東京理科大学では、データサイエンス・AI概論(一般教養科目)、データサイエンス教育プログラム(学部横断)、SASとの共同認定資格プログラムを通して、全学部の学生がデータサイエンスを学ぶことができます。各プログラムについて、東京理科大学 理学部第一部 応用数学科 瀬尾隆先生にお話を聞きました。
<東京理科大学のデータサイエンス教育 | 東京理科大学 理学部第一部 応用数学科 瀬尾隆先生>
東京理科大学のデータサイエンス教育
東京理科大学 理学部第一部 応用数学科 教授
データサイエンスセンター副センター長
瀬尾 隆 先生
研究分野:統計科学 (多変量解析) 、数学基礎・応用数学 (数理統計学)
本学でのデータサイエンス教育は、長い歴史があります。理論と応用の両面を志向する数理学系学科として、1961年に全国に先駆けて開設された応用数学科は、設立時から統計学に力を入れてきました。現在、データサイエンス教育の中核となる学科は、理学部第一部応用数学科・理学部第二部数学科(神楽坂キャンパス)、理工学部情報科学科・理工学部経営工学科(野田キャンパス)、工学部情報工学科(葛飾キャンパス)です。本学ではこれ以外の学科でも、データサイエンスを様々な科目で学ぶことができます。
変化が激しい社会では、柔軟に対応する力が必要になります。複雑な現象を統計的に予測・解明するためには、統計処理を行うスキルを身につけるだけでなく、数式を用いて定式化し、数学的に解く理論と方法論をしっかりと学習することが大切です。今はPythonが流行っていますが、別の言語が主流になる時代がくるかもしれません。根本的なことを学ばずに、スキルを身につけただけでは、そうなったときに対応できなくなります。
本学では、論理的思考力や柔軟な対応力を身につけてほしいと考えています。そのためのベースとなるのが、数学なのです。微分積分や線形代数をきちんと理解できていると、データサイエンスだけでなく、他のコンピュータ関係にも活かすことができます。
データサイエンスを基礎から学ぶ「データサイエンス・AI概論」
一般教養科目として、2022年度から「データサイエンス・AI概論」がスタートしました。全学生対象(1,2年生)で、リテラシーレベルの講義が全15回、Zoomによるオンデマンド配信で行われます。最先端で活躍されている企業の方々に登壇していただく、オムニバス形式の講義です。大学生になったばかりの1年生にもわかるように、「データサイエンスとは何か」から始まり、どのようなデータが集積され、分析・利活用されて、新たな価値創造やビジネスの構築に活かされているかを学びます。
スタートしたばかりですが、予想以上に人気があり、2022年度の履修者は約3000人となりました。学生時代にどのようなことを学んでおくとよいかといった話も聞くことができるので、キャリア設計にも活かすことができる講義です。
全学部生向けの「データサイエンス教育プログラム」[基礎]
2019年度に導入された「データサイエンス教育プログラム」[基礎]は、在籍するキャンパスや学部学科に関わらず、データサイエンスに関する科目を履修することができます。
微分積分と線形代数に関する内容を含む科目、統計学に関する内容を含む科目、プログラミング言語を1種類以上学修できる科目、ITを利用してデータ解析を学修できる科目、学科特有のデータの扱い方を学修できる科目、というように分類した5つのカテゴリーから、それぞれ4単位以上、合計20単位以上を受講。B以上の成績でプログラムを修了すると、学長の認定書が交付されます。頑張れば3年生の前期に取り終わるので、履歴書に書くことも可能です。
全学で約500科目の中から選択できるのは、幅広い研究領域を持つ本学の特長です。5つ全てのカテゴリーを自分の学科で履修できない場合は、他学科履修になりますが、20単位のほとんどが卒業単位に含まれます。例えば、応用数学科の場合、プログラムの20単位はすべて卒業単位として認定。物理学科などでは、8単位ほどが他学科履修となるので、その分は卒業単位とは別に取る必要があります。
2019年度から2021年度までで、理学部第一部では96人に認定書が交付されました。そのうちの87人が、応用数学科です。B以上というのはかなり厳しいので、認定書を交付された学生はデータサイエンス教育の中核となる学科が多いです。しかし、理工学部物理学科でもこれまでに10人が認定書を交付されており、中核ではない学科の学生でもB以上が取れないことはありません。本学の卒業生は企業からの信頼が厚いですが、この認定書があればさらに評価が高まるでしょう。
データサイエンティストを目指すなら中核となる学科へ
データサイエンスは奥が深いので、データサイエンス教育プログラムだけでデータサイエンティストとして活躍することは難しいでしょう。しかし、自分の専門にプラスして学んでおくことで、その分野での活躍の場が広がります。例えば、製薬会社でもデータ処理のスキルが求められているので、薬学部での勉強にプラスしてデータサイエンスも学んで、仕事に活かしている卒業生も多くいます。
データサイエンスをより深く学び、データサイエンティストになりたい人は、理学部第一部応用数学科など、データサイエンス教育の中核となっている学科に行くのがよいでしょう。より深めたい人向けには、全大学院生が対象となる、データサイエンス教育プログラム[専門]も用意しています。
PythonやRだけでなく、SASも学びたい学生向けのプログラム
本学では、「SAS Academic Specialization(SASとの共同認定資格プログラム)」も、2021年度より全学で実施しています。SAS(サス)とは、「Statistical Analysis System」の略です。アメリカのSAS Institute社が開発したデータ解析、統計分析や解析結果の可視化が行えるソフトウェア、そしてそのソフトウェアで使用されるプログラミング言語のことを指します。SASがPythonやRといったオープンな統計解析用のプログラミング言語と異なる点は、解析の保証がSAS Institute社によってあることです。ですから、銀行や保険会社、製薬会社などで多く使われています。
プログラムの対象となる3科目(6単位)を取得し、SASのソフトウェアを用いたデータ解析を行い、それに関する論文を提出して合格すると、本学とSAS Institute社が協同の認定書を交付します。SASはアメリカをはじめ、全世界の大学と提携しているので、認定はグローバルで共通の基準です。ですから、海外企業への就職にも活用できる認定書になります。SASはライセンス料がかなり高額なので、個人で購入することは難しいでしょう。
本学では好きなだけ利用することができるので、就職先で即戦力となることも可能です。全学部生が対象ですが、学科によっては卒業単位にプラスして履修することになります。余裕がないと他学科で取るのは難しいかもしれませんが、他学部他学科履修制度もあり、卒業単位に含めることが可能です。
データサイエンスを学びたいと思っている高校生へのメッセージ
現在もAIやデータサイエンスが注目されていますが、今後ますます発展し、進化していくでしょう。それに対応するためには、スキルの習得だけでなく、論理的思考力や柔軟な思考力が必要です。それらを培うためにも、今の勉強をしっかりして、いろいろな事に興味を持ち、何にでも積極的にチャレンジしましょう。
研究室情報
大学名 | 東京理科大学 |
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学部・学科 | 理学部第一部 応用数学科 |
研究室 | 瀬尾研究室 |
教員名 | 瀬尾 隆 教授 |
研究キーワード | 統計科学 (多変量解析) 、数学基礎・応用数学 (数理統計学) |
URL | https://www.rs.kagu.tus.ac.jp/seo/seo-lab22/ |
東京理科大学
https://www.tus.ac.jp/