動画制作にかかわる映像技術は、映画やテレビ番組の製作現場、YouTuberだけでなく、企業におけるプロモーション活動、デジタルコンテンツ作成、大学の研究内容の発信など、さまざまな現場で求められています。それら映像技術、動画制作に関するスキルと習得について解説します。
映像、動画を生かした情報発信能力とは?
インターネットが生まれたころから、すでに個人が主体となった情報発信が可能になりました。そしてBlogやTwitterの普及から始まり、FacebookやInstagramなどSNSの登場で、誰でも個人で情報発信することが当たり前になりました。
その流れは、「文字や写真」の配信から「動画」へと移り、現在ではYouTubeやTikTokを活用して個人が動画を配信して見てもらうという趣向が強くなってきています。
これは、データ通信の速度が上がり、誰でも動画を手軽に楽しむことができるようになったことが影響しています。もちろんスマートフォンなどで手軽に動画が再生できることも要因です。今後、5G(第5世代移動通信システム)の普及により、より加速することが予想されます。
情報発信の能力を高めていくことは、これからの学生生活からはもちろん、大学での研究活動や、社会人になってからも、伝える場面で大きなアドバンテージになります。わかりやすく情報を発信する力をつけておくことは、とても重要です。
映像の強みを理解しよう
まず動画の利点を考えてみましょう。いうまでもなく、動画ならテレビを見る感覚で気軽に再生できる点がメリットです。多くの場合はプレゼンターが設定されていて、その人がしゃべる内容を聞きながら映像を見ていく形式が多いといえます。
このような「人を介しての説明」を受けると、視聴者にとっても内容を理解しやすく、映像により「そのモノや様子」も視覚的に伝わりやすくなるという利点があります。一方、文章や写真で伝える方法の利点は、人間の考え方を端的に伝えやすいことです。
内容に応じて「動画配信」か「文章による説明」か、伝えるための適切な手法を考える必要はあります。
動画プロモーションなど、ビジネス利用も増加
映像というと、映画やテレビ番組、YouTuberなどをイメージする人も多いと思います。しかし近年は、撮影が容易になってきたことで、映像を活用したビジネス利用も増加してきました。特に、企業でもYouTubeなどの動画投稿共有サービスを利用したプロモーション活動が一般的になっています。
動画広告はバナー広告より印象に残る?
ちょっと古い話になりますが、2011年の電通とディーツー コミュニケーションズによるiPhoneユーザーを対象にした、バナー広告と動画広告の比較調査(注1)によると、「動画広告を『確かに見た』と答えた人は、バナー広告を『確かに見た』と答えた人の約 1.7 倍となった」「動画広告認知者の約4割が、広告閲覧後、サイト閲覧や検索などなんらかの行動を起こした」という結果が出たとのことです。
企業内や大学での動画利用も増加
企業内での社員研修などにも映像が利用されるケースが増えてきました。従来のように一つの施設に集まって研修を受けるのと違い、都合の良いときに映像を見て学べるので、仕事に支障を与えることなく、精神的にもゆとりを持てるという利点があるからです。
企業だけではありません。大学における研究発表の場でも、映像を活用してわかりやすいプレゼンテーションを行うこともできるでしょう。
ニューノーマル時代に必要なスキルとして
しかしそれだけではありません。現在(2020年)のコロナ禍では、三密を回避するため、人に直接会う機会が激減しています。そのためオンライン授業、オンライン会議、オンライン営業などのインターネットを介したコミュニケーションが急激に増えています。そこにも映像のスキルは生かせます。
いい映像を撮るには基礎が大事
最近では、スマートフォンなどのカメラを使えば動画の撮影は簡単におこなうことができます。しかし、テクニックが伴わなければ、優れた映像は撮れません。
例えば、カメラをしっかり固定できないと、映像がぶれて、視聴者に不快を与えます。また背景などに関係ないものが映りこんでしまうと、視聴者の集中力もそがれます。さらには撮影した映像に対して、適切な編集を加えないと、「だらだらとして退屈」な印象を与えてしまいます。
そうならないためにも撮影や編集には基礎的なテクニックが必要となります。それらは大学や専門学校でも習得できますが、簡単なレベルであれば、YouTubeなどを見て、学ぶこともできます。
具体的な手法に関しては、Googleが「YouTube クリエイター アカデミー」として、制作方法のレッスンを公開しています。基本から動画制作、収益化など実践的な内容となっています。無料で受講できます。
「映像作品を作る」「動画を活用する」、関連する二つの技術
では、プロフェッショナル、もしくはそれに近いスキルを習得するにはどうすればいいのでしょうか。映像に求められる能力は大きく、二つに分けられます。
まずは映像作品を作るためのテクニックです。シナリオを書き、カメラで撮影し、編集して映像作品に仕上げるという作業には、カメラの操作法、編集の技術など、クリーターとしてのさまざまな専門的なスキルが必要とされます。
もうひとつは、動画の活用法です。映画やテレビドラマ、テレビCM、YouTubeなどの動画配信、ネット動画広告など、動画はさまざまな形で利用されます。作った動画をより効果的に活用するためには、最適な方法での公開、あるいは複数の媒体を組み合わせての公開など、いろいろな方法を検討する必要があります。
映像技術、動画制作の技術を学べる大学、学科
映像作品を作る技術としては、以下のようなものが挙げられます。
- プロジェクトの進め方など、全体の理解
- カメラやマイクをはじめとする撮影機材の操作
- 明るさや構図、収録などの撮影技術
- モンタージュやオーバーラップ、ワイプ、CG合成などの編集技術
主に制作側の技術を挙げましたが、もちろん出演側にまわる場合には別のテクニックも必要です。その場合には演劇やタレント養成などの学校がありますが、今回は触れません。
具体的なテクニックを身につける専門学校
そのような動画撮影や編集に関する具体的なテクニックやデザイン力については、各種専門学校が扱っています。なかでも、コンピューターを駆使したデザインや動画クリエイターの編集手法などを学ぶデジタルハリウッドやバンタンクリエイターアカデミーといった専門学校は実践的な内容で構成されています。撮影や制作方法について講義を通じて覚えていきたい人には向いています。企業へのインターンシップもあります。
大学で全般的な知識を習得
一方、映像に関する知識だけでなく、活用法を身につける学問としては、メディア学、情報メディア学、コミュニケーション学などが挙げられます。それらは美術大学や芸術系の学部にある、情報デザインやメディア芸術、映像メディア、情報表現などの学科で学べます。
前述のデジタルハリウッドでは専門学校のほか、オンラインスクールの「デジハリ・オンラインスクール」、大学の「デジタルハリウッド大学」があり、自分のスタイルに合わせて技術を習得することができます。デジタルコンテンツの制作方法だけでなく、企画やコミュニケーション(ビジネスプラン、マーケティング、PR)もカリキュラムにあるので、多角的に学ぶことができます。
動画共有サービス、テレビ/映画/ビデオ、ゲーム、PR動画/CM、デジタルサイネージ、プレゼンテーション用動画、コンサート/イベント/MV映像、学校などでの講義動画など。
注1:iPhone向け動画広告効果調査
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2011/pdf/2011017-0221.pdf
YouTube クリエイター アカデミー
https://creatoracademy.youtube.com/page/home
YouTube Creatorsチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCkRfArvrzheW2E7b6SVT7vQ