大学受験の基礎知識

教師不足の時代到来。大学で【教員免許】を取得する方法やメリットは?

団塊の世代にあたる教師が大量に退職する時期を迎えるなど、学校における教師不足が懸念されています。また、プログラミング教育の必修化などにより、教師に求められるスキルも変わりつつあります。学校の先生となるには、大学で教員免許を取得しなければなりません。教員免許や教師になる方法について説明します。

「教員免許」とは

教職に就くため必要となるのが、教育職員免許状(教員免許状、教員免許)の取得です。教員免許には大きく分けて「普通免許状」「特別免許状」「臨時免許状」の3種類があります。大学に進学して取得できる教員免許は、普通免許状となります。現状、ほとんどの教師は、大学などで教員免許を取っているので、教員免許おいて普通免許状が主流となっています。

教員免許の種類

普通免許状 大学や大学院、短大で取得する教員免許
特別免許状 知識や経験を持つ社会人向けの教員免許
臨時免許状 普通免許を持っている教員を採用できないときに与えられる臨時の教員免許

「普通免許状」の種類

普通免許状には、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の「教諭免許状」、保健室の先生としてけがや病気の児童、生徒に対して処置などを行う「養護教諭免許状」、食に関する指導や給食の管理などを行う「栄養教諭免許状」、特別支援学校教員の「特別支援学校教諭免許状」があります。

さらに普通免許は、学位に応じて「専修」、「一種」、「二種」に分かれます。「専修」は大学院で修士の学位を得ることで取得できるものです。「一種」は、4年制大学の教職課程を経て取得できます。「二種」は、短期大学の教職課程を経て取得できます。

このうち注意が必要なのは、「二種」です。高等学校で教えられるのは、専修か一種に限られ二種では教鞭(きょうべん)を執ることができません。高等学校の教師になりたいと考えている人は、4年制大学以上に進み、「専修」か「一種」を取得する必要があります。

普通免許状の種類

幼稚園教諭免許状 専修・一種・二種
小学校教諭免許状 専修・一種・二種
中学校教諭免許状 専修・一種・二種
高等学校教諭免許状 専修・一種
特別支援学校教諭免許状 専修・一種・二種
養護教諭免許状 専修・一種・二種
栄養教諭免許状 専修・一種・二種
専修 大学院で修士の学位を得ることで取得できる
一種 大学の教職課程を経て取得できる
二種 短期大学の教職課程を経て取得できる

中高は、教科ごとの免許が必要

中学校と高等学校の教員免許は教科ごとに免許が分かれています。つまり教える側に専門性が求められることになります。

そのため大学の学部、学科を選ぶ際の大きなポイントになります。例えば中学校の国語の教師になりたいなら、「教育学部」の「国語専攻」というように教科を選んで学部、学科を選ぶことになるからです。逆を言えば、理工学部を先行すれば、中学校や高等学校の国語教師や体育教師になることはできません。

文部科学省によると、中学校と高等学校の教科別教員免許の種類は以下の通りです。


教科別教員免許の種類

中学校 国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、保健、技術、家庭、職業、職業指導、職業実習、外国語(英語、ドイツ語等)、宗教
高等学校 <専修・一種>
国語、地理歴史、公民、数学、理科、音楽、美術、工芸、書道、保健体育、保健、看護、看護実習、家庭、家庭実習、情報、情報実習、農業、農業実習、工業、工業実習、商業、商業実習、水産、水産実習、福祉、福祉実習、商船、商船実習、職業指導、外国語、宗教
<一種のみ>
柔道、剣道、情報技術、建築、インテリア、デザイン、情報処理、計算実務

普通免許状の種類について
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/050/siryo/attach/1349977.htm

複数教科も取得可能。特に不足しているのは「情報」

複数教科の教員免許も取得できます。学校では教科によって授業数が異なるため、教師の需要にも直結します。授業数の少ない教科の場合は、別の教科の免許も取得しておくほうが教師として採用される可能性が高くなります。

ちなみに新しい教科である「情報」は、プログラミング教育が必修化されることもあり、特に教員不足が懸念されていますので、これから教員免許を取るなら「情報」を「数学」や「理科」と合わせて取得するといったこともお勧めです。

「教員免許(普通免許状)」を取得するには

普通免許状を取得するにはまず、教職課程のある大学や短期大学に入学し、必要な単位を修得します。そのうえで、各都道府県教育委員会に教員免許状の授与申請を行うことで授与されます。なお、申請先が各都道府県教育委員会というと、「その県でしか教師になれないのか」と思われがちですが、日本全国で有効になります。

教員養成学部に進む場合

大学に入る前から教師を志望しているなら、「教育学部」などの教員養成学部に進むという方法が適しています。教育学部以外にも、教育文化学部、学校教育学部などと、異なる学部名が使われているケースもあります。

教員養成学部の場合は、カリキュラム自体が教員免許取得を前提に作られているので、卒業に必要な単位を取れば教員免許を取得できるようになっています。

ちなみに「教育学部」という名称を持ちながら、教員養成をしないで、純粋に「教育に関する研究するもの」として設置している大学もあります。その場合、「教員免許取得に必要な単位」と、「大学卒業に必要な単位」が異なって、「卒業したのに教員免許を取得できない」ということになりかねません。教員免許を取得しないので「ゼロ免」と呼ばれたりもします。しかし、不足する単位を自分で取得すれば教員免許は取れます。

教師になることを希望し、大学へ進学するのであれば、教員免許を取れる大学であるかしっかり確認しましょう。

他の学部に進む場合

教育学部以外の学部でも教員免許の取得は可能です。ただし取得できる教員免許の教科は、学部や学科によって異なります。例えば国語の教員免許を取得したいなら文学部や日本語学科など、数学なら理工学部など、情報なら理工学部や商学部、経済学部などとなります。

ただし、卒業とは直接関係ない教職課程を学び、教員免許取得に必要な単位は自分で管理しなくてはいけません。また小学校や中学校へ行って教育の現場を体験して学ぶ教育実習についても、実習校を自分で探して交渉するケースもあります。

「教員免許」を取得しただけでは教師になれない

教員免許を取得したら、職員採用試験を受けます。公立学校は、各地の教育委員会が実施している教員採用選考試験を受け、合格する必要があります。私立学校は、その学校独自の試験を受けて採用が決まります。

また公立学校の教師になると数年のサイクルで異動(勤務する学校が変わる)があるのが一般的です。私立学校の場合は、退職するまでその学校で勤務することになります。

「教員免許」の有効期間

教員免許の有効期間は10年(臨時免許状は3年)です。そのため定期的に講習を受けて更新する必要があります。万が一更新を怠ると失効してしまいます。
ただし「うっかり期限を忘れて失職した」というトラブルが続き、更新制度について見直す動きも始まっているようです。

なお文部科学省では、自分が持っている教員免許の有効期間を確認するツールも公開しています。


教員免許状の有効期間確認ツールについて~更新時期確認の御参考に~
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/013/1420173.htm

教員免許取得のメリット

教職課程では、教育理論、生徒指導、各教科の研究など、教員として必要な知識やスキルを学びます。それ以外にも心理学、障害児教育やバリアフリーなど、非常に幅広い範囲について学ぶことになります。

また最終的に教職へ就かなくとも、教育実習を通して、小学校や中学校に行って、子どもたちと触れ合う機会を持つことになります。特別支援学校や福祉施設で障害児と接することもあります。

多くの人は、小学校に入ってから大学を卒業するまで、多くの時間を同年代の人と一緒に過ごしますが、自分よりもはるかに若い世代と時間を共有する体験はそうそうありません。教育実習は、かつての自分を振り返るだけでなく、新しい世代の新鮮な視点を知る貴重な体験となるでしょう。

それらの体験を通して、「将来の世代を育てる手伝いをしたい」という思いを強くする学生も少なくはありません。教員免許の取得は大変なことではありますが、大いに意味のあることといえるでしょう。

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