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言葉にまつわる学問【国語学/日本語学】 AI開発にも応用される研究!

日本人が日常的に話したり文章を書いたりしている日本語には、解明されていない謎も数多く残されています。そのような日本語に関する研究を行うのが国語学、日本語学と呼ばれる分野です。今回は、言語学の一分野である国語学、日本語学について説明します。

国語学、日本語学とは?

日本人は普段、文法などを意識することなく、日本語を使って会話をしたり、文章を書いたりしています。しかし、改めて文法を意識して日本語に向き合うと、「実はよくわかってない謎」も多く残されています。そのような言葉に関するさまざまな研究を行うのが、国語学、日本語学と呼ばれる分野です。日本語に限定しない場合は「言語学」と呼ぶこともあります。

私たちは小学生のころから「国語」という授業を受けて、小説や古典、説明文を読んだり、漢字を覚えたり作文をしたりなど、日本語を学んできてはいます。大学で学ぶ「国語学」「日本語学」という分野も、「国語」と同様に日本語にまつわる学問ではありますが、文学読解などではなく、日本語の体系的な文法や使われ方などを研究します。

言葉にまつわる学問とはどのような研究?

国語学、日本語学の意味するところは基本的に同じですが、古くから研究している大学の学部、学科では国語学、最近できた学部、学科では日本語学と名付ける傾向があるといえます。いずれにしても、文法、音韻や音声、語彙(ごい)、方言、単語論や文論、文章論、日本語の歴史など、日本語に関する幅広い分野を対象に研究しています。

日本語の文法は学校の国語の授業でも扱いますが、大学の国語学、日本語学で扱う内容はそれとは違います。いくつか紹介しましょう。

昔の日本語の発音もわかる?

万葉集、竹取物語、源氏物語などの古典には、昔の日本語の形が残されています。しかし、記されているのは文字であって、当時どのように読み上げられていたかまでは残っていません。しかし、さまざまな研究によって、昔の日本語の発音も推測できるようになってきました。

昔のナゾナゾから音を探す

昔のナゾナゾに次のようなものがあります。

「母には二度会うけれども、父には一度も会わないものは何?」

その答えは「唇」。「チチ」と発音したとき、上唇と下唇は一度も接触することはありません。ところが「ハハ」と発音したときはどうでしょう。上下の唇が2回接触……するはずが、接触しませんね。

そのことから、「は」の音は今と昔で異なっていたとわかるわけです。そして唇を2回接触させて発音するというヒントをもとに、「ファファ」と発音していたのではないかと考えられます。

「あはれ」「てふてふ」の当時の発音は?

このような検証をいくつも積み重ねていった結果、「はひふへほ」は昔(平安時代)「ファフィフフェフォ」、さらに昔(飛鳥時代、奈良時代、平安初期)は「パピプペポ」と発音していたということが見えてきたのです。

このような音の変化は「はひふへほ」だけではありません。日本語の母音は現在「あいうえお」の五つですが、万葉仮名の時代は八つの母音があったという研究もあります。

つまり、当時の古典の読み方は今とはずいぶん違ったものになるようです。例えば、学校の古典の時間に学習した「哀れ」は「アッパレ」、「蝶々」は「テプテプ」もしくは「テェップテェップ」と発音されていたと考えられています。

発音が違うと人の名前の印象も変わってきます。日本三大美女の一人「衣通姫(そとおりひめ)」は「ソトポリピメ」、平安時代のプレイボーイとして名高い在原業平(ありわらのなりひら)は、「アリパラノ ンナリピラ」。なんだか美男美女のイメージとはだいぶ違ってきます。

藤原氏の繁栄の礎を築いた藤原不比等(ふじわらのふひと)は「プンヂィパラノ プピト」。都で権勢を振るった大貴族が、現代のお菓子のような名前で呼ばれている様子を想像すると、ちょっと不思議な感じがします。

ちなみに「日本の呼び方はニホンとニッポンのどちらが正しいのか」という質問を時折耳にしますが、「古くから使われていたのは、ニッポンのほう」ということはいえます。

昔の発音には諸説あります。

謎に満ちた日本語における「主語」

研究によって多くのことがわかってきた半面、まだまだ解明されていない謎も残されています。例えば日本語における主語。国語の授業では、「〇〇が」や「〇〇は」のように、「が」や「は」などが付くのが主語と習ったのではないでしょうか。

ところが日本語の主語は実に曖昧です。「AはBがC」という同じ構文の文章を比較しながら考えてみましょう。

  • 私は、海が好きだ → 主語は「私は」ですね
  • 昨日は、彼女が来た → 今度は「彼女が」が主語ですね
  • 今日は、お酒が飲みたい → この文には主語がない?
  • 象は、鼻が長い → 主語は「象は」でしょうか、「鼻が」でしょうか?

「主語が二つある二重主語」と説明する人もいます。また「象は」が主語で「鼻が長い」が述語(述部)だと考える人、さらには「日本語には主語がない」と主張する人もいるなど、いろいろな説があります。このことからも日本語における主語を定義することは簡単ではなさそうだとわかるでしょう。

国語学、日本語学に向いている人は?

このように毎日使っている言葉でも、実はまだまだわからないことがたくさん残っているのです。それに、言葉は時代ともに移り変わっていくもの。言葉にまつわる研究は、永遠に続いていくのかもしれません。

「そんなこと気にしなくても、日常会話に困ることはない」という人も多くいるでしょうが、「そういうことが一度気になりはじめると、夜も眠れなくなる」というあなた、この分野の研究に向いています。

AIの活用にも必要な学問

言葉の研究というと、人間が口から発する言葉、人間が書く文章をイメージするのが普通です。しかし、コンピューターの分野でも「自然言語処理」という研究が盛んになっています。

本来、コンピューターは人間の話す言葉を理解するものではありません。ところが、これからのコンピューターには、人間とコミュニケーションする場面が増えていくはずです。例えば、「人間からの問い合わせに人工知能(AI)が回答する」といった利用などです。

そこで求められるのがAIによる「自然言語処理」です。自然言語とは「人間が日常的に話す言葉」のこと。ところが人間の話す言葉には曖昧さがあります。また、同じフレーズであっても、前後の文脈によって意味が違ってくることもあります。そのため自然言語処理の研究は、人間の話す言語の研究と関連があるのです。

<東北大学 工学部 電気情報物理工学科:乾研究室(自然言語処理学研究)>

国語学、日本語学、自然言語処理について学ぶ学部、学科

国語学、日本語学は、文学部や人文学部の日本語学科、言語文化学科、言語教育学科など、あるいは教育学部の国語専攻などで学ぶことができます。また、自然言語処理は理工学部の情報工学科などで扱われます。

国語学、日本語学は明治以前から続く学問であり、多くの大学で学べますが、2021年4月に文学部の中に「日本語日本文学科」を新設した愛知大学のように、新たに強化していこうという大学もあります。

<愛知大学:【文学部新学科紹介】日本語日本文学科 日本語学>

『国語学、日本語学、自然言語処理』が役立つ分野

AI、日本語教育、国語教育、翻訳や通訳