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環境は自分たちで作る【環境デザイン】。私たちの暮らす街はどうあるべきか? 大学でも専門学部を設置

環境には、自然、社会、文化などさまざまなものがあります。私たちが暮らす街の中にある公園や建築物、ランドスケープ、あるいは都市全体も環境といえるでしょう。そういう環境を設計(=デザイン)するのが「環境デザイン」です。

さまざまな要素を持つ環境デザイン

環境をデザインするとは何でしょうか。「環境」というと、山や川、海などの自然環境を思い浮かべる人もいるでしょう。しかしそれだけではありません。学校や保育園、市民ホールなどの公共施設、公園や広場、道路などの都市空間などなど。

そのように私たちはいろいろなものに囲まれて暮らしています。自然のものだけでなく、人間が作った建築物や構造物も含めて、私たちの周りにあるものすべてが環境です。そのような、さまざまな環境を作っていくこと。それが「環境デザイン」です。

「環境を作る」とは何か?

デザインという用語を「見た目の美しさ」と受け取る人も多いと思いますが、本来の意味は「設計」であり、「美しさ」は一要素に過ぎません。

つまり、環境をデザインするとは、「私たちの環境はどうあるべきなのか」を考えて、その上で「具体的な形として作り上げる」ことになります。そこでは、「機能性や使いやすさ」「安全性や堅牢性」など、もちろん「機能美や審美性」も含めて形にすることになるでしょう。

環境というと「昔から私の周りに存在しているもの」というイメージを持っている人は少なくないかもしれません。しかし、環境デザインは「自分の周りの環境を、自分たちで作っていこう」という積極的なアプローチといえます。

新しく保育園を作るには?

例えば、新しい保育園を作ることを例に考えてみましょう。小さな幼児向けだからといって「階段や手すり、棚などの高さを幼児向けのサイズに作る」ことだけを考えて、施設を造るわけにはいきません。ほかにもさまざまな要素を検討する必要があります。

  • 子供が自由に遊べる空間、子供同士が交流する空間をどのように作るか?
  • 子供が怪我などをしにくいような配慮は?
  • 子供がどこにいても大人の目が届くようにするには?
  • その地域の文化や自然に子供たちが親しめるようにするには?

というように、いろいろな要素を考慮する必要があります。その上で「子供が成長するための保育園という環境を設計していく」ことになります。

そこで重要になるのは、環境を考慮した上で、最終的に「どのような形の施設にするか」というデザインの力です。大学で学ぶ環境デザインが、芸術系、デザイン系の大学、学部でも扱われるのは、そういう理由といえるでしょう。

<佐藤可士和×ふじようちえん>

環境デザインの範囲

自然環境、生活環境や社会環境、文化環境など、環境にはさまざまなものがあるように、環境デザインの対象も多種多様であり、今後も広がっていくでしょう。ここでは、環境デザインの対象として扱われる、いくつかの例を紹介します。

公園や建築物などのランドスケープ

ランドスケープとは景色や景観を意味する言葉ですが、街や地域の文化的、社会的な建築物や施設、そしてそのエリア一帯などを指すこともあります。対象もさまざまなものが含まれ、公共施設や公園、植物園や動物園など多種多様です。海外でいえば、フランスのベルサイユ宮殿、アメリカのセントラルパークや自由の女神、日本の上野公園などは、代表的なランドパークといえるでしょう。

公園やビルなどのランドスケープを新しく作るときには、環境、社会や自然との関わりという視点は欠かせないものになります。

まちづくり、都市計画

まちづくり、都市計画では、さまざまな年齢、性別、文化、生活スタイルを持つ多種多様な人々が快適に生活できるような環境を作らなくてはいけません。例えば、下記のような、さまざまな要因を考慮した上で、街のあり方を形にしていく必要があります。

  • 街全体の景観
  • 社会基盤の整備
  • 交通機関、幹線道路や生活道路の整備などの利便性
  • 自然公園や里山、河川などの自然との共生。子育てを支援する環境
  • 高齢者や障害者のための福祉。安全のための防犯対策や防災対策

家の中のインテリア類

環境というと、外にあるものと思いがちですが、家の中のものについても考えなくてはいけません。家の中には、家具などのインテリア、テレビやエアコンなどの家電があります。スマートフォンやパソコンからインターネットを利用したりもしています。

もしかしたら私たちが生活の中で一番多く接している環境は、家の中かもしれないのです。

であるなら、インテリアや家電、家具、ICT機器なども環境デザインの対象ということになります。実際、環境デザイン学科の中にインテリアデザインやプロダクトデザイン、ファッションなどを扱うところもあります。

環境デザインについて学ぶことで、私たちが生きる世界のことを考えることに通じるかもしれません。

「環境デザイン」について学べる大学の学部、学科

環境デザインは、建築や造園、土木工学などを扱う学部、学科やデザイン系、芸術系の学部で扱います。環境デザイン学部、環境デザイン学科といった名称の学部、学科は、東洋大学、昭和女子大学、京都芸術大学、多摩美術大学、神戸芸術工科大学、愛媛大学など、多くの大学にあります。

<多摩美術大環境|デザイン学科|学科紹介&入試解説動画2021>

ウィキペディアにも、環境デザインを学べる大学がまとめられているので、参考にしてください。

環境デザイン学
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%AD%A6

なお、すべての大学で扱う内容が同じというわけでもありません。

例えば、愛媛大学 社会共創学部 環境デザイン学科は、自然と社会の関係性を研究する環境サステナビリティコース、まちづくりや地域社会、防災について研究する地域デザイン・防災コースを持っています。

昭和女子大学 環境デザイン学部 環境デザイン学科は、建築・インテリアデザインコース、プロダクトデザインコース、ファッションデザインマネジメントコース、デザインプロデュースコース。

<昭和女子大学|環境デザイン学科 デザインプロデュースコース>

神戸芸術工科大学 芸術工学部 環境デザイン学科では、リノベーションコース、建築コース、ランドスケープコース、まちづくりコースを持っています。

愛媛大学 社会共創学部 環境デザイン学科
https://www.cri.ehime-u.ac.jp/department/e-des/

昭和女子大学 環境デザイン学部環境デザイン学科
https://swukankyo.jp/kankyodesign

神戸芸術工科大学 芸術工学部 環境デザイン学科
https://www.kobe-du.ac.jp/education/environment/

このように、大学によって扱うテーマは異なってきますので、「環境デザイン学科だから」と思い込むことをしないで、その大学、学部、学科で学ぶ内容をしっかり確認するようにしましょう。

『環境デザイン』の活用が期待できる分野

都市計画、ランドスケープデザイン、建築、土木、インテリアデザイン、プロダクトデザイン