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【インテリアデザイン】とは。建築設計とちがう? 日々を快適に暮らす空間づくりに重要

建物を作り上げる建築や設計という仕事では、外側から見える建物の構造そのものに目がいきがちですが、実際に人が使うのは建物の内部なので、外部より内部のほうが人と接する時間が長いのです。今回は建築物の内装を手掛ける「空間デザイン」「インテリアデザイン」について解説します。

建築物内部を担当するのがインテリアデザイン

インテリアデザインは、建物を作ったり、既存の建物をリニューアルしたりする際に、建物の内部に関してのデザインです。

実際の工事は施工業者が行いますが、「建物をデザインする」という作業は、提案から設計図を作り、図面の通りに建築できているかを確認するなど、建築全体を通して管理をするものになります。ゼロから建物を作るだけでなく、内部だけをリニューアルする工事もとても多いので、この分野の仕事はほぼ尽きることがなく、やりがいはあるでしょう。

<2023 Interior Design Trends I Trend Forecast>

インテリアデザインは、空間(スペース)デザインと呼ばれることもあります。とても似かよった内容なのでダブっている部分も多いのですが、少し違ったニュアンスで使われています。「空間デザイン」は商業施設を含め、建物内外を含めたデザインを示しています。例えば、施設内に庭園などがあったりすると、合わせてデザインをすることも考えられます。

広い視点で都市~インテリアまで見ると環境デザインになる

より広い意味を持たせ「環境デザイン」と呼ぶこともあります。この場合には、周囲の環境をトータルに考えた設計を意味しています。例えば森の中に建物を建てて、自然と一体化した作りにするとか、都市に遊歩道の機能を持つ公園を違和感なく作ったりと、都市デザインも含め、内装まで一気通貫で広い目線をもってデザインをするという意味があります。

環境デザインと呼ぶときに、環境を考慮したデザイン全般でプロダクトデザインやディスプレーデザインなど、建築以外も含まれることもあることから、「住環境デザイン」や「建築環境デザイン」と指定して使われることもあります。

大学の学科専攻科目を見る際には建築系が含まれているかどうか確認しておくと良いでしょう。環境デザイン関連の学科は、美術系の大学に多くあります。

<環境デザイン学科|学科紹介&入試解説動画2021 多摩美術大学>

上記の用語に対比させて「インテリアデザイン」と呼ぶ場合、住居や店舗の内装のみに限定していることを示してます。ライティング(照明)や壁、ドア、作り付けの棚や家具、水回りといった、普段から触れる生活にもっとも近い内装部に特化してデザインを行います。場合によっては家具そのものをデザインする場合もあります。

<インテリアデザイナー(職業情報提供サイト職業紹介動画)厚生労働>

もっとも身近なインテリアコーディネートも仕事の範囲

インテリアデザインの仕事には「インテリアコーディネート」まで含まれることもあります。家具、カーテンやブラインド、小物などで部屋を見栄えよくする作業で、これについては多くの人は自宅を自分でコーディネートしていることでしょう。この一般的な作業を仕事とすることになるので、より高いセンスが問われます。実際のデザイン作業ではインテリアをどこまで担当するのか細かく決めてから行い、このインテリアコーディネートは行わず分業になることもあります。例えば、ホテルや商業施設ではトータルで仕上がっている必要がありますし、住居では住む人がコーディネートすることが多いはずです。

<インテリアコーディネーター(職業情報提供サイト職業紹介動画)厚生労働省>

インテリアデザイン関連の資格は多い

このように内装を作るというだけでも、たくさんの仕事があります。そのため、作業内容に応じた資格が用意されています。インテリアデザイナーそのものの名称の資格は無いのですが、インテリアコーディネーターやインテリアプランナー、アソシエイト・インテリアプランナーといった民間の資格があります。

インテリアプランナーがほぼインテリアデザイナーの資格

インテリアプランナーは、ほぼインテリアデザイナーの仕事を網羅しています。プランを提案し、設計図も作成する技術を持っています。インテリアプランナーは建築士の資格を持っていれば、学科と設計製図に分かれた試験のうち、学科試験が免除されます。そのため両方持っていることも多いようです。インテリアプランナーの試験で、学科のみを受けることで、アソシエイト・インテリアプランナーという資格を得ることもできます。インテリアプランナーを補助して仕事をするのに役立ちます。

インテリアコーディネーターの資格はインテリアの知識があればよく、製図の知識などは問われませんが、仕事として進めていくには部屋のイメージイラストを描いたりする技術は必要になるでしょう。こちらは内装といっても建物に関わることはなく、完成した後で作業をする仕事になります。

・日本インテリアプランナー協会
http://jipa-official.org/

・インテリア産業協会
https://www.interior.or.jp/examination-ic/

建築士の資格があれば建物自体にも関われる

上記はインテリア関連の民間資格ですが、建物全体を設計する仕事では、建物全体を設計するには建物の規模により一級、二級、木造建築士という国家資格が必須になります。一/二級建築士とタッグを組んでインテリアデザインの作業を分担することも多いパターンですので、必ずしも必要ではないのですが、建築設計の仕事をするのであれば、ぜひ目指してみてください。

建築士の受験には四年制大学の建築学科卒業といった資格も必要で、一級建築士ではさらに実務経験も問われます。建築士の資格は建物自体の設計に必須で内装には不要ですが、実務経験なしで取れる二級建築士までを取得しておくと、商業店舗のデザインなどができますし、建物の図面を書くことができる証明になります。インテリアを専門にするつもりであっても、国家資格である建築士の資格が取れる学部を目指しておくほうが、より幅が広がると思います。

・東京建築士会
https://tokyokenchikushikai.or.jp/examination/index08.html

・一級建築士と二級建築士の違いを知って、自分に合った建築の仕事を選ぼう 久留米工業大学
https://www.kurume-it.ac.jp/style/architect-difference

建築設計の仕事は細かく分業化されている

このように建築設計の仕事はチームで進められることが多く、建物の意匠、構造計算、設備部分、CGや模型の作作製インテリア、外構、現場管理などと作業に応じて分業されます。これらを1一の事務所でこなすこともありますが、分業作業に特化した事務所も多く存在します。当然インテリアを専門にデザインする事務所もあります。

有名ブランドの店舗やラグジュアリーホテルといった系列店をワールドワイドで統一感ある内装にしてある、といったデザインも街中でよく見かけるはずです。た例えばイギリスにあり世界的に有名な内装デザイン専門の事務所「GAデザイン・インターナショナル」は、JWマリオット系列のホテルを多数手掛けて、一貫したモダンデザインで定評があります。

・GAデザイン・インターナショナル
https://thega-group.com/

インテリアデザイナーとして人気を得るには、高いデザイン能力が求められます。建築の知識を持ちつつデザインのセンスもあるという高度な技術を要求されます。デザインのセンスを磨いていくのか、建築の知識を付けていくのか、軸をどちらにしていくかで、上記にあげた資格をどこまで目指すのか、デザインの勉強をどこまでするのか決めていくと良いでしょう。

「インテリアデザイン」が学べる大学の学部、学科

多少なりとも建物の設計にも関わりたい場合には、建築士が狙える理工学部、工学部や芸術学部の建築学科を目指すと良いでしょう。最近では、学科としてではなく、学部に建築学部が設置されている大学も増えています。

・工学院大学:建築学部
https://www.kogakuin.ac.jp/faculty/architecture/index.html

・芝浦工業大学:建築学部
https://www.shibaura-it.ac.jp/faculty/architecture/

・神奈川大学:建築学部(2022年4月開設)
https://www.arch2022.kanagawa-u.ac.jp/

・関西学院大学:建築学部
https://www.kwansei.ac.jp/s_architecture

インテリアプランナーの資格を取るケースでも図面の知識は必要になっています。インテリアコーディネーターの資格では図面が要らないので、デザイン学校などでデザインを勉強して、進むこともできます。企業のロゴデザインやブランディング、空間デザインあたりから、店舗などのデザインに関わることもあります。