大学の選び方

文系、理系の枠組みを取り払う【文理融合】。導入する大学・学部が増加中!

目指す大学・学部を検討する際に、「文系か理系か」で悩む人は多いのではないでしょうか。しかし、二者択一ではない選択肢も存在します。それが、文系・理系の両方を横断的に学べるという「文理融合」です。「文理融合」を掲げる学部は、国公立、私立を問わず年々増えています。

文系と理系の両方の学問を学べる「文理融合」

文理融合とは、人文科学や社会科学などの文系学問と、自然科学分野などの理系学問の両方を、横断的に学ぶことを指します。

大学受験を控える高校生にとって、文系・理系問題はとても重大です。もちろん、やりたいことがあり、進みたい方向がすでにはっきりと決まっている人もいるでしょう。しかし、「文系も理系も同じくらい好き」「興味があるのは文系科目だけれど得意なのは理系科目」(あるいはその逆)など、文系と理系の間で悩んでいる人も多いと思います。

そうした人たちにとって新たな選択肢となり得るのが、文理融合の方針を掲げた学部です。ここ数年で、顕著に増えつつあります。

文理融合を掲げる学部が増えている理由とは?

日本の大学では、これまで学問分野を大きく文系と理系の二つに分けることが一般的でした。具体的な学部名を挙げると、文学部や経済学部、法学部、外国語学部などが文系、理学部や工学部、医学部などは理系です。文系と理系は別なものとして扱われ、両者を「融合」して学ぶことはほとんどなかったのです。

ではなぜ今、文理融合に注目が集まり、それを掲げる学部が増えているのでしょうか?

データサイエンスなど、新しい学問分野の登場

理由の一つは、社会の変化に伴って登場してきた新しい学問分野の存在です。また、社会の変化を踏まえて国が考える大学教育や人材育成のあり方にも、文理融合が欠かせないものとなっています。

例えば、デジタル化やグローバル化の進展、環境への配慮など社会の変化に応じて、これまでの文系・理系といった枠組みには収まらない学問分野が登場してきました。具体的には、情報科学やデータサイエンス、社会環境学などです。こうした分野を学び、研究していくには、文系と理系の両方の知識が必要になります。

文理融合を掲げる学びの特徴とは?

文理融合型の学部では、当然ながら文系と理系の両方の科目を学びます。カリキュラムの詳細はそれぞれの学部のテーマによっても異なりますが、両方を横断的に学ぶことで、広い視野が養われ、ものごとを多角的にとらえられるようになります。

また、文理融合そのものと直接的な関わりはありませんが、文理融合型の学部の多くは、カリキュラムに課題解決型の学習(PBL=Project Based Learning)を取り入れています。文系・理系のさまざまな知識を活用して、社会に出たときに役立つ「課題解決能力」を育てることが狙いです。

文理融合の学びができる大学・学部の例

一口に、文理融合型の学部といっても、学部によって研究テーマは大きく異なり、学ぶ内容や目指すところもさまざまです。では具体的にはどのような大学・学部があるのでしょうか? ここでは、学部概要などで明確に「文理融合」の方針を掲げている大学・学部の例をいくつか紹介します。

滋賀大学 データサイエンス学部(2017年度開設)

https://www.ds.shiga-u.ac.jp/
日本の大学で初のデータサイエンス学部。ビッグデータを処理・分析し、そこに新たな価値を見出せるデータサイエンティストの育成を目指す。

横浜国立大学 都市科学部(2017年度開設)

https://www.cus.ynu.ac.jp/
これからの都市について科学的に取り組み、都市の未来に挑戦する人材を育成。

九州大学 共創学部(2018年度開設)

https://kyoso.kyushu-u.ac.jp/
環境や食糧、人権、経済的格差など地球規模の課題を自ら見つけて、解決に導く「共創的課題解決力」の獲得を目指す。

中央大学 国際情報学部(2019年度開設)

https://www.chuo-u.ac.jp/academics/faculties/itl/
Society5.0におけるさまざまな課題解決に向けて、社会に受容される情報サービスや情報政策を実現できる人材を育てる。

東海大学 文理融合学部

https://tokai-marugoto.jp/academics/humanities-and-science/
東海大学熊本キャンパスでは、2022年度にその名もずばり「文理融合学部」を開設の予定。現在の経営学部と基盤工学部を統合し、経営・地域社会・人間情報工学の3学科体制とし、文系・理系を融合させた学びによって超スマート社会で活躍できる人材の育成を目指す。

文理融合は、国の大学教育の大きな方針

文理融合は、国の大きな教育方針の一つでもあります。文部科学省は、文理融合的な教育や、そうした教育を通じて複合的な知識を備えた人材育成の必要性についてたびたび触れています。

例えば、2017年12月に公表された文部科学省の「今後の高等教育の将来像に向けた論点整理」内では、「高等教育における人材育成」として次のような説明をしています。

「分野を超えた専門知の組み合わせが必要とされる時代においては、一般教育・共通教育においても従来の学部を超えた幅広い分野から文理横断的なカリキュラムが必要となるとともに、専門教育においても従来の専攻を超えた幅広くかつ深いレベルの教育が求められる」

つまり、文系・理系を横断的に学ぶ文理融合とは、新しい学問分野や学部に限らず、大学教育全般で重要だということです。現状は、文理融合というと比較的新しく設置された学部が多いようですが、今後も既存の文系学部・理系学部でも文理融合型のところが増えていく可能性が高いといえます。