大学の選び方

8割以上の大学が導入【単位互換制度】とは? 他大学の授業でも単位が取れる!

在籍している大学以外の大学で授業を受けられ、単位も取得できるという「単位互換制度」。実は、日本の大学の8割以上がこの制度を取り入れています。どのような制度なのか、どんなメリットがあるのかなど、大学の単位互換制度について紹介します。

「単位互換制度」とは? 他大学の授業で単位を取得できる!

高校までの授業は、クラスごとの時間割に従って行われます。しかし、大学での授業はまったく異なります。同時並行していくつもの授業が行われ、学生は自分で受けたい授業を選択して学ぶことになります。このような自由な学びが大学の特徴といえるでしょう。

なかでも自由度が高いのが、別の大学の授業を受けるという単位互換制度でしょう。単位互換制度とは、学生が在籍している大学以外の大学で授業を履修して、その科目の単位を取得できる制度です。取得した単位は、在籍している大学の単位としてみなされます。

もちろん、大学の授業は自分が在籍している大学で受けるというのが「大原則」です。大学を設置するための最低基準を定めた文部科学省の省令「大学設置基準」にも、「大学は教育上の目的を達するために必要な授業科目を自ら設置するものとする」という内容が明記されています。

では、どうして他の大学の授業を受けられる単位互換制度が存在しているのでしょうか。

「単位互換制度」の目的は、教育内容をより充実させること

文部科学省の資料では、その存在理由を「教育内容の充実に資するため」としています。つまり、他大学の授業を受けることによって、より充実した学びを得られるということです。

具体例を挙げると、例えば自分が興味を持っている分野の科目が、在籍している大学にはないという場合。普通なら諦めるしかありませんが、単位互換制度の協定を結んでいる別の大学にその科目があれば、授業を受けて自分の知識を深めることが可能になります。

また、他の大学のキャンパスや授業、学生の雰囲気を肌で感じることができるのも、単位互換制度の大きなメリットといえるでしょう。

国内の大学のうち、83.0%が「単位互換制度」を導入している

単位互換制度は、一部の大学だけが導入しているわけではありません。2015年度のデータになりますが、文部科学省によると国内大学との単位互換制度を実施している大学は、全体の83.0%にも達しています。

2020年度、2021年度はコロナ禍による中止やオンライン化も

なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年度は単位互換制度を中止したり、オンライン授業の形で提供する大学がほとんどでした。2021年度も、3月時点では新型コロナウイルスの流行が終息していないため、同様に中止、あるいはオンライン授業化する大学が多いと考えられます。

「単位互換制度」の基本的な仕組み

単位互換制度を導入している大学であれば、すべての授業を自由に受けられるというわけではありません。受けられるのは、自分が在籍している大学が単位互換制度の協定を結んでいる大学の授業のみです。また、履修可能な科目については、それぞれの大学が独自に定めています。

取得できる単位数にも決まりがあります。大学では、通常4年間で124単位以上を取得します(大学・学部によって異なります)。このうち、単位互換制度で取得できる上限は60単位です。さらに、大学ごとに単位互換制度によって取得できる単位数を、「年間12単位まで」「学期ごとに4単位まで」のように独自に取り決めています。

授業料は基本的には不要、ただし交通費は自己負担

単位互換制度を使って他大学の授業を履修する場合、一般的に追加の授業料はかかりません。ただし、科目によっては実習費や教材費が必要になる場合もあります。なお、大学までの交通費は自己負担です。

成績は試験やレポートなどで評価・判定される

在籍している大学の授業と同様に、単位互換制度で履修した科目についても、きちんと出席した上で、試験やレポート提出によって成績の評価を受けることになります。規定の成績に満たない場合や出席点や平常点に問題がある場合には、単位を取得できない可能性もあります。

「単位互換制度」を導入している大学

単位互換制度の協定を結んで制度を導入している大学は、北海道から九州まで日本全国にあります。2大学間で単位互換を行う小規模なものから、10~40以上の大学が参加している大規模なものまで、その規模もさまざまです。ここでは、いくつかの例を紹介します。

近隣の大学など数校程度で協定を結んでいる例

まずは、5~6校程度で単位互換制度を導入している例を見ていきましょう。

f-campus 5大学単位互換制度

学習院大学、学習院女子大学、日本女子大学、立教大学、早稲田大学という本部キャンパスが近距離にある5大学による単位互換制度(名称:f-Campus)です。教養科目と専門科目などを合わせて、約2000もの科目が単位互換制度の対象になります。
https://www.f-campus.org/

武蔵野地域5大学 単位互換制度

亜細亜大学、成蹊大学、日本獣医生命科学大学、東京女子大学、武蔵野大学という、東京の武蔵野地域にある5大学による単位互換制度です。
https://www.musashino-u.ac.jp/academics/basic/consortium.html

大規模なコンソーシアムを作って実施している例

続いて、多数の大学が参加している「大学コンソーシアム(共同事業体)」で単位互換制度を取り入れている例です。

大学コンソーシアム京都

京都大学などの国立大学をはじめ、京都市立芸術大学などの公立大学、同志社大学や立命館大学、京都産業大学などの私立大学を中心に、約45大学が参加している大規模な単位互換の協定です。京都の世界遺産をテーマにした単位互換制度専用の科目を設けるなど、独自の取り組みにも力を入れています。
https://www.consortium.or.jp/special/tani_gokan/

大学コンソーシアム八王子

八王子地域の25の大学・短大・高専のうち、多摩美術大学、東京工科大学、拓殖大学など16の大学と高等専門学校で、単位互換制度を導入しています。前述の多摩美術大学のほか、東京造形大学や東京純心大学などが参加しているため、一般の大学の学生も美術・芸術系の科目を学ぶことができます。
https://gakuen-hachioji.jp/main-business/credit/

長期休暇を利用した遠方の大学の例

大学間の物理的な距離が離れていても、単位互換制度を導入している場合もあります。その場合、授業は夏休みなど長期休暇を利用して行うのが一般的です。

大学コンソーシアム京都と早稲田大学

大学コンソーシアム京都に参加している大学が京都の風土や文化に根ざした科目を提供し、一方の早稲田大学も、大学コンソーシアム京都の各大学に科目を提供しています。授業はいずれも、夏季休暇を利用して行います。

法政大学と関西大学

2021年1月に、新たに「単位互換学生交流に関する協定」の締結を発表したのが法政大学と関西大学です。東京と大阪でどのように授業を行うのか、具体的なことはまだ不明です。

放送大学の授業で単位を取得できる大学もある

放送大学

テレビのBS放送やラジオ、インターネットで授業を配信している放送大学でも、単位互換制度を導入しています。放送大学と協定を結んでいる大学は、放送大学の授業を受けることで単位を取得可能です。
https://www.ouj.ac.jp/hp/kigyou/tanigokan/student.html

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単位取得のない「聴講生制度」を設けている大学も

他大学の授業を受ける方法としては、単位互換制度以外に「聴講生制度」もあります。単位互換制度との違いは、履修しても単位が取得できないこと、また履修にあたって授業料などの費用が発生することです。

聴講生制度は、社会人向けであることがほとんどですが、一部の大学では現役の学生にも門戸を開いています。

このような自由な学びが大学の良い点です。大学に進んで専門の研究を始めたところ、さらに興味が広がったというような場合もあるでしょう。入学した大学での授業の範囲外のことを学びたくなったとしても、単位互換や聴講生といった制度を利用すれば、可能性は広がります。