今回紹介する研究室は、人に無害な紫外線を使ったLED殺菌灯の開発に取り組んでいる工学院大学「固体物性研究室」。紫外線による殺菌・ウイルス不活化技術は、医療機関をはじめ、多くの業界で注目されています。
どんな研究をしている? 「固体物性研究室」
動画で研究紹介(4分)
“当たり前の生活”を守るために「LED殺菌灯」の開発を目指す!
「固体物性研究室」は、新しい半導体材料を用いて、人に無害な紫外線を発光させることに世界で初めて成功。水銀を使った従来の殺菌灯に代わる、安全で、効率のよいLED殺菌灯の開発に取り組んでいます。
紫外線には、皮膚がんやシミなどの悪いイメージがありますが、産業分野では広く活用されています。例えば、オゾン層でカットされているUV-Cと呼ばれる短い波長の紫外線には、強い殺菌力があります。その殺菌力を活用したのが、UV-Cを人工的に発生させる殺菌灯です。
従来の殺菌灯に使われている波長254nmの紫外線は、人の目や皮膚に有害なので、人のいない環境でしか使うことができません。しかし近年、波長が207~222 nmの紫外線なら、人の組織を損傷することなく、ウイルスを不活化できることがわかってきました。“当たり前の生活”を維持したまま感染症対策が行える、人に無害なLED殺菌灯の開発が期待されています。
学生が語る研究室の魅力
「紫外線は悪影響を与えるイメージしかありませんでしたが、医療現場などで活用されていると知り、興味を持ちました。今は、真空紫外線の発光材料を研究しています。オゾンを生成し、殺菌や脱臭などへの活用を目指す研究です。まだ実用化されていない分野なので、新しいことへの挑戦にやりがいを感じています」(学部4年)
「生活の中でLEDを見かけることが増えてきたので、自分で作ってみたいと思うようになりました。今は、深紫外線センサーの制作に取り組んでいます。紫外線は目に見えないので、出ているか出てないかを感知するセンサーが必要になります。この研究は、何もないところからデバイス化まで、一連の流れをすべて自分でできるところが面白いです」(修士1年)
先生紹介(工学院大学 尾沼先生)
尾沼先生は、どんな先生?
「小学生のころから石が好きで、当時の愛読書は石の図鑑。長野県に住んでいたので、川に水晶を取りに行ったり、化石を探して遊んでいました」(尾沼先生)
「実験で思った通りの結果がでなくて行き詰まることも多いですが、的確なアドバイスがもらえるので頼りがいがあります。いつも大学にいてくれるので、困ったらすぐに聞きに行きます」(修士1年)
尾沼先生から高校生へメッセージ
「大学を選ぶとき、『先生に言われたからなんとなく』ではなく、自分で考えて決めてほしいですね。何のために研究するかが大切ですが、とりあえずは『実験室にこもってみたい』『この先生から学びたい』とかでもいいと思います。私は物理が好きで、物理ばかりやっていました。やっていくうちに、人の役に立ちたい気持ちなどが出てくるのだと思います。漠然とした思いでもいいので、何かを成し遂げたいという野心のある人に関心を持ってもらえたら嬉しいです」
卒業後の進路
・6~7割が大学院へ進学
・就職先は、自動車などの運輸関係、情報システム関係、電気・電子メーカーなど
「学科の中でも、大学院へ進学する学生が多い方です。LEDはいろいろな分野で使われているので、関連する仕事も多く、どこへ就職しても重宝されます」(尾沼先生)
研究室情報
大学名 | 工学院大学 |
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学部・学科 | 先進工学部 応用物理学科 |
研究室 | 固体物性研究室 |
教員名 | 尾沼 猛儀 教授 |
研究キーワード | 半導体、LED殺菌灯、UV-C、ウイルスの不活化 |
URL | https://www.kogakuin.ac.jp/faculty/lab/ae_lab41.html |