新型コロナウイルス感染症防止対策として、自宅などからパソコンやスマートフォンを使って入試が受けられる『オンライン受験(入試)』を導入する動きが出ています。受験生にとっては試験会場まで足を運ぶ負担がなくなる一方、通信環境を受験生側で整える必要があるなどの注意も必要になります。オンライン受験、オンライン面接を予定している大学を紹介するとともに、試験を受ける際のポイントを解説します。
2021年複数大学が『オンライン受験(入試)』を導入
オンライン受験は、試験会場に出向いて試験を受ける代わりに、自宅などからパソコンやスマートフォンなどの通信機器を使い、インターネット回線を使って接続し、オンラインで面接試験、筆記試験を受ける形式のものです。
オンライン面接では、Zoomなどのオンライン会議ツールを使って、試験官と面接したり、グループディスカッションなどを行います。また筆記試験の代わりに、パソコン上で問題文を読み、選択肢を選んで解答したり、記述式の場合は文字を入力して解答します。
これまで、一般の民間試験などではオンライン試験を導入しているところもありました。しかし大学入学試験では、より厳正さ、公平さが求められます。そのため会場に集まっての試験が主流で、オンラインによる受験はほとんど行われてこなかったといえます。
ところが新型コロナウイルス感染症の拡大により、会場に大勢が集まって試験を受けることに対して、感染拡大の不安やリスクが拭えないことから、オンライン受験の導入を検討する大学が徐々に増えている状況です。
試験中にトラブルが起こったら?
このようにオンライン受験では、受験生が通信環境を整える必要があります。しかし、システムトラブルや通信障害が生じた場合はどうすればいいのでしょうか。
そういう事態を想定して、大学側でも「非常時の連絡手段として、大学から受験生に連絡するためのスマートフォンなどを用意しておくこと」「大学側で窓口を用意して、途切れた場合は連絡する」などの対策を始めています。この対策も大学ごとに異なるので、確認しておきましょう。
当初、通信トラブルが起こったときは試験が打ち切りになり、原則再試験ができないと募集要項に記載している大学もありました。
そのため高校関係者から「受験機会が適切に確保できないのではないか」と懸念する声が上がりました。これを受けて文部科学省では、2020年9月9日、全国の国公私立大学に対し、オンラインで実施する入学者選抜について、代替措置を講じるなどの配慮を求める通知を出しています。
通知では配慮の参考事例として、以下の項目を具体的に挙げています。
- 通信環境の不具合が生じ、試験続行が困難になった場合、当日の時間繰り下げや予備日を設けて選考を行う
- 受験生側で通信環境を整えることができない場合、大学でのオンライン受験も可能とする
- 大学にサポートデスクなどの連絡窓口を設け、不測の事態に個別対応できるようにする
オンラインでも公正な試験を受けるには?
オンライン受験を実施する大学側にとっては、なりすましやカンニングなどの不正行為の防止が重要となります。当然、それは受験生にとっても気になるところでしょう。不正行為によって高得点をとるような受験生がいたら、真面目に試験を受けている者にとっては許せるものではありません。
人工知能(AI)による監視する大学も
そこでICTを活用したオンライン試験監督システムを導入するなど、不正防止に向けた取り組みも始まっています。例えばAIの活用。AIが、受験生の目線やしぐさなどの不審な挙動を察知して、試験官に伝達する仕組みを利用すれば、オンラインであっても多くの受験生に対して同じ基準で監督し、不正行為も見抜くことができるでしょう。
受験生が用意する機器や環境
オンラインでは、従来の会場で受ける試験とは異なり、以下のような機器や環境の用意が必要となります。
- カメラ付きパソコンまたはスマートフォン・タブレット
- イヤホンやマイク、ヘッドセット
- インターネット回線
- 受験に必要な環境が整った静かな場所
1.カメラ付きパソコンまたはスマートフォン・タブレット
面接を受ける際に必要です。OS(Windows 10やmacOSなど)やWebブラウザー、ZoomやTeamsといったオンライン会議ツールが指定される場合があるので、大学の指示に従ってください。
通信の安定性の観点から、スマートフォンやタブレットよりパソコンが推奨されます。またはスマートフォンやタブレットによる受験を認めていない大学もあります。
2.イヤホンやマイク、ヘッドセット
オンラインで会話するために、マイクやイヤホン(ヘッドホン)、それが一体化したヘッドセットが必要となります。安定して通信ができるよう、ワイヤレスの製品より有線の製品が推奨されます。
3.インターネット回線
オンラインでの試験や面接に必要なインターネットの通信速度を確保する必要があります。試験を受けている間は、周囲の人にできる限り同じ回線の利用を控えてもらい、速度が維持できるようにします。具体的には、試験中は同居する家族がオンライン動画などを視聴しないように協力してもらいましょう。
4.受験に必要な環境が整った場所
試験を受けている間は、同室に受験生本人以外がいない、できるだけ静かな環境を準備する必要があります。
これらを準備した上で、試験前日までに当日使用する機器を使って接続テストを行うと安心です。事前テストで接続がうまくいかなかった場合、大学によってはサポート窓口を設けているところもあるので、相談することもできます。
なお、インターネット回線速度を調べるサービスを使って、事前に快適に利用できるかを確認しておくのも一つの手です。
2021年に『オンライン受験(入試)』を実施予定の大学
いくつかの大学では、オンライン受験の実施方法について発表しています。すでにオンライン受験を実施した大学もあります。
オンライン面接のみの大学もあれば、オンラインの筆記試験のみの大学、あるいはオンライン受験と従来通り会場で行う来校型受験や対面方式を選択できるなど、大学によって実施内容が異なりますので、志望大学の発表をしっかり確認しましょう。
オンライン受験の実施予定(実施済含む)大学(一部)
<実践女子大学/実践女子短期大学>
総合型選抜Ⅰ期においてオンライン選考、オンライン面接を実施
https://www.jissen.ac.jp/admission_guidance/university/ao_entrance_examination/index.html
<神田外語大学>
総合型選抜<前期>、学校推薦型選抜、総合型選抜<後期>、特別選抜、編入学試験でオンライン選抜を実施
https://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/news/102783/
<武蔵野大学>
総合型選抜Ⅰ期、帰国生選抜Ⅰ期、公募制学校推薦型選抜Ⅰ期、外国人留学生選抜Ⅰ期でオンライン選抜を実施
https://www.musashino-u.ac.jp/admission/download/#online
<日本体育大学>
一般選抜で筆記試験は実施せず、オンラインの面接試験を行う。総合型選抜、学校推薦型選抜におけるスポーツ文化学部武道教育学科の武道実技視点は、事前の動画提出で評価
https://www.nittai.ac.jp/exam/com/online.html
<桜美林大学>
総合型選抜と学校推薦型選抜でオンライン面接を実施。芸術・文化系の学部では、試験日にオンラインで受験生同士が話し合いながら演劇作品を完成させて発表する場を設ける
http://admissions.obirin.ac.jp/entrance_exam_guide/online-interview/
<日本経済大学>
一般選抜や総合型選抜などすべての入試で、オンライン受験か来校型受験を選択することができる
https://www.jue.ac.jp/entry/
<東邦音楽大学>
一般選抜、総合型選抜、指導者推薦型選抜(吹奏楽部・管弦楽部・公募)、学校推薦型選抜(公募)、卒業生推薦型選抜において、従来の対面方式に加え、オンライン方式の選抜を実施
https://www.toho-music.ac.jp/college/admission/examination/
<洗足学園音楽大学>
総合型選抜において、対面方式かオンライン方式の選抜か選択することができる
https://www.senzoku.ac.jp/music/admission/advance
<富士大学>
総合型選抜でオンライン選抜を実施
http://www.fuji-u.ac.jp/exam
<東京立正短期大学>
一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜の面接試験をオンラインで実施
https://www.tokyorissho.ac.jp/entrance/on-line/
<大正大学>
総合型選抜と学校推薦型選抜でオンライン選抜と従来の対面方式を実施。選択することができる
始まったばかりのオンライン受験。情報収集をしっかりと
オンライン受験(入試)はまだ始まったばかりの取り組みで、大学側も試行錯誤の状態といえます。試験本番を迎えるまでに実施方法などが変更になることも考えられるので、いざというときに慌てずに済むよう、事前にしっかり情報収集するなど準備して、本番に臨めるようにしましょう。
参考
令和3年度からの大学入試(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/nyushi/