SF映画やアニメでは、さまざまなロボットたちが人間の暮らしをサポートするシーンが描かれています。いま、まさにそのような「サービスロボット」と呼ばれるロボットの開発が急ピッチで進んでいます。今回は、これから広がっていくサービスロボットの世界について解説します。
「サービスロボット」とは?
「ロボット」というと何をイメージしますか?
アニメや特撮が好きな人は、人間が操縦して悪の組織や怪獣と戦う「巨大人型ロボット」、人間と仲良しの「ネコ型ロボット」のようなものを思い浮かべるのではないでしょうか。いうまでもなく、そのようなロボットはまだ現実には存在しません。
ロボットのなかには、昔から工場で使われているものも
では現実にあるロボットとはどのようなものでしょうか。実際にロボットが多く活用されている場所としては製造工場が挙げられます。
工場などでは、製品を作るための腕(マニピュレーター)を持った機械である「産業用ロボット」が活躍しています。彼らは腕を人間よりも正確、かつスピーディーに動かして、部品を取り付けたり溶接したりして、製品を製造しているのです。
<ファナックロボット商品紹介2021>
最近登場してきたサービスロボット
実用化可能なロボットといえば産業用ロボットという時代が長く続きましたが、近年、人間に何らかのサービスを提供するロボットが登場してきました。それが「サービスロボット」「スマートロボット(賢いロボットの意味)」「AIロボット」と呼ばれるものです。
産業用ロボットは決められた通りの動きを実行するものですが、AIが組み込まれたサービスロボットは、人間とコミュニケーションを取ったり、身の回りの手伝いをしてくれたりします。
活用され始めたサービスロボットの例
サービスロボットは、すでに実際のビジネスの場、一般の家庭内でも使われ始めています。今のサービスロボットがどのような動きを見せるのか、いくつか例を紹介します。
きっと驚かれることでしょう。
人型のサービスロボット
日本の人型ロボットとして有名なのはソフトバンクの「ペッパー」です。ペッパーは公共施設や会社の受付、飲食店やショッピングセンター、ホテルなどで、来訪者に対して会話や案内などを行う接客ロボットとして利用されています。
<Pepper Play 使用方法>
他にも2000年に本田技研工業が開発した、2本足で歩行できるASIMO(アシモ)も有名です。ASIMOは両足を使って歩くことができるだけでなく、階段を上ったり下りたり、踊ったり、会話をすることもできました。
<ASIMO 20周年>
その後も、2本足歩行する人型ロボットは、日進月歩で急速に進化を続けています。機械的な機構が改善するだけでなく、人工知能(AI)によって制御され、多種多様な動きが可能になったり、状況に応じて動きを変えたりするようなことが可能になっています。
例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者によって設立されたボストン・ダイナミクスの人型ロボット「Atlas(アトラス)」は、バランス感覚に優れており、蹴飛ばされても倒れることなく踏ん張ったり、歩行ルートに障害物がおいてあっても器用に避けて進みます。また驚くべきことにバック転なども可能です。
<Atlas | Partners in Parkour>
近い将来、人間サイズの人型ロボットも
自動運転の電気自動車で有名なテスラは、2021年8月に、身長約173センチ、重量約57kgという、人間に近いサイズ、人間にそっくりな形状の人型ロボットを開発すると発表しました。試作機ができ上るのは2022年になる見込みです。
「人間サイズの人型ロボット」となると、人間が行ってきたさまざまな作業を代理で行うことも期待されます。テスラのCEOイーロン・マスクは、人間にとって危険な作業をこのロボットに行わせることを想定しています。
<テスラ “ヒト型ロボット”の開発へ(2021年8月20日)>
動物型のスマートロボット
同じボストン・ダイナミクスの4本足ロボット「Spot(スポット)」は、2020年に販売を開始されています。頭の部分にはアームを取り付けられるため、移動した先で何らかの作業を行うことも可能です。用途としては、危険な場所での警備や見回り、点検、運搬などのほか、エンターテインメントでの利用も考えられます。
<Spot’s Got an Arm!>
<Spot’s On It>
家電としてのサービスロボット
家の中で使う家電でもサービスロボット化が進んでいます。筆頭に上がるのは、マサチューセッツ工科大学の研究者によって設立されたアイロボットの製品であるロボット掃除機「ルンバ」でしょう。日本でも販売されているルンバは、家の中を自動的に動き回って床の上のゴミなどを回収します。
部屋の形や家具の配置などを記憶して効率よく掃除をしてくれたり、スマートフォンと連携できる点などは、スマートロボットらしさといえるでしょう。
<ルンバ980紹介ムービー>
人間にやすらぎを与えるサービスロボット
日本のGROOVE Xが開発したのが家族型ロボットの「LOVOT(ラボット)」です。AIが搭載されているLOVOTは、家庭の中での人間とのふれあいを通して成長していくのが特徴です。よくLOVOTをかまってあげる人は、それだけLOVOTがなついてくれるようになります。
LOVOTは、アメリカの「the Verge Awards at CES 2019」のBEST ROBOTという賞や、日本の「COOL JAPAN AWARD 2019」も受賞しています。
<堀江貴文×林要 スペシャル対談 in LOVOT MUSEUM>
ここで挙げられたもの以外にも、サービスロボットはいろいろな場所、さまざまな用途で使われ始めてます。そして今後も、新しいサービスロボットが次々と開発され、新たなシーンで活用されていくことでしょう。
サービスロボットの未来
今後もサービスロボットの活用は広がっていくでしょう。特に、人間が働くのが困難な場所、危険な場所ではサービスロボットが期待されます。
例えば、火事や事故、災害などの現場では危険な作業が伴います。いまはレスキュー隊員たちが自らの危険を厭(いと)わず救助に当たっていますが、そこにサービスロボットが活用できれば、人間のリスクを低減することにつながるでしょう。
実際、ASIMOの技術を生かして作られたロボットは、福島の原子力発電所の解体作業に役立てられています。放射能の高い場所での作業は、人間には不可能ですが、ロボットであれば対応可能な作業もあります。
さらに将来的には、他の惑星への移住なども視野に入ってくるでしょう。これを実現させるためには、居住できる環境や設備を人間が住む前に用意しなくてはいけません。それには人間より先にロボットを送って、仕事をしてもらうのが一番です。
人間が操縦するロボット同士の戦いは行われていた!
最後に少し雑談を。
実は、すでに人間が操縦するロボット同士の対決が行われています。日本の水道橋重工が人間の乗れる巨大ロボット「クラタス」を開発したところ、それに触発されたアメリカのMegaBotsが巨大ロボットを作り、「ロボット同士の戦いをしないか」と挑戦状を突きつけました。
そして2017年、史上初となる人間が搭乗する巨大ロボット同士の対決が実現したのです。果たしてその勝負の行方はいかに! 結果は以下の動画で確認してください。
<THE GIANT ROBOT DUEL>
このように、ロボットに対して特別アツイ情熱を抱いている研究者は少なくありません。そこから、想像を超えるような新しい研究が発展していくことも期待できるでしょう。
サービスロボットについて学べる大学の学部、学科
サービスロボットは、大学の理工学部、工業系大学などで学ぶことができます。サービスロボットについて学ぶ場合は、
- 機械としてのハードウエアに関する知識
- OSや制御システム、アプリケーションなどのソフトウエアの知識
- ロボットの活用法
- 関連する技術として、AIやセンサーなどのテクノロジー
など、さまざまな分野について学んでいくことになります。
サービスロボットについて専門的に学びたい場合は「ロボット工学学科」「ロボティクス学科」「ロボットシステム研究室」といったように、「ロボット」「ロボティクス」などの名称を持つ学部、学科、研究室を探してみましょう。
コミュニケーション、サービス業、介護や福祉、日常生活の支援、災害支援など