すでにドローンは身近な存在となり、テレビ番組などでもドローンによる空撮映像を見かけない日がないほどになりました。「空の産業革命」ともいわれるドローンの技術や展望を見てみましょう。
「ドローン」は無人航空機
ドローンは、マルチコプターとも呼ばれ、複数のプロペラによって空を飛ぶことができる無人航空機の一種です。今後もさまざまな用途に、この技術が使われることになると思われ、作業の効率を上げたり、移動の省力化に大きく貢献するはずです。
ドローンは簡単に操縦でき自律飛行ができる
多くのドローンは、スマホなどを接続したコントローラーによって操縦します。しかし、衛星利用測位システム(GPS)衛星からの位置情報の受信とセンサーによって周囲の状況を把握し、人間による操縦を必要としない「自律飛行」するドローンも登場しています。飛行ルートを設定しておけば、すべて自動で移動させることもできます。
また、操縦者がARゴーグルを装着してドローンからの映像を見ながら操縦するタイプのドローンは、操縦を楽しむ競技や超小型ドローンでの屋内撮影などに使われています。
<Airpeak:ソニー:>
ラジコンとの違いは安定性
これまでにもあったラジコン飛行機、ヘリコプターの大きな違いは、飛行の安定性です。ラジコン飛行機は一カ所に静止することはできませんし、ラジコンヘリでのホバリング(空中で制止すること)には操縦テクニックが要ります。
しかし、ドローンでは飛行しながら簡単に静止することができます。このため、空撮(空からの撮影)をはじめ、さまざまな作業に適しているのです。運転に慣れは必要ですが、ラジコンに比べ操作は簡単です。
広がりつつあるドローンの活用
空撮用途では、単に映像を得るだけでなく、建造物のキズをチェックしたり、温度センサーにより人や動物の動き、インフラや太陽光パネルなどの建築物の損傷調査、農作物への農薬散布、山間部への宅配、人命救助、軍用など、さまざまな用途に使われはじめています。また、空ではなく水中を進むドローンもあり、海洋探査などに使われています。
<ドローンによる社会インフラ保全サービス:SoftBank for Biz>
人間が乗るドローンの開発も
ドローンのサイズにもよりますが、持ちあげられる大きさ、重量であれば、カメラやセンサーなどの運搬物を積載して、上空から利用できるようになります。
驚くことに、人を載せた状態で飛ぶドローンの開発も本格化しています。近い将来、ヘリコプターのように飛行する姿を見かけるようになるかも知れません。自家用車のような使われ方をすることも考えられます。現在のドローンは小型ですが、人を載せたり運搬の効率化を考えると、大型のドローンが登場することは必然でしょう。
<SkyDrive Project SD-03 world debut:SkyDrive>
弱点や運用上の問題も発展途上
ドローンにもいくつか弱点はあります。まず、強風に弱いことが上げられます。雨や雪も妨害となるので、飛行できるかは天候に大きく左右されます。また、位置情報はGPSを使っていますので、屋内での自動運転は難しくなります。
また、無許可で勝手に飛ばしてトラブルになることもあり、一時は社会問題となったこともありました。飛行できない場所は法律(主に航空法)で定められていますが、法的には問題なくても、飛行場所上空の土地所有者の許可がないと飛ばすことはできません。
将来はドローン操縦免許も必要に?
200g以下のドローンであれば登録や申請なしで飛行可能でしたが、今後規制が強化され、より小型な100g以下のトイドローンに絞られるようです。操縦免許は今(2021年1月現在)のところ不要ですが、今後必要になるかも知れません。海外ではその国の法令にのっとって飛ばす必要もあります。
無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html
配送などの実証実験は、自治体が特区を設定して許可しています。これは、内閣府の「国家戦略特別区域計画」に基づいています。ドローンは、Society 5.0の中での省力化を担う、重要な技術のひとつといえます。
国家戦略特別区域計画
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/index.html
「ドローン」で使われる技術
ドローンの操作自体は楽しいものですが、産業に利用されることを考えると、今後は基本的に自律飛行、自動運転が主流になると思われます。
自動運転のための技術や制度
現状では、ドローンは主に操縦者がいて、目視できることが基本になっていますが、ルートを決めた自動運転が可能ですので、省力化を考えるとすべての操作をオートマチックに行うようになると思われます。
政府は現行では飛行を認めていない「有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4)」の実現、つまり人が住む場所でも上空で荷物を自動輸送するなどができるよう制度を整備しようとしています。
そのため、ドローン操縦ができることはムダではありませんが、あくまでもパイロットだけを目指すのではなく、その仕組みを知りドローンそのものや、活用したシステムの各種開発を目指した方が将来も有望でしょう。
ドローンは無線通信を使ったロボット
ドローンは空を飛んでいるので、あまりピンとこないかも知れませんが、目(カメラ)とセンサーを持ったロボットととらえると理解しやすいと思います。
ドローン技術の基本の学問は、ロボット工学になります。プロペラは単に回転してるだけでなく、向きや強さを調整して飛行しています。ぶつからないように超音波センサーも使用しています。
またドローンは飛行中には常時無線通信を行っています。そのため、無線技術を理解しておくと開発や操作がやりやすくなるはずです。
アマチュア無線、無線技士の国家資格も役立つ
ドローンの無線通信には、一般的に無線LAN(Wi-Fi)を活用していますが、遠方に飛ばすなどより強力な電波を使いたい場合には、アマチュア無線が利用されることもあります。
これにはアマチュア無線技士の資格とアマチュア無線局免許を取得し利用しますが、アマチュア無線の利用は、金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な興味により行う自己訓練、通信および技術研究のための無線通信のみに限られています。つまり個人的な実験はできますが、業務での使用はできません。
業務であれば第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者の資格を取得して電波を扱います。このような無線技士の国家資格を取得しておくと、国内でドローンを扱う上でとても便利になります。
ほかにも、カメラから得た映像から物体を認識するために人工知能(AI)も活用されています。カメラやセンサーで得た情報からどのような分析をするかは、今後もさまざまな用途での取り組みがされるはずです。
「ドローン」関連技術を学べる大学の学部や学科
ドローン技術の基本を学ぶには、ロボット工学やロボティクス、メカトロニクス関連学科を選ぶとよいでしょう。主に工学部になります。
ドローンパイロットに免許はありませんが、ドローンのスクールや検定は実施されていますので、興味があれば受講してみるとよいでしょう。今後は操縦ライセンスが設定される可能性も高くなっています。
空撮、観測、測量、監視、点検、運送、災害救助、農業、漁業、軍、警察、警備
参考
一般社団法人 日本ドローン協会
https://alldrones.org/
ドローン大学校
https://dronecollege.ac/
日本大学 生産工学部 環境安全工学科 ドローン部
https://www.en.cit.nihon-u.ac.jp/information/drone.html