考書の購入費用を抑えられる
さらに大きなメリットとして、電子書籍ではサブスクリプション(サブスク)サービスが活用できることがあげられます。音楽やビデオを制限なく楽しめるサービスとしてなじみがあると思いますが、サブスクとは、月単位や年単位というように、利用する期間を区切って契約し、その期間は読み放題、あるいは限定冊数を読めるというサービスです。
これをうまく使うことにより、1冊あたりの価格を安く抑えることができ、効率的に多くの知識をつけることができます。たくさんの参考書を使いたい場合にとても有利です。最初は自分に合う参考書が分からないこともありますので、「いろいろな参考書を試してみたい」というケースにも無駄な出費をせずに済みます。自分に合わなかったり、内容に不満を感じたら、ちゅうちょせず別の参考書に乗り換えることもできます。
オススメのサブスクサービス
電子書籍のサブスクサービスは15を超えるほど提供されていますが、残念ながらそのほとんどがコミックスや雑誌向けになっています。参考書も提供されているサブスクは、Amazon Kindleの読み放題サービス「Kindle Unlimited」とU-NEXTのみで、ほかに参考書専用の読み放題サービスとして「PORTO(Studyplusブックに移行)」があります。
受験参考書の提供があるサブスクサービス
Kindle Unlimited(読み放題) | 980円(月額) |
---|---|
U-NEXT | 2189円(月額) |
PORTO | 1078円(月額) |
今すぐ参考書目的で活用するのであれば、書籍数が多く総合的網羅されている「Kindle Unlimited(月額980円)」か「PORTO(月額1078円)」がおすすめです。月に数冊使えば元をとることができるでしょう。「U-NEXT」はビデオやコミックスがメインコンテンツで料金も月額2189円とやや高めになっています。
・Kindle Unlimited
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/hz/subscribe/ku?ref_=sv_nav_ebook_2&_encoding=UTF8&shoppingPortalEnabled=true
・PORTO(ポルト)
https://porto-book.jp
なお、この「PORTO」ですが、学習管理アプリ「Studyplus」が提供する「Studyplusブック」が2022年1月からサービスが始まり、そちらに段階的に統合される予定になっています。月額980円で参考書200冊以上が利用できる「Studyplusブック読み放題」という、ほぼ同様のサービスとして提供されることになっています。2021年末時点では、まだ開始されていませんが、サービスが始まり次第こちらを使うようにするとよいでしょう。
・Studyplusブック
https://book-code.studyplus.jp
電子書籍ならではの注意点
紙の参考書の圧倒的な出版数に対して、電子書籍で出版されている数はまだまだ少ないのが現状です。サブスクになるとさらに数が減ってしまいます。
Amazonの「教育・学参・受験」内にある「高校教科書・参考書」というカテゴリを見てみると、紙の本が6万冊以上あるのに対し、Kindle本(買い切り)だと1000冊以上と減り、読み放題では615冊しかありません。 PORTO(Studyplus)では約200冊以上の配信となっています。どのような参考書があるのかは、あらかじめ検索して確認することができますので、まずは使えそうな参考書があるか調べてから契約するようにしましょう。
各サービスでの書籍数(高校教科書・参考書)2021/12月現在
Amazon(紙の書籍) | 60,000冊以上 | ||
---|---|---|---|
電子書籍 | Kindle本(買い切り) | 1,000冊以上 | |
サブスク | Kindle Unlimited(読み放題) | 615冊 | |
PORTO | 約200冊以上 |
電子書籍のサービスはサブスクでも買い切り型であっても、紙の本と違い所有するのではなく、料金を払い借りて閲覧する権利を得ているだけです。何らかの理由で特定の本が提供されなくなったり、めったにありませんが、サービスそのものが閉鎖されて読めなくなってもこれまで支払った料金は返金されません。
学習参考書の場合、「一生手元に置いておきたい」ということはないと思いますので、大きな問題にはならないでしょうが、記念にとっておきたいような辞書などがあれば、別途紙の本として購入した方がいいかもしれません。もちろんサブスクを解約した後は、その配信先からダウンロードした読み放題の電子書籍を読むことができなくなります。
気になった参考書はどんどんダウンロードするとよいのですが、読み放題のKindle Unlimitedであっても同時貸し出し(端末へのダウンロード保存)数には10冊(条件により20冊)という上限がありますので注意してください。これは同時に保存しておける冊数の制限です。不要になった参考書は端末から削除すれば、新たにダウンロードすることが可能です。
デジタルならではのデメリットも
デジタル特有のデメリットもあります。まず、発光した画面を見続けるので、目への負担が大きくなります。目に疲労感を覚えた時には、負担を軽減するために、通常のスクリーンだけでなくモノクロの反射型液晶を使った電子書籍専用端末を併用するといいかもしれません。
また、複数の電子参考書のページを開いたまま参照するという作業は難しくなります。同様に、ページが離れた箇所をサッと確認するという操作もしにくいです。ハイライト以外、余白に自由にメモをするということもできません。このあたりは紙に軍配が上がります。
電子書籍を使うには?
電子書籍を閲覧するには、パソコンやタブレット、スマホなどが必要です。Amazon Kindleなどの電子書籍専用端末でも構いませんが、モノクロ表示で小さめですので、必須とは考えずに目の負担軽減や好みなどで選ぶとよいでしょう。もっとも便利なのはiPadやAndroidなどのタブレット端末です。安価なAmazon Fireタブレットでもよいでしょう。タブレットならカラー表示なので、強調表示や図なども見やすい点でもメリットになります。
支払いはどうする? 高校生はプリペイドカードを活用
もうひとつ、サブスクの支払いにクレジットカードが基本となる点も注意が必要です。高校生はクレジットカードを持つことができません。親にアカウントを管理してもらったり、プリペイドカードやギフトカードを活用する必要があるでしょう。
Kindle Unlimitedでは、デビットカード、プリペイドカード、携帯(キャリア)決済、Paidy、LINE PAYでも支払うことができます。Amazonギフト券は使えないので注意してください。また、PORTOではカード会社発行のプリペイドカードやギフトカードが支払いに使えます。うまく活用するようにしましょう。
電子書籍の参考書は、サブスクを使うことで、意欲さえあれば予算をあまりかけず、効率的に学習することができます。みなさんも自分に合ったやり方を見つけて、受験勉強を乗り切ってください。