研究テーマ

社会の仕組みをデザインする【社会デザイン】。 学生だからこそ考えたい、あるべき未来の社会

社会デザインという言葉から「ファッションやインテリア」「アートや美術」などを思い浮かべる方も少なくないでしょう。しかし、本来のデザインの意味は設計や意匠であり、社会デザインには「社会そのものを設計する」という意味が込められています。『社会デザイン』とは、社会問題を解決するために、社会の仕組みを見直して新しく変えていこうという取り組みです。

社会をデザインする『社会デザイン(ソーシャルデザイン)』とは?

いじめや差別、貧困や格差、ジェンダーや身体的障害のような一人ひとりに身近な問題から、自然環境、国際化、災害対策のような大きな問題まで、私たちの暮らす社会にはさまざまな課題が存在します。そのような社会が抱える課題を「デザイン」の力で解決しようというアプローチが、「社会デザイン(ソーシャルデザイン)」です。

社会そのものをデザインの対象とした取り組みが社会デザインであり、社会のルールや仕組みを見直し組み替えたり、あるいは新しいルールやサービスを創出したりして、社会が抱える課題を解決することが社会デザインの活動です。

複雑すぎる世の中だからこそ、『社会をデザイン』による解決を

社会デザインが注目されるようになった背景の一つには、私たちの社会が抱える課題が複雑になってきたことが挙げられます。例えば、貧困。これまでは「お金がなくて食べるものも買えない」といった貧困問題に対して「経済的な支援」という形で解決を図ろうとしてきました。

見えない貧困は経済的支援だけによる解決は難しい

ところが現代社会では、外から見えにくい形の貧困が増えていると言われています。例えば、経済的に苦しくても、スマートフォンなどを所持しているという人は少なくなく、外からは貧困状態であると判断するのは容易ではありません。

また「本当に支援が必要な人に支援が届かない」という問題も指摘されています。このように経済的な支援だけでは、貧困を招く根本的な原因解決には至ることはできないでしょう。

そのような見えにくい貧困を放置すれば、教育格差や労働環境の劣悪化を招き、ひいては治安の悪化などにもつながりかねません。その解決には、社会全体を俯瞰(ふかん)した対策を取り組むことが必要となります。

新しい機械、文化の登場で生まれる課題も

皆さんにも身近なSNSでも、たびたび炎上やバカッター(公序良俗に反する振る舞いを自ら行いネットに公開する行為)、ネットを悪用した詐欺、サイバー犯罪などの事件がニュースに取り上げられています。

しかしそれらの多くはインターネットやスマートフォンが普及してから生まれたものであり、かつては存在しなかった問題といえます。このような新しい問題は今後も次々と生まれるでしょうし、新しい問題には新しい対策が必要となるでしょう。

SDGs的な視点からも重要視したい『社会をデザイン』

2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)も社会デザインは関連があります。SDGsとは、貧困や飢餓、健康や教育、安全、エネルギーなど、私たちの社会が抱える課題を17のカテゴリに当てはめ、2030年までに達成しようという目標です。

ここで挙げられた課題を解決してこそ、私たちの社会を持続可能なものに変えていけるという考えのもと、世界の多くの企業、組織がSDGsに取り組み始めています。社会デザインの取り組みもまた、SDGsを実現するためのアプローチの一つといえるでしょう。

身近な問題からグローバルな問題まで、『社会をデザイン』が扱う課題は幅広い

社会デザインの対象は社会そのものですから、取り上げる課題は幅広く、自然環境、健康や医療、教育や育児、生きがいづくり、福祉、QOL(生活の質)、高齢化、少子化、ジェンダーや身体的障害、地域コミュニティーやまちづくり、防犯、交通インフラ、観光、就労支援、社会的排除、災害対策や災害時の被災地支援、過疎化、社会インフラ、人工知能(AI)やロボティックスなど新しいテクノロジー、国際問題など、非常に多岐にわたります。

これからの新しい社会に向けて必要な考え方

さらに、「アフターコロナ時代」「ウイズコロナ時代」「新しい生活様式」「ニューノーマル」という言葉に象徴されるように、新型コロナウイルス感染症の拡大により、従来とは異なる生活、新しい働き方への変化が訪れようとしています。これから形成されていくであろう、新しい文化、新しい社会においても、社会デザインの考え方は重要になるといえるでしょう。

『社会をデザイン』を生かせる場、仕事

社会的な問題といえば、以前は行政機関、NPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)などが主に活動してきましたが、近年は一般の企業も「社会問題解決に貢献したい、社会貢献に寄与したい」という考えから、CSR(企業の社会的責任)やボランティア活動だけでなく、自社のビジネス、サービスを通して、社会の課題を解決しようと取り組んでいる企業も増えてきました。

『社会をデザイン』を実践するためのビジネス、起業も

社会課題の解決につながるビジネスやサービスを「ソーシャルビジネス」と呼んでいますが、これは社会デザインを具体的なビジネス活動に落とし込んだものといえるでしょう。既存企業がソーシャルビジネスを手がけるだけでなく、ソーシャルビジネスを始めるために新しく会社を興すケースも増えています。

そして一つの組織だけではなく、地域の人々、企業、NPO、大学、自治体などが垣根を越えて、さまざまな視点から課題に取り組もうというケースも出てきました。

『社会をデザイン』に求められる力

社会デザインを推進する上で重要になるのは、多様な考え方を受け入れる力、広い視点、隠れた問題を見つける能力、他の組織、業種や業界の人たちとコミュニケーションを取りながら解決を目指して模索する能力です。

社会デザインを学ぶことで、視野や考え方が広がり、新しいビジネスやサービスを立ち上げる力、他の組織や団体、企業のメンバーとコラボレーションする力も磨かれるでしょう。学生時代から、社会デザインの視点を持って世の中を見ることは、意義のあることといえます。

『社会をデザイン』を学べる大学や学部

社会デザインは新しい考え方であり、扱う内容は非常に幅広いものといえます。また、社会デザインの具体的な考え方や取り組み内容も、大学によって異なることもあります。

社会デザインという名前を掲げている学部、学科としては、立教大学大学院の21世紀社会デザイン研究科や社会デザイン研究所、兵庫県立大学 環境人間学部・研究科 社会デザイン系などがあります。

掲げていない大学、学科でも、社会学や経済学、教育、福祉などの学部、さらにはITなどのテクノロジーで社会課題の解決を図ろうとすれば技術系学部、人間にとっての使いやすさを追求すればデザイン系の学部でも、このテーマに触れることは可能です。

自分の学びたい内容、進みたい将来と合致しているかをよく考えて、大学、学部を選びましょう。

『社会デザイン』が役立つ分野

SDGs、自然環境保護、健康や医療、教育や育児、福祉、QOL(生活の質)、少子高齢化、都市計画、防犯、交通インフラ、観光、社会インフラ、国際問題

社会デザイン学会
http://www.socialdesign-academy.org/