大学の選び方

大学の授業【教養課程・専門課程・ゼミ】とは? 高校にはない授業のジャンル

大学には、「教養課程」「専門課程」「ゼミ(ゼミナール)」など高校とは少々違う授業のジャンルがあります。高校では、あらかじめ決められた時間割で勉強しますが、大学では自分が受けたい講義を選んで勉強できます。大学にはどのようなジャンルの講義があるのか、解説します。

「教養課程」と「専門課程」

大学に入学してすぐに、専門分野の勉強や研究を集中的に深めていくわけではありません。多くの大学では、1年次と2年次に多角的な物事の見方を身につける「教養課程」などと呼ばれる授業が組み込まれています。そして3年次以降、より専門性を高める「専門課程」に進んでいきます。

教養課程は、自分が専攻する分野に関わらず、幅広い「教養」を身につけ、見識を広めることを目的としています。そのため、文系の学部であっても数学や物理を学んだり、理系の学部であっても法律や哲学を学ぶこともあります。他の学部や学年の学生と一緒に授業を受けることもあります。

専門課程では、受験時に自分が選んだ学部、学科などの専門分野の研究を深めます。研究テーマを見つけ、学生同士の討論や研究内容の発表などを行う「演習」も多くなります。

教養課程の目的

大学が教養課程を設置している目的には、専門分野を学ぶ前に学問の方法論を学んで、専門分野を研究する土台を作るということがあります。いきなり専門分野に飛び込んでも、どうやって研究を進めればいいかわからず迷子になる可能性があります。学問の道筋を見つけやすくするという役割が教養課程にはあるといえます。

また専門課程に進むと、その分野だけを深く学ぶことになるので、知識や考え方に偏りが生じるおそれがあります。そうならないように、教養課程で幅広い分野の学問を身につけて、専門に偏らない柔軟な考え方ができるようにすることは重要です。

また世の中において研究対象の課題は無限に存在しますが、その多くは複雑に絡み合い、影響しあっています。これまで積み重ねられた専門分野に特化した研究だけでなく、一見関係ないと思える分野を学んでおくことで、新たな発見や研究の道が開けるかもしれません。

大学によって変わる「教養課程」

大学によって、教養課程の位置づけにも違いがあります。例えば横浜市立大学では、従来の教養課程をさらに深めた「共通教養」が用意されています。また東京大学では、入学するとまず教養学部に所属し、基礎科目や総合科目を学びます。

かつては教養課程について法律で定められており、大学によってあまり違いが見られませんでした。このような大学に差が現れはじめたのは最近のことです。

前述したように、多くの大学では1年次2年次を教養課程、3年次以降を専門課程と分けていますが、教養課程で学んだことが専門課程であまり生かされないという指摘がありました。また、専門外の科目の受講が義務づけられていることに対する批判もあったのです。

そこで政府は、1991年に大学設置基準を改正しました。これにより、一般教育科目や専門科目など、授業科目の区分に関する規定を廃止し、教養科目を義務としない制度の導入が可能になったのです。

これを機に、教養科目は縮小する傾向にあります。しかし、幅広い見識を身につける重要性は変わりません。大学それぞれが工夫し、カリキュラムに差が生まれつつあるのです。

「専門課程」は学生主体の学び

専門課程では、自分が選んだ学科や専攻に応じた勉強や研究が主体になります。講義のやり方は、教養課程とは大きく異なります。教養課程の科目では、多くの学生を対象に、教員はマイクやスライドなどを使って講義をします。教室は、大人数が入れる広い階段教室が使われることが一般的です。一方専門課程は、小さい教室において少人数で行われることがほとんどです。

また講義の進め方も教養課程とは異なります。教養課程で行われる一般教養科目は、基本的に教員が一方的に講義をして、学生はその話を聞いてノートを取るという受動的なものです。対して専門課程では、学生が主体となって研究すべき課題を見つけ、実験や議論などを重ねて研究を深める「演習」が多くなります。

少人数で研究を深めるのがゼミ

「ゼミ」とは、ドイツ語の「ゼミナール」、英語でいう「セミナー」のことで、演習形式の講義を指します。1、2年次より設置するケースもありますが、ゼミは多くの場合、専門課程に進んだ3年次以降、増えていきます。

研究室にひも付いて開講されることが多く、研究室の名前を取って「鈴木ゼミ」などと呼ばれたりもします。特定の専門分野について研究し、学生同士の討論、発表などを行う演習を中心に進められます。少人数が基本で、担当教員1人につき、通常は数人から20人程度の学生で構成されるケースが多いようです。

ゼミの進め方

ゼミではまず、研究テーマを決めるところから始めます。課題が与えられるのではなく、学生自ら課題を見つけるのがゼミの特徴であり、受動的だった高校の学びと決定的に違うところです。

研究テーマを決めたら、図書館や公的な資料館などに行って必要な文献や資料を集めたり、実験を行ったり、実地調査を行ったりします。その結果をまとめて発表資料を作成し、学生同士で議論を行いながら研究を深めていきます。大学卒業に向けて執筆する「卒業論文」の制作にあたり、ゼミに参加するケースもあります。

このように、ゼミでの主体は学生です。教員はアドバイスをする程度で、研究テーマの発掘から調査、議論、発表、論文作成まで学生が主体となって行います。

研究室で大学を選ぶ

もし興味ある分野や研究テーマがすでに決まっているなら、専門に扱う研究者が在籍したり、研究室が設置されている大学を志望大学に選ぶというやり方もあります。

お目当ての研究室が見つかったら、オープンキャンパスに参加して所属している先輩に話を聞き、ゼミの開講状況など雰囲気を聞いてみても良いでしょう。

高校と大学の学びの違い

高校の授業は時間割が決まっていて、基礎的な問題を解決する受動的なもので、大学の学習の礎となるものです。一方で大学は、自分の興味がある分野の授業を選ぶことができるほか、専門課程では学生が主体となって課題を発見し、調べたり議論を重ねたりしながら答えを追求していきます。

このように大学の学びでは主体性が重要視されます。好きなテーマについて、自分のペースで深く学ぶことができるのが大学のメリットといえるでしょう。