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大学教育の向上を目指す取り組み【FD】とは? 教育学部の研究テーマにも! 学生が参加する「学生FD」も

高校までとは異なる大学での学び。その教育の質を改善・向上させるための取り組みは「FD(ファカルティ・ディベロップメント)」と呼ばれ、全国の大学で行われています。「FD」の概要や、各大学の具体的な取り組み、また教育改善に学生も参加する「学生FD」などについて説明します。

「FD(ファカルティ・ディベロップメント)」とは?

「FD」または「ファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development)」とは、「大学教育の内容や方法の改善を図るための、教員の組織的な取り組み」を指す言葉です。

FDという言葉を初めて聞く人も多いかもしれません。しかし、それも無理のないことです。FDは、基本的には学生ではなく教員が行う活動だからです。ただ、大学教育を受けるのは学生であり、よりよい教育を受けることは重要ですから、FDの基本を知っておいて損はないでしょう。

FDはすべての大学が行う義務がある

グローバル化の進展に伴い、世界で通用する質の高い教育が大学に求められています。そして、質の高い教育を実現するために登場したのが、FDです。文部科学省では、1990年代頃からFDの重要性について繰り返し触れてきました。

例えば、1991年の大学審議会の答申では「欧米の大学で広く普及している教員の教授内容・方法の改善・向上への取組み(ファカルティ・ディベロップメント)を、我が国でも本格的に導入していく必要あり」と述べています。その後、2008年4月1日に施行された大学設置基準の改正により、FDは法律で義務化されました。つまり、現在では日本のすべての大学が何らかのFDを実施しているというわけです。

FDの活動は、教員同士の授業参観や授業評価、研修会など

各大学で実際に行われているFDの活動は、どのようなものでしょうか。2020年10月に文部科学省が公表した「平成30年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)」に記載されているFDの実施状況をいくつか紹介しましょう。なお、調査対象は全国の国公私立782大学です。

大学で実施されているFDの内容

内容 実施大学数(比率
教員相互の授業参観 417大学(54.8%)
新任教員を対象とした研修会など 407大学(53.5%)
アクティブ・ラーニングを推進するためのワークショップまたは授業検討会 293大学(39%)
教員相互の授業評価 160大学(21.0%)
大学院生を対象としたプレFD 30大学(3.9%)

上に挙げたリストにある「アクティブ・ラーニング」は、教員が一方的に講義するのではなく学生が能動的に授業に参加する学習法です。FDでは、アクティブ・ラーニングをどのように授業に取り入れるかという検討が行われています。また「プレFD」とは、大学教員を目指す大学院生が教育能力を身につけるための取り組みを指します。

その他、FDに関する組織を設けている大学も多く、全体の77.9%にあたる593大学でFDに関するセンターなどを設置しています。FDセンターでは、授業内容や方法の改善・向上や、教育プログラム・教育システムの企画・開発などにあたっています。

※参考)平成30年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)  文部科学省高等教育局大学振興課大学改革推進室
https://www.mext.go.jp/content/20201005-mxt_daigakuc03-000010276_1.pdf

各大学のFDの取り組み

大学の中には、FDの取り組みを公式サイトで公開しているところもあります。進学先として検討している大学にFD関連サイトがある場合は、一度のぞいてみると参考になるかもしれません。ここでは、例として二つの大学を紹介します。

早稲田大学

各種プログラムのほか、教員表彰制度も
https://www.waseda.jp/inst/ches/ctlt/faculty/

FDプログラムとして、新任教員セミナーや授業の相互見学、海外の提携校への派遣などを行うほか、優れた教育方法を実践している教員の表彰制度(ティーチングアワードなど)も設けています。受賞した教員の授業内容に関わる記事も掲載されています。

上智大学

FD委員会を設置し、FD活動の刊行物も発行
http://www.fd-sophia.jp/index.html

「上智大学FD委員会」という組織を設けて、新任教員やTA(ティーチングアシスタント)向けのオリエンテーション開催や、全学共通科目のうち授業アンケートで評価が高かった教員の表彰などを行っています。SD活動報告をまとめた刊行物もあり、PDF形式で閲覧できます。

学生が参加する「学生FD」がある大学

ここまで「FDは教員の活動」と書いてきましたが、実は大学によっては学生もFDの活動に関わることができます。ここでは、三つの大学の学生FD活動について紹介します。

日本大学

学生によるFD活動
https://www.nihon-u.ac.jp/fd-center/fd/

日本大学では、FD活動を「学生×教員×職員」で取り組むものと位置付けています。そこで毎年、学生と教員、職員が一堂に会してFDについて話し合う「日本大学 学生FD CHAmmiT(ちゃみっと)」を開催しているほか、学部によっては学生発案型の特別授業を開講するなどしています。

駒澤大学

学生FDスタッフ
https://www.komazawa-u.ac.jp/about/fd/fd-action/fd-student/

駒澤大学は、「FD活動を発展させ、学生の目線を直接取り入れる」という目的で、学生FDスタッフを毎年募集しています。学生FDスタッフになった学生は、「学生が選ぶベスト・ティーチング賞」に関わる活動や学長との意見交換、その他新企画の提案などに参加します。

東洋大学

学生FDチーム
https://www.toyo.ac.jp/academics/improve/organisation/fdsd/fd-student/

東洋大学では、高等教育推進センター直属の「学生FDチーム」を設けて、スタッフとなる学生を随時募集しています。学生FDになると、教職員との合同会議への参加や、イベントの開催、また学生FD活動を広めるためのニュースレターの発行やWebサイトの整備などの活動に携わります。

学生の立場でありながら、大学の授業改善や向上を目指す活動に参加できることに、魅力を感じる人もいるのではないでしょうか。なお、繰り返しになりますが、「学生FD」といった活動を取り入れているのはあくまで一部の大学にとどまっています。

教育学部の研究テーマとしてのFD(ファカルティ・ディベロップメント)

最後は、研究テーマとしてのFDについて少し触れておきましょう。文部科学省によりFDが義務化されたことから、日本の大学は何らかの形でFDの活動をしています。しかし、取り組み内容やその効果という面では、まだまだ不十分という指摘もあります。

例えば、冒頭で紹介した教員相互の授業参観や新任教員に対する研修会は、FDの中では多く実施されていますが、それでも大学全体の5割弱です。それをもっと普及されるにはどうしたらよいのか。あるいは、どのようなFD活動がどの程度、教育の質を改善させる効果があるのかなど。

今後は、単に「FDに取り組んでいる」だけではなく、実質的な内容の精査や効果の見極めが重要になってきます。そうしたFDに関わる研究は、主に教育学部、中でも効率的に高い教育効果を得るための方法を研究する教育工学の分野で学ぶことができます。FDについて学問的な興味を持った人は、教育学部があり教育工学が学べる大学に注目してみるとよいでしょう。