「大学校」という名を聞いたことはありますか? 実はよく聞く「大学」以外にも「大学」と名の付く教育機関があります。それぞれ違った特徴があり、学びたいことや、将来就きたい職業によっては選択肢も変わってきます。すでに大学への進学を決めている人も、その違いや特徴を明確にしておけば、自分がなぜその大学を選んだのか、大学へ進学する意義を再確認できるでしょう。
そもそも「大学」とは?
高校を卒業し、さらに専門的に物事を学んだり、研究したい人が進学するのが大学です。学校教育は、初等教育(小学校)、中等教育(中学校、高等学校)、高等教育(大学)と3段階に分けられており、大学は高等教育にあたります。
大学の多くは4年制ですが、医学部や薬学部のようにより高度な専門性が問われる学問によっては6年制の場合もあります。短期大学(短大)は2年か3年になります。その違いによって卒業時に授与される称号の「学位」も変わってきます。学位には次のようなものがあります。
- 学士:大学を卒業
- 短期大学士:短大を卒業
- 修士:大学院の修士課程を修了
- 博士:大学院の博士課程を修了
高等教育というと、「大学」を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、実際は「大学校」「専門職大学」「大学院大学」のように、「大学」と名の付く教育機関が存在します。また大学への編入や大学院への進学もできるできる高等専門学校もあります。
なお、名称が似ていることから、高校で学ぶことが高等教育と誤解している人もいるので、正しく理解しておきましょう。
「大学校」はどのような施設でも名乗れる
大学は、学校教育法に基づいて運営されており、文部科学省が所管していますが、「大学校」は学校教育法で規定された教育機関ではありません。そのため、自動車大学校、警察大学校、税務大学校、農業大学校、林業大学校などいろいろな施設が「大学校」という名前を付けています。
警察大学校、自治大学校、消防大学校のように、公務員の研修施設や、一部の独立法人が管轄する施設などは、学位が取得できません。そのため、必ずしも高校卒業後の進路というものでもありません。
また学士は得られませんが、航空大学校はパイロットを希望する人にとって注目の教育機関でしょう。ただし、大学における一部単位の取得、短大や公庫等専門学校の卒業といった出願資格が必要となり、高校卒業しただけでは受験資格が得られないため注意が必要です。
「学士」の資格が取得できる大学校も
一方、気象庁が設置した「気象大学校」、海上保安庁が設置した「海上保安大学」、防衛省が設置する「防衛大学校」、国立研究開発法人水産研究・教育機構が設置する「水産大学校」のように、卒業後には大学卒業と同じ学位を得ることができるため、高校卒業後の進路と考えられている大学校もあります。
例えば、気象大学校、海上保安大学を卒業すると学士が授与されます。防衛大学校では4年制の「本科」を卒業すると学士、その上の大学院に相当する「研究科」では修士や博士の学位が得られます。
学ぶだけでなく、給料がもらえる大学校も
防衛大学校、防衛医科大学校、海上保安大学校、気象大学校、航空保安大学校など一部の大学校は、卒業後に防衛省や気象庁など入ることを前提に考えられており、就職と非常に強い結びつきがあります。
入学は、特別職の「国家公務員」として採用された身分となり、学費を払うのではなく手当が支給されます。例えば、防衛大学校などは、将来の自衛隊幹部を養成する機関としても位置づけられており、卒業すると自衛官に任官されます。
大学校に行くなら就職もセットで考えよう
各省庁の幹部候補を育てる意味合いもあるこうした大学校へ進もうと考えているなら、将来その省庁で働くことを決めるのと同等として考える必要があるでしょう。
逆に将来的な就職を想定していないのであれば、選択肢とすべきではないでしょう。その点で大学への進学とは大きく異なるのです。
もちろん、入学はしてみたものの、やっぱり自分には合わないと感じ、卒業後に別の進路へ進む人もいます。防衛大学校では、一部に任官を辞退して民間に進む人も出ていますが、卒業式の時期には毎年ニュースとして報道され、物議を醸しています。
新しい学校制度「専門職大学」
2019年に始まったばかりの新しい制度で、4年制の専門職大学だけでなく、2年制、3年制の専門職短期大学もあります。
専門性が求められるスペシャリストを育てる大学
学校教育法では、大学の一種に分類され、「深く専門の学芸を教授研究し,専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させること」を目的としています。
産業界と連携が強く、カリキュラムに実習を多く組み込んでおり、より実践的なスキルを習得できるのが特徴です。研究などを主体とし、アカデミックな一般的な大学に比べると、実務家を育てようとする傾向が強いといえるでしょう。
実習・実技の授業、産業界の研究が中心
卒業に必要な単位のうち、3分の1は実習・実技の授業で、あとの3分の2は産業界の研究となっています。また、教員には研究者だけでなく現場で活躍する実務家が含まれるのも特徴です。授業は原則40人以下と少人数で行われます。
専門学校とは違って学士(専門職)が得られる
職業にあった専門知識が学べるところとしては専門学校があります。専門学校は卒業時に「専門士」または「高度専門士」の称号が得られますが、専門職大学は「学士(専門職)」の学位が得られます。これは、大学卒業後に与えられる「学士」に相当する資格です。
「大学院大学」は、学部のない大学院
「大学院大学」とは、学部を置くことなく大学院だけで構成される大学のことです。「独立大学院大学」と呼ぶこともあります。
かつての大学院は、4年制大学において専門領域を研究する学部の上に存在していました。つまり、学部のない大学院はなかったのです。しかし大学院大学は、学部とは別に独立して存在するものです。
4年制大学卒業後の進路候補に
「大学」という言葉が最後に付くので、高校卒業後に入学するものと思うかもしれませんが、基本は大学院ですので、大学卒業後に進むところになります。
大学院大学では一般的な大学院と同じく、修士課程を修了した場合は「修士」、博士課程を修了した場合は「博士」の学位が授与されます。
「高等専門学校」は大学にも編入できる5年制教育機関
「高等専門学校」は、高校卒業後ではなく、中学卒業後に進学する学校であり、実験や実習を重視し、技術者を育てるための教育を行っています。「高専」と略して呼ばれることもあります。
5年一貫教育を提供
高等専門学校は、5年一貫教育を提供しています。中学卒業からの5年間ですから、ちょうど高校(3年)プラス短大(2年)と同じになります。一般の高校、大学に入ると、専門的な分野について学び始めるのが、大学3年生ごろになりますが、高等専門学校の場合は入学してすぐに専門科目が学べるという利点があります。
なお、一般の高校の卒業後に高等専門学校へ編入したり、高等専門学校卒業後に大学3年次に編入するというコースも用意されています。
教養を身に付け理論を深めるのが「大学」
これまで見てきたように、大学校や大学院大学、専門職大学、高等専門学校は専門性が高く、より実践的な教育を行うのが特徴です。
それらと比較して、改めて一般の大学について考えてみると、幅広い知識やテーマを扱い、教養を身に着けるとともに、研究を通して理論を深め応用力を育むことができるのが大学だということがわかります。
学部ごとに専門性はあるものの、卒業後の進路については、大学の方が選択肢も多く、自由度が高いといえます。いろいろな可能性にチャレンジしたい人は大学が向いているのではないでしょうか。