今回紹介する研究室は、食品の製造プロセスにおける品質評価などの研究に取り組んでいる工学院大学「食品化学研究室」。美味しさや鮮度など、食品の品質に関わる成分の化学構造と量的な変動を捉えることで、製造プロセスの最適化に役立つ研究です。特に、香りに着目した研究を多く行っています。
どんな研究をしている? 「食品化学研究室」
動画で研究紹介(4分)
化学の視点から食品に含まれる香りの成分を研究
「食品化学研究室」では、食品の鮮度維持や製造プロセスと香気成分の関係に着目した研究を中心に行っています。例えば生鮮食品では、保存状態によってどのような成分が増えてくるのか、指標になる成分を探す研究です。香りは微量でも鼻で感じることができるので、特に香気成分にフォーカスしています。指標になる成分が見つかれば、見た目ではわかりにくい鮮度の違いを計り知ることができるようになり、鮮度維持に役立ちます。
他の学部でも食品に関する研究を行いますが、家政学部では食品そのものの美味しさや柔らかさなどを評価することが多く、農学部では品種の違いなど、食材にフォーカスすることが多いです。一方、この研究室では、調理や加工、保存といったプロセスで食品の特性がどのように変化するのか、成分の構造や組成にフォーカスしています。また、食品を扱う研究室は他にもありますが、応用化学科で看板として「食品化学研究室」と掲げているところは珍しく、食品会社との共同研究も多いです。
学生が語る研究室の魅力
「子どもの頃からグミなどのお菓子が好きで、どうやって色をつけているか興味がありました。授業で着色料の勉強をする機会があり、食品を化学の目線で考えることの面白さを感じ、もっと深く研究したいと思ってこの研究室を選びました。今は、味噌などの発酵食品を用いて、味と香りの相互作用について研究しています。食品ごとに、匂いの正体である化合物を特定できることが面白いです」(学部4年生)
「入学前から化学的に香気成分を調べることに関心があったので、その研究ができる大学を選びました。パンを作ることも好きなので、ある酵素をパンに添加したときの香気成分について調べています。ホームベーカリーでパンを焼くことも研究の一部です。酵素を添加すると風味と柔らかさが変わることは知られていますが、香気成分と風味の関係についてはまだわかっていません。難しいテーマですが、少しでも何か見えてきたら後の人につなげられると思います。高校生が関心を持ってくれたら嬉しいです」(学部4年生)
先生紹介(工学院大学 飯島先生)
飯島先生は、どんな先生?
「大学4年生から、食品の香りに関する研究を続けています。ライフワークは、『好き嫌い』に関する研究です。トマトほど好き嫌いが激しい作物はないと思っていて、その原因は香りにあると考えて調べています。
好きなことは、スーパーめぐりです。海外で学会があるときは、必ず現地のスーパーに行きます。その国の人気食品などを買うようにしていて、今までで一番面白かったのはオランダのスーパーです。大好きなオランダの伝統菓子『ストロープワッフル』をはじめ、お肉やハムの種類なども多く揃えています。オランダではリコリスというグミが人気なのですが、アメリカの研究室にいたときにオランダ人が買ってきたら、私と中国人、韓国人の研究者はみんな口に入れた瞬間に出しました(笑)。アジア人の口には合わないようで、そういった食の好みについても知ることができるので、スーパーは面白いです」(飯島先生)
「わからないことだらけの実験でも、先生の説明は的確でとてもわかりやすいです。テキパキしていますが、学生にはフレンドリーに話しかけてくれます」(学部4年生)
飯島先生から高校生へメッセージ
「食品と化学はつながっていることを意識して、授業なども展開しています。化学の中でも、有機化学に興味がある人に取り組んでほしい分野です。『何でも食べます』という人より、好き嫌いがある人の方が面白い研究ができるかもしれません。極端な好き嫌いがあると、自分はなぜそれが嫌いなのか調べることが、研究のきっかけになったりします。食品会社との共同研究も多いので、将来は食品会社に就職したいという人も楽しく取り組めるでしょう。新しい商品が出たらすぐに食べてみるような、食のトレンドに敏感な人にも向いている分野だと思います」
卒業後の進路
・3割~4割が大学院へ進学
・就職先は、約半数が食品関係の企業。そのほかは、公務員や教員、IT企業など。
「食品会社に就職が決まっていて、製造や新商品の開発に携わる予定です。研究室で学んだ技術や知識を活かして、食品業界に貢献したいと思っています」(学部4年生)
研究室情報
大学名 | 工学院大学 |
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学部・学科 | 先進工学部 応用化学科 |
研究室 | 食品化学研究室 |
教員名 | 飯島 陽子 教授 |
研究キーワード | 香気成分、発酵食品、野菜分析、食品フレーバー、フードケミストリー、有機化学 |
URL | https://www.kogakuin-applchem.jp/laboratory/shokuhin-kagaku |