大学の選び方

経済を学びたいならどの学部?【経済学部、経営学部、商学部】の違いと特徴

大学で、経済に関わることを学びたいと考えている人は多いのではないでしょうか。一方で、「経済学部」「経営学部」「商学部」の違いがよくわからない、そのため志望する学部をなかなか絞り込めないという人もいるかもしれません。経済、経営、商 ―― それぞれの学部の学びにはどのような違いがあるのか。基本を押さえて、大学と学部を選ぶ際に役立てましょう。

「経済学」「経営学」「商学」の研究対象

各学部の学びを説明する前に、まずは「経済学」「経営学」「商学」という、それぞれの学問が、それぞれ何を研究するものなのかを見ておきましょう。

「経済学」は、経済活動の仕組みを研究する

「経済」とは、社会生活に必要な生産・消費・売買といった活動のことです。経済学では、そうした経済活動の現象やその仕組みを研究します。

研究のアプローチにはさまざまな手法がありますが、政府や企業、家計の全体像を俯瞰(ふかん)して研究する「マクロ経済学」と、個々の企業や家計から経済事象を考える「ミクロ経済学」の二つがよく知られています。

「経営学」は、企業など組織の活動を研究する

「経営」とは、事業を営むことを指します。経営学では、企業や商店、病院、その他の機関などの組織が、利益を上げるなどの事業目的を達成するために行うさまざまな行動や戦略について研究します。また、組織のマネジメントや最近注目されている企業統治(コーポレートガバナンス)なども経営学の範囲です。

「商学(商業学)」は、具体的な取引について研究する

「商学部」という名称ですが、実は学問分野として商学という用語はそれほど使われていません。言い換えるとするなら商業学で、具体的な商取引に関わること――例えば、商品やサービスの開発、流通・販売、会計、税務などが研究対象となります。マーケティングもこの分野の研究対象です。

経済・経営・商 ―― 三つの学問分野の関係性

ここまでの説明からわかるように、経済学、経営学、商学(商業学)は、いずれも経済活動に関わることが研究対象です。ただし、その研究対象の範囲がそれぞれ異なる、と考えるとわかりやすいでしょう。

全体を俯瞰する経済学と、個々の活動に焦点を当てる経営学・商学

経済学が経済活動の全体像を分析して、そこから理論を導き出すのに対して、経営学は経済活動を行う企業など個々の組織を研究対象としています。また、商学では、その企業などで行われる具体的な商取引の中身を詳しく研究します。

もちろん、社会全体の経済活動は企業など個々の組織の経営や商取引によって成り立っています。また、逆も同様で、個々の企業活動は経済全体の影響を受けます。そのため、経済学、経営学、商学のどれを学ぶにしても、他の二つの学問分野の基礎知識も知っておいたほうがよいのは間違いありませんし、多くの大学では三つの分野の基本を学べるようなカリキュラムを用意しています。

ちなみに、経営学や商学は、企業の具体的な取り組みに焦点を当てるため、「経済学より実践的、実務的」と見られることがあります。一方で、「経済学は理論が中心で、実践的ではない」というイメージを持つ人もかつてはいたようです。

しかし、ここ数年、経済学では行動経済学や実験経済学、ゲーム理論といった新しい理論が注目されていて、どちらも実際のビジネスなどに広く応用されています。決して、「理論だけ」の学問ではありません。

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大学によって異なる3学部の設置状況

では、本題である「経済学部」「経営学部」「商学部」の説明に入りましょう。

大まかにいうと、「経済学」は経済学部で、「経営学」は経営学部で、そして「商学(商業学)」は商学部で学ぶことができます。それぞれの学問分野の違いを理解し、自分が学びたいものが明確になってくれば、学部を絞り込むことは難しくはないかもしれません。

ただ、ご存じの方も多いと思いますが、すべての大学に三つの学部がそろっているわけではありません。むしろ、そうではない大学が大半です。

例えば、学部としては「経済学部」のみがあり、そこに経済学科と経営学科、あるいは経済学科と商学科を設置しているという大学は少なくありません。

経済学部のみ設置:例1 経済学部 経済学科
経営学科
経済学部のみ設置:例2 経済学部 経済学科
商学科

また、経営学と商学を大きく「個々の企業の活動を研究対象とする」ととらえて、どちらか一つの学部にまとめて、経済学部と合わせて二つの学部を設置している大学もあります。

二つの学部設置:例1 経済学部
経営学部(経営学+商学)
二つの学部設置:例2 経済学部
商学部(商学+経営学)

もちろん、経済学部と経営学部、商学部のすべての学部を設置している大学もありますが、前述のとおり少数派です。

では、「経済学部」など一つの学部のみ設置されている場合と、「経済学部」「経営学部」「商学部」など複数の学部がある場合の違いはどこにあるでしょうか。

「単独の学部+学科」の場合、幅広い学びに触れられる可能性がある

社会科学系では経済学部のみが設置されていて、その下に経済学科と経営学科、あるいは商学科などがあるという大学は少なくありません。

その場合、自分が専門的に学びたいと考える分野以外の学びにも広く触れられる可能性があります(学科ごとに取得できる科目は異なるので、まったく同じ学びができるわけではありません)。経済や経営などについて広く学んでおきたいという人にとっては、よりよい選択肢になるといえるかもしれません。

例としては、経済学部の下に経済学科と経営学科がある学習院大学や、同じく経済学部の下に経済学科、経営学科、国際経営学科がある明治学院大学があります。

学習院大学 経済学部 経済学科
経営学科

・学習院大学 経済学部
https://www.univ.gakushuin.ac.jp/eco/

明治学院大学 経済学部 経済学科
経営学科
国際経営学科

・明治学院大学 経済学部
https://econ.meijigakuin.ac.jp/

「複数の学部」があると、より専門性の高い学科構成になる

「経済学部」「経営学部」「商学部」など、複数の学部が設置されている場合は、その下に置かれる学科の専門性がより高くなる傾向にあります。

例えば、経済、経営、商の3学部がある名古屋商科大学の場合、経済学部の下には経済学科と総合政策学科が、経営学部の下には経営学科と経営情報学科が、商学部の下にはマーケティング学科、会計ファイナンス学科があります。

名古屋商科大学 経済学部 経済学科
総合政策学科
経営学部 経営学科
経営情報学科
商学部 マーケティング学科
会計ファイナンス学科

・名古屋商科大学
https://www.nucba.ac.jp/academic/

また、明治大学の場合は、政治経済学部に政治学科と経済学科、地域行政学科が、経営学部に経営学科と会計学科、公共経営学科が、さらに商学部には学科はありませんが、3年生から七つの専門コースを選択できるようになっています。

明治大学 政治経済学部 政治学科
経済学科
地域行政学科
経営学部 経営学科
会計学科
公共経営学科
商学部 3年生から七つの専門コース

・明治大学
https://www.meiji.ac.jp/koho/faculty/01.html

他にも、3学部ではありませんが、経済学部と商学部、経済学部と経営学部を分けて設置している大学は数多くあります。

「経済学部で特に国際経済について学びたい」「商学部でマーケティングを専攻したい」など、志望がはっきりしている人にとっては、専門の学科があることはメリットといえるでしょう。

このように経済学部、経営学部、商学部という名称であっても、大学によって位置づけは違っています。詳細は大学によって異なりますので、どのような学部構成になっているのか、それぞれの学部・学科で何をどのように学べるのかについては、個々の大学のサイトなどで必ず確認してください。