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大学受験にも有効! 大学生活で幅広く役立つテクニック【ロジカルシンキング】とは?

大学に進むと学習や研究活動はもちろん、日常生活などにおいても論理的な思考を求められるシーンが増加します。論理的な思考を身につける上で注目される「ロジカルシンキング」について紹介します。

大学生活とは切り離せない「論理的思考」

大学では、さまざまな学問や研究に打ち込むことになります。その際にどのような能力が重要となるのでしょうか。

特定の分野に限らず、学術研究において広く必要とされるのが、「論理的に思考する力」です。

先行する研究を理解する場合はもちろん、これまでにない新しい学説を見いだし、発表するのも論理的な思考は欠かせないものです。

自分の考え方を認めてもらうには必須の技術

あなたは友人と意見がぶつかった際、どのように相手を説得するでしょうか。

丁寧に説明するのはもちろん、褒める、脅す、泣き落としなどで感情に訴えたりと、日常では相手を説き伏せるためのさまざまな方法があります。

しかし、学問の世界では感情に訴えても相手にしてもらえません。

これまで積み重ねられてきた基礎を理解し、その分野に携わる誰もが納得できるよう、データなどをもとに主張を理路整然と説明して、妥当性があると認められて初めて意見を受け入れてもらえるのです。

筋道を立て、論理的に説明する力こそ重要となります。

論理的な考え方を身につけるには?

論理的な思考を身につけるにはどうすればよいのでしょうか。ヒントのひとつが「ロジカルシンキング」という考え方です。

まさに「ロジカル(論理的)」に「シンキング(考える)」する技術です。ビジネスパーソンを中心に2000年前半ごろより注目を浴び、その後広がっていきました。

同じ論理的な思考を深める方法としては、「論理学」や「哲学」といった専門的な学術領域もあります。しかし、ロジカルシンキングは、ビジネスパーソン向けに広がったこともあり、どちらかといえば実践的で、物事を効率的に解決していく上で幅広く役立つ技術といえます。

誰でもとっつきやすく、学問や生活はもちろん、将来的には就職、ビジネスなど、人生と向き合っていく上でも応用が利く知識です。

大学受験にあたっても、小論文における課題の回答を考える際に参考となりますし、面接の受け答えなど、役立つでしょう。

「ロジカルシンキング」の基本

論理的に思考するとは、具体的にはどういうことなのでしょうか。「ロジカルシンキング」の基本的な部分を見てみましょう。

基本となるのが、「帰納(きのう)」と「演繹(えんえき)」という考え方です。難しい言葉に感じるかもしれませんが、意識せずに普段から用いていることも多々あります。

実は高校生なら必ず使っている「演繹」

「演繹」とは、一般的に認められている普遍的な前提と、小さな前提を組み合わせ、結論を導き出す考え方です。代表的な例のひとつに三段論法があります。具体的には、「人は必ず死ぬ」という大きな前提を示し、「ソクラテスは人である」という小さな前提をもとに、「ソクラテスは必ず死ぬ」という結論を導き出します。

高校生であれば、数学の証明問題が思い浮かぶのではないでしょうか。「三平方の定理」など大前提を用い、仮定として示された条件を用いて与えられた課題が直角三角形であることを証明したことは誰でも一度はあるはずです。

多くの事例から普遍性を見つけ出す「帰納」

「帰納」は、個々の事例をもとに普遍的な法則を得ようとする考え方です。

例えば、「Aさんは睡眠中に夢を見る」「Bさんは睡眠中に夢を見る」「Cさんは睡眠中に夢を見る」など、多くの事例をもとに「人間は睡眠中に夢を見る」という推論を見いだす考え方です。

細かい観察や考察を続け、それまでに知られていなかった共通点を見つけ出すことは学問として非常に重要なプロセスです。科学的に証明できれば、あらたな発見につながるかもしれません。

「演繹」「帰納」に潜むワナも……

「演繹」「帰納」のいずれも論理的に説明する上でパワフルですが、一方でワナも潜んでいます。

論理的であるためには、「前提」が正しい必要があるためです。大前提とした「三平方の定理」が数学的に正しく、例外がないことが証明されているからこそ正しい結論を導き出すことができます。

「帰納」に関しても、例えば、「Aさんはプリンが好き」「Bさんはプリンが好き」「Cさんはプリンが好き」だとしても、世の中すべての人がプリンを好きとは限らないことは自明の理です。

個々の事例から仮説を導き出す際、偏りがあれば前提が崩れてしまいます。例外が見落とされている可能性もあります。

条件に誤りがないか、慎重に検討し、推論の正しさを因果関係などより科学的に実証していくことも重要なプロセスとなります。

ロジカルシンキングの便利な道具「フレームワーク」

論理的な思考を行う上で便利な道具があります。それは「フレームワーク」と呼ばれているもので、自分が考えたいことに応用して、考えに抜けや漏れがないかチェックしたり、より深く考察することができます。

MECE(ミッシー)

「MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)」は漏れや重複が発生しないように考えるための代表的なフレームワークです。

例えば、新型コロナウイルスの感染状況を調べる場合、10歳ごとに各世代を区切り、それぞれ感染原因などの考察などを行っているのを見たことがあると思います。

年齢という指標でわけることで、抜けや重複が発生しないよう分類しつつ、それぞれを世代にわけて分析することで、より詳細に事象を把握し、解決に導こうという考え方です。

年齢に限らず、重複がないように問題を分類することで、推論が行いやすくなるのです。

ロジックツリー

ひとつの問題や課題について要素を分解し、切り分けて考えていく手法です。枝分かれしていく様子が木の枝葉が伸びていく形に似ているため、「ロジックツリー」と呼ばれています。

例えば、「体調が悪い」場合を考えてみましょう。「痛み」はあるのか、さらに「咳(せき)」の有無、「発熱の有無」などと条件を枝分かれさせ、それぞれ当てはまるかを分析することで、状況をより深く理解できます。

相手の主張を見極める際も論理的思考を

「ロジカルシンキング」は、人を説得する場合に役立つお話をしてきましたが、相手の主張が正しいかを検証する場合にも有効です。

学術的な主張はもちろんですが、日常生活において相手の意見が正しいか、確認する際も役立ちます。

詐欺など横行しており、世の中油断も隙もありませんが、普段から論理的な思考を行うことができれば、相手の主張が妥当性なものか、落とし穴などを発見するきっかけにもなります。詐欺などは一見論理的であるかのように装うことも少なくありません。前提がおかしいなど「ワナ」が潜むことも多々あります。しっかりと見極めることが重要です。

ただし、日常生活に関しては、人は論理だけでは説得できないことがあることも忘れないでください。不合理に判断したり、動いていることも少なからずあるのです。興味がある方は行動経済学の記事を読むと良いでしょう。

大学で「論理」を極める道もある

「ロジカルシンキング」は、ビジネス面で注目浴びたことからもわかるとおり、「論理」を学術的に極めるというよりも、より普段の生活などに応用が利く、実践的な考え方といえます。

しかし、何が「真」であり、何が「偽」であるか、突き詰めていくと難しい問題であることにも気がつくでしょう。

「論理」そのものおもしろさに興味を引かれたのならば、文学部の「哲学科」などで「論理学」として学ぶことができます。

<東大TV:論理学とは何か?>