大学受験の基礎知識

オンライン授業でも卒業できる【大学通信教育】。長引くコロナ禍で注目!

コロナ禍が長引くことで、大学でもオンライン学習が増えてきています。このことによって、通信教育が注目されるようになっています。大学通信教育は、通学せずに大学での学びを得られるだけでなく、一般の社会人が仕事を続けながら学問を深める機会にもなります。今回は、大学課程をオンラインで修得できる『大学通信教育』について解説します。

『大学通信教育』はさまざまな人に開かれている

大学通信教育とは、印刷教材やインターネットを活用して遠隔学習する大学の制度です。印刷、またはインターネットで配信された教材など、あるいは講義の動画を視聴したり、課題を提出したりするなどの自学により学習を進めていきます。

大学通信教育は、希望する大学が自宅から遠く通うのが困難な人、障がいがあるなどの理由で通学がしにくい人、あるいは会社に勤めながら学びを深めたい社会人、何らかの理由で進学を諦めた人、最短の労力や予算で学士を得たい人など、さまざまな人に活用されています。

コロナ禍でネット通信教育が見直される

今、人との接触の少ない通信教育が見直されています。長引くコロナ禍により、今まで通信教育では修得しにくかった研究でも、工夫してオンライン授業を行わなくてはならなくなりました。そこで、結果的に多くの大学でオンラインによる授業が取り入れられるようになりました。

もちろん、人が直接教室に集まって行う対面授業は優れた面をたくさん持っています。しかし、コロナ禍で多くの大学授業が、ネット会議やチャット、YouTubeなどの動画サイト、SNSなどのインターネットを駆使した通信教育が、通常の大学でも浸透してきました。そういう遠隔授業が、以前から実践されてきたのが大学通信教育といえるでしょう。

一般の大学との違いは?

大学通信教育は、通常の大学とどのように異なるのでしょうか。通信をメインに大学の授業を受ける大学通信教育は、「通信制大学」「オンライン大学」「eスクール」などとも呼ばれますが、この大学通信教育という名称は、日本の学校教育法によって定められた正規の大学課程となります。

入学は年2回、卒業すれば「学士」の学位

卒業すれば、通常の大学と同様に「学士」の学位が与えられます。入学時には大学入学資格が必要ですが、筆記試験による入学試験はなく、原則として書類選考(大学によっては面接もある)で入学できます。また、入学のタイミングが、毎年4月と10月の2期に分かれていることも特徴となっています。

一般の大学入試では、受験1回あたりに3万5000円(私立大学の場合)ほどかかりますが、大学通信教育には受験がありません。入学したい1校のみに対して支払う入学諸費に含まれる選考料が受験料と考えればいいでしょう。受験で複数の大学に受験料や願書の料金、受験時の交通や宿泊費などを支払うよりも、安価に済むことも大学通信教育のメリットといえるでしょう。

単位取得数は通常の大学と同数

卒業までの期間も大学で最短4年、短大では最短3年、または2年と通学課程変わりなく、1単位の授業科目を45時間の学修を必要とすること、15時間~30時間までの範囲で定める時間の授業をもって1単位とすることもまったく同じです。

通信教育があるのは私学のみ。学費も安価

ただし、今のところ通信教育が用意されているのは、国公立大学にはなく、すべて私立大学となります。国公立大学に絞って目指している場合には、残念ながら通信教育は向きません。学費は、通学課程よりも安価に設定されていることが多くなっています。

ネット環境とパソコンはほぼ必須

大学通信教育を検討しているなら、パソコンとインターネット環境は、ほぼ必須と考えておいたほうが良いでしょう。動画を視聴したりネット会議を行うので、モバイル回線ではなく固定の光回線がベストです。

パソコンは高性能なモデルは不要ですが、必須のスペックやWindowsかmacOSかなどの条件は大学が公開していますので、そろえる前にチェックしておきましょう。

実際の購入や操作方法のサポートは、大学である程度受けることはできるはずです。なお放送大学は、テレビのBS放送とFMラジオを活用しているので、パソコンやネット環境がなくてもかまいません。

『大学通信教育』で学べることとは?

文系が多く理系は少なめ。教員免許や建築士などの資格も取得可能

では大学通信教育では、どのようなことが学べるのでしょうか。学部学科を見ると文系が多く、文学、法学、経済、教育などほぼ網羅されています。芸術やデザイン系もそろっています。在学中に普通教員免許の取得も可能です(教育実習は別に必要となる)。

一方理系では、一級/二級建築士の資格取得が可能な建築、デザイン系学科が主になります。建築系を除く理系はやや少なく、

・早稲田大学 人間科学部
・帝京大学 理工学部
・北海道情報大学 経営情報学部
・東京通信大学 情報マネジメント学部
・サイバー大学 IT総合学部、
・放送大学教養学部教養学科(自然と環境コース、情報コース)

あたりに絞られます。
医学、薬学系の大学は現時点ではありません。

<今すぐわかる!サイバー大学>

放送大学について

放送大学だけは、少し特殊なので解説しておきましょう。テレビのBS放送やラジオで授業を配信しているので、存在を知っている方も多いかと思います。放送大学学園という学校法人が運営しているので私立大学になり、文部科学省と総務省が所管しています。「全科履修生」として修了すれば、学士の学位が与えられます。教養学部教養学科のみで、六つのコースに分かれていて、好きな科目のみを選択して学ぶことも可能です。

面接授業、SNS、イベントなどで学生らしいキャンパスライフも

面接授業は一定数必要。ただしオンラインもあり

大学通信教育にて、主に対面で行う面接授業のことを「スクーリング」と呼んでいます。卒業には大学で30単位以上をスクーリングにて修得しなければならないことになっています。

このスクーリングも、ネット会議などを使ってオンラインで行うケースも多く、2001年の大学通信教育設置基準の一部改正により、大学で履修する124単位すべてをインターネットによる授業により単位の取得が可能となりました。この授業には、メディアを利用して行う授業として、オンデマンドの動画視聴も使われています。

オンラインでのスクーリングで、一度も大学に通わずに卒業も

インターネット講義だけで卒業まで可能な大学も一部あり、サイバー大学 IT総合学部は、一度も大学に通わずに通信教育のみで卒業が可能とうたっています。早稲田大学人間科学部「eスクール」では、在学期間中は最少1回のスクーリングとされ、選択する科目によってはスクーリングすることなく卒業することも可能です。

ほかにも、北海道情報大学、大手前大学、近畿大学法政大学、中央大学、産業能率大学、東京通信大学、人間総合科学大学、日本福祉大学、京都芸術大学など、会場での試験が必要とされるなど、大学により多少条件は違いますが、多くの大学でスクーリングがほぼ不要になりつつあるのが現状です。最新の詳細情報は各大学を尋ねてみてください。

<早稲田大学「eスクール」>

学友とのコミュニケーション、キャンパスライフも楽しめる

通学が不要になりつつあるとはいえ、キャンパス生活を通じて得られることも多数あるので、自分のスタイルに合ったスクーリングが組まれている大学を選ぶと良いと思います。昼間や夜間、土日だけ、特定の地方で行ったりするほか、通年で通うというケースも選べます。

通信教育というと、学友とコミュニケーションしにくいと思われるかも知れませんが、モチベーションを維持するためのSNS活用も活発な傾向で、スクーリングやイベントを通して交友関係を広げ、キャンパスライフを楽しむことは十分に可能です。キャンパス内の施設や図書館などの活用も可能です。

試験は会場で行われることが多い

単位修得試験は、各大学のキャンパスや主要都市会場で土日中心に行われることが多いようです。ただこちらも、ネット会議と顔認証システムをうまく使ってオンラインで試験を行っているサイバー大学のようなケースもあります。

早稲田大学人間科学部eスクールでは、卒業研究発表会は動画収録によって行い、動画はオンデマンドで視聴できるようにしています。今後は試験もオンラインで実施する大学が増えていくことが予想されます。

教育の機会を大きく広げる通信教育。新タイプの公開オンライン講座も

教育を受ける機会を大きく広げる役割も通信教育には期待されています。さまざまな環境の人、社会人など、インターネットが利用できれば、通学して授業の時間割に縛られることなく自分の時間で学習ができます。そもそも通信制大学は、社会人向け生涯学習を目的にしていた面が強かったのです。

世界的に増加傾向の公開オンライン講座

ほかにも、世界中の大学で「大規模公開オンライン講座」「MOOC(Massive Open Online Courses)」と呼ばれるオンラインにて無償で利用できるコースを提供するサービスなどが広がりをみせています。

日本でも「日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)」がオンライン大学講座を提供し、修了証の取得まで無料で受けられます。

このように、インターネット環境と意欲さえあれば、誰でも学習できる環境が整ってきています。今後も通信教育の人気は高まっていくものと思われます。

グローバルで活躍したいなら、どの学問の学士を得るかが重要

もし将来、海外に出て仕事を得ることを考えているなら、大学卒業で授与される「学士(bachelor’s degree)」を持っていることは、大きな意味を持ちます。海外では日本の大学の偏差値序列やブランドなどはほとんど意識されません。「通学したか、通信教育か」よりも、何に関連した学問の学士号を持っているのかで、得られる仕事や留学先が変わってきます。

今後日本でも就職時には個人の能力を重視する方向に向くようになると思われます。働きながらでも効率的に学士号を得られる大学通信教育は、とても良い制度だといえるでしょう。

『大学通信教育』を検討するなら受験前に入学説明会で情報を得よう

年2回、春(1~2月)と秋(8月)に「私立大学通信教育協会」による合同入学説明会(http://www.uce.or.jp/explanation/)が行われています(※)。目指してみたい場合には、ここで具体的な情報を得ると良いでしょう。

また私立大学通信教育協会に未加入であっても、大学通信教育の課程を持つ学部や学科を持つ大学もあります。サイバー大学、東京通信大学、放送大学、武蔵野大学、日本ウェルネススポーツ大学、人間総合科学大学、ビジネス・ブレークスルー大学、八洲学園大学、神戸常盤大学短期大学部などが挙げられ、それらは個別に調べましょう。

※ 2020年秋は中止。11月に「WEB入学説明会」が開催される予定。

参考

私立大学通信教育協会
http://www.uce.or.jp/

2020大学通信教育ガイド
http://www.uce.or.jp/uni_e_book/HTML5/pc.html

放送大学
https://www.ouj.ac.jp/

日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)
https://www.jmooc.jp/