大学の選び方

蔵書数900万冊以上!大学の学びや研究を支える【大学図書館】がスゴイ。高校生でも利用可能な図書館も!

大学にはさまざまな施設があり、図書館もその一つです。憧れの大学の図書館を知ることが、大学受験のモチベーションアップにつながるかもしれません。そこで今回は、大学の図書館の役割や近年の変化、蔵書数の多い大学図書館、デザインも魅力的な図書館など、意外に知らない大学図書館の基本について紹介します。

大学には必ず図書館がある

規模や蔵書数に違いはありますが、実は大学には必ず図書館があります。なぜなら、文部科学省の「大学設置基準」で大学には図書館を設置することが定められているからです。ちなみに「大学設置基準」とは、「学校教育法」という法律に基づいた文部科学省の省令です。

大学設置基準
第36条(一部抜粋) 大学は、その組織及び規模に応じ、少なくとも次に掲げる専用の施設を備えた校舎を有するものとする。
図書館、医務室、学生自習室、学生控室

第38条(一部抜粋)
大学は、学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備えるものとする。

1つの大学に複数の図書館がある場合も多い

大学によっては、学部や学年でキャンパスが分かれている場合があります。その場合、それぞれのキャンパスに図書館が設置されていることもよくあります。小規模の大学ではメインキャンパスに図書館を、それ以外のキャンパスには学内に図書室を備えている場合もあります。

キャンパスごとに図書館がある大学の例

・東京大学 附属図書館
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja

東京大学には、本郷キャンパス、駒場キャンパス、柏キャンパスの3つのキャンパスがあり、本郷は「総合図書館」、駒場は「駒場図書館」、柏は「柏図書館」とそれぞれ図書館を備えています。さらに独立した建物ではありませんが、各学部や研究所などに部局図書館・図書室と呼ばれる場所が27カ所あり、研究分野に関わる専門書などを備えています。東京大学では、それらすべてを合わせて東京大学附属図書館と呼んでいます。

<東京大学総合図書館紹介動画:ようこそ総合図書館へ・2021>

大学図書館の目的・役割とは?

大学の図書館は、ただ「大学にある図書館」というだけではありません。在籍する大学生の学習や、大学が行う高等教育と学術研究活動を支えるのが大きな目的であり役割です。そのため、一般的な図書館にあるような書籍・雑誌にとどまらず、大学の教育・研究に関わる資料を多数そろえているのが特徴です。

学術情報のデジタル化進展による大学図書館の変化

ただし、大学図書館にある書籍・資料の姿は少しずつ変わってきています。これまでは、書籍や資料の多くが「紙」の形でしたが、身の回りで電子書籍や電子コミックが普及してきていることからわかるように、さまざまな情報がデジタル化されつつあります。

大学図書館も例外ではありません。これまで紙が主流だった学術雑誌が、デジタル化された学術雑誌――電子ジャーナルに徐々に置き換わってきています。今のところ、電子ジャーナルは理工系や医学系の雑誌が多いようですが、人文社会系でも増えてきています。

実際、文部科学省が公表している大学図書館に関するデータでは、利用できる電子ジャーナルの種類が増える一方で、海外の雑誌の購入種類数は減ってきていることが報告されています。

10年間の大学図書館データの変化(2011年⇒2021年)

大学図書館に関するデータ 2011年 2021年
電子ジャーナル利用可能種類数 3273種類 5847種類 ↑
洋雑誌購入種類数 21万1000種類 8万2000種類 ↓

ただし、絶対数ではまだまだ雑誌のほうが、電子ジャーナルより圧倒的に多い状況です。また、デジタル化が進んでも大学図書館の印刷物をすべてデジタルに置き換えることは想定されていません。

コロナ禍で今後はデジタル化進展がさらに重要に

2020年から続く新型コロナウイルス感染症の流行も、大学図書館のデジタル化の流れを推し進める一因となっています。大学の研究などを途切れさせないためには、コロナ禍などで実際に大学図書館に足を運ぶことが難しいときでも、多様な研究データや学術情報にどこからでもオンラインでアクセスできる環境、仕組みが必要だからです。

個々の大学が、蔵書や学術情報のデジタル化に取り組むのはもちろん、文部科学省でも世の中の変化に応じた大学図書館の役割や機能などについて、「オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会」を設置し、検討を重ねているところです。

学生が議論をしながら学ぶラーニング・コモンズも設置

図書館は黙って本を読んで勉強をするところ――そんなイメージも大学図書館では変わってきています。もちろん、従来のように静かに資料と向き合うスペースは確保されていますが、比較的新しく建てられた大学図書館を中心に、学生が集まって図書館の資料などから得られる情報を用いて議論をしながら学びを深めていく場所「ラーニング・コモンズ」を用意するところが増えています。

ラーニング・コモンズを備えている大学図書館の例

京都大学図書館、関西大学図書館、法政大学図書館、東京都立大学図書館など多数

大学図書館の蔵書数ナンバー1は?

多数の書籍や研究資料を備えている大学図書館は、「知の宝庫」と呼ばれることもあります。では、具体的に大学図書館にはどのくらいの本があるのでしょうか。

文部科学省のデータによると、日本のすべての大学図書館の蔵書を合計すると3億3691.6万冊になります。これを、学生の人数で割ると一人あたりの蔵書数は105.3冊です。

東大の附属図書館は国会図書館に次ぐ蔵書数

本の多さ=大学図書館の価値ではありませんが、ここでは参考までに日本の大学図書館の蔵書数トップ5を見てみましょう。なお、数字は各大学の公式サイトによるもので、図書館以外の大学施設にある蔵書を含んでいる場合もあります。

日本の大学図書館の蔵書数トップ5

順位 大学 大学図書館の蔵書数
1位 東京大学 991万冊
2位 京都大学 724万冊
3位 早稲田大学 580万冊超
4位 日本大学 約550万冊以上
5位 慶應義塾大学 約500万冊

ちなみに東京大学は、国立国会図書館(約1193万点)に次いで日本で2番目に蔵書数が多い図書館となっています。ある調査では、以下蔵書数ランキングの11位までを大学の図書館が占めていて、まさにさまざまな「知」が集約されている場所と言えるでしょう。

特定分野の資料で知られる大学図書館も

大学図書館の中には、ある特定分野の書籍や資料の収集に力を入れているところもあります。例えば、企業の社史やデザイン関係のカタログのように市販されていないものや、大学の創設者に関する書籍・資料などです。他の公共図書館などでは扱っていない資料も多く、非常に価値がある場合もあります。もちろん、その分野を研究したい人にとっては資料として大いに有用です。

特定分野の書籍・資料を収集している大学図書館の例

・横浜商科大学図書館 社史コレクション(松本記念文庫)
https://library.shodai.ac.jp/kinen.html
初代の松本武雄学長の意向により、以前から経営史や企業史の資料を収集しており、1986年に「松本記念文庫」として設置。国内外の社史・経営史を数多く収蔵しています。
※社史の収集を行っている大学図書館は他にも多数あります。

・明治学院大学図書館 付属日本近代音楽館
https://www.meijigakuin.ac.jp/library/amjm/
日本の近代・現代音楽を対象とする専門資料館で、明治以降の日本の洋楽に関する資料を収蔵しています。山田耕筰や芥川也寸志といった日本の著名作曲家の自筆譜や録音資料などもあります。

・奈良大学図書館
https://library.nara-u.ac.jp/
歴史・文化財に関する専門書が豊富で、特に2014年に日本考古学協会から寄贈を受けたことで、現在では15万冊以上の文化財専門書をそろえています。世界最古の印刷物とも言われる『百万塔陀羅尼経』やダーウィンの『種の起源』初版本などもあります。

大学図書館を利用できるのは?

大学の図書館を利用できるのは、基本的にはそれぞれの大学の学生や教職員です。しかし、大学図書館は学外の人に門戸を閉ざしているわけではありません。

文部科学省も、大学図書館の機能や役割に触れた文書の中で「大学図書館としても、一般市民に対する開放をはじめ、展示会や講習会の実施など、保有する情報資源や人材を活用して、社会・地域連携に積極的に取り組む必要がある」
と記載しています。

実際、その大学の学生や教職員でなくても、例えば何らかの連携をしている大学の学生や卒業生などであれば、(所定の手続きは必要ですが)大学図書館を利用できる場合がほとんどです。

大学とはまったく関係のない一般の人の場合

一般の人の場合は、利用のハードルがやや高くなります。一般の利用は不可という大学図書館も少なくありません。また、利用できる場合も、「公共図書館にない資料を閲覧したい場合に、公共図書館の紹介状を用意した上で事前予約」といった手続きが必要になる大学図書館が多いようです。

特に、現在は新型コロナ予防の観点から、一般の人の利用を中止あるいは厳しく制限している場合があります。ただコロナ禍が収まれば、感染対策を理由にした制限はいずれ解除されるはずです。

高校生でも利用が可能な大学図書館の例

では、高校生が利用できる大学図書館はあるのでしょうか? 高校生も「一般の人」に含まれると考えられるため、利用のハードルは高めです。

ただ、その大学を志望している場合、キャンパスツアーなどを利用すれば、大学図書館の外観を見学することは十分に可能です。また下記に挙げるように、一部の大学図書館では高校生の利用も可能です。志望する大学の図書館については、大学の公式サイトで確認してみるとよいでしょう。

・昭和女子大学図書館
https://library.swu.ac.jp/use/u_other/u_other-2
一般公開はしていませんが、高校生に対してのみ、大学の試験期間を除いた土曜日と大学の夏休み期間の9時~16時まで、図書館を開放しています。女子大学ですが、男子高校生も利用可能です。

・国際教養大学図書館
https://web.aiu.ac.jp/library/outline/
一般の人でも、午前10時~午後6時まで利用可能です(新型コロナの状況などで変更になる可能性もあり)。

・武蔵大学図書館
https://www.musashi.ac.jp/library/riyou_annai/sonota/sonota.html

2022年の夏休み期間には、高校生・大学受験生に大学図書館を開放する取り組みを行っていました。2023年度以降も実施されるかもしれないので、要チェックです。
※他にも、夏休み期間のみ高校生に図書館を開放する大学はあります。

著名な建築家が設計した大学図書館

大学図書館には、著名な建築家が設計を手がけたものもあります。建物として素晴らしいのはもちろん、図書館の機能を生かすように考えられたものもあり、一見の価値あり! ここでは、3つの図書館を紹介します。

美しいアーチ状が印象的な多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)

多摩美術大学の八王子図書館を設計したのは、「せんだいメディアテーク」や台湾の「高雄国家体育場」など国内外で評価されている建築家の伊東豊雄氏。八王子図書館は建物自体がアーチ状になっていて、ガラスとコンクリート壁面が一体化した外観が特徴です。
※見学 現在は感染症予防のため、学外の人による見学は中止しています。

・多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)
https://libopac.tamabi.ac.jp/drupal/ja/hachioji

開放的で未来的なデザインの成蹊大学情報図書館

設計を手がけたのは、世界各地での災害支援住宅の取り組みなどが知られる建築家・坂茂氏。外観にもガラスを多用し、館内にはガラス張りの「プラネット」(グループ閲覧室)などが配置され、従来の図書館とは一線を画す開放的で未来的なイメージです。2008年度のグッドデザイン賞を受賞しています。
※見学 コロナ禍で当面の間見学を中止していますが、成蹊大学に進学希望の受験生と保護者の見学は随時受付中です。

・成蹊大学情報図書館
https://www.seikei.ac.jp/university/library/

秋田杉で作られた傘型屋根の国際教養大学図書館(中嶋記念図書館)

「本のコロセウム」をテーマに作られた、まるで劇場のようなデザインの図書館。東京工業大学名誉教授でもある建築家の仙田満氏の代表作の一つです。秋田杉と伝統技術を生かした傘型屋根から成る美しい空間は、学びや読書に集中できそうです。村野藤吾賞、日本建築家協会賞国際建築賞2010、グッドデザイン賞などを受賞しています。
※見学 前述のとおり学外者も利用可能です。

・国際教養大学の中嶋記念図書館
https://web.aiu.ac.jp/library/outline/

気になる大学図書館を見学して、モチベーションをアップ!

ここまで見てきたように、一部の大学図書館では高校生でも館内を見学したり利用したりが可能です。大学図書館は、大学の「知」が集まっている場所。高校生の皆さんは、大学受験のモチベーションを高めるためにも、志望する大学の図書館を一度見に行ってみるとよいかもしれませんよ。

注意)見学・利用については、必ず各大学の公式サイトで最新の情報を確認してください。