さまざまな情報のデータが大量にビッグデータとして集まるようになり、これを解析して社会や仕事に役立てる「データサイエンス」が注目されています。この解析を職業とするのが、データサイエンティストです。今回はデータサイエンティストになるために有利な資格を紹介します。大学在学中に取得できる資格についても触れます。
データサイエンス関連の資格は多岐にわたる。ビジネス視点も必須
データサイエンスに必要な知識は、統計やコンピューターに関する基礎はもちろんのこと、プログラミング言語、大規模データベース、ディープラーニングやAI、仮想化、クラスター構築など、扱う技術は多岐にわたります。
そして関連する資格もさまざまなものがあります。大学在学中に取得できる資格もありますので、将来データサイエンティストの道に進もうというのであれば、それらの資格取得も視野に入れて大学進学を考えるのもよいでしょう。
なおデータサイエンス関連の資格を取得したとしても、その後も最新技術を学んでいく姿勢は常に必要です。3年もたつと、ITの世界では技術が大きく変化してしまいますので、具体的な手法が変わることは日常茶飯事です。
さらに、実務ではデータ分析能力だけでなく、結果をビジネスに活用するための提案力も求められます。ビジネスの現場に関する知識やコミュニケーション能力も問われます。日頃からビジネスに関心を持っておくようにしましょう。
データサイエンスについて詳しくは、以前にこちらの記事で解説しましたので参照してください。
<データサイエンスの役割:滋賀大学データサイエンス学部>
学生でも取れるデータサイエンスの資格
データサイエンティストを目指すなら最初に取得するべき資格は、一般社団法人「データサイエンティスト協会」が実施している「データサイエンティスト(DS)検定」でしょう。この中でももっとも初級の「リテラシーレベル」が、2021年9月より始まっています。データサイエンティスト協会ではスキルレベルを4段階設けていますので、今後さらに高度な検定も行われるようになると思われます。
「リテラシーレベル」では、データサイエンティスト初学者やデータサイエンティストに興味を持つ大学生や専門学校生などを対象にしていて、受検資格も特に制限ありませんので、興味があればまずは受けてみてもよいでしょう。
・データサイエンティスト協会「データサイエンティスト(DS)検定」
https://www.datascientist.or.jp/dskentei/
データサイエンティストに欠かせないAI関連の資格
データサイエンスがあるのは、現在AIへの注目が高まっているからでもあります。AI関連の資格としては、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している「E資格」がおすすめです。Eはエンジニア(Engineer=技術者)向けという意味です。ほかにもジェネラリスト向けで「G検定」も行われています。
受検資格として、JDLA認定プログラムのいずれかの受講を修了しておく必要があり、興味本位ではなく本格的に学習していく人向けです。そのためそれなりに学習期間と費用がかかります。
・日本ディープラーニング協会「E資格」
https://www.jdla.org/certificate/engineer/
データサイエンスで使われる言語「Python」
データサイエンスやAIの作業にて、よく使われるコンピューター言語は「Python(パイソン)」です。対話型の実行が可能で、文字や数字の操作や統計などに使うライブラリが充実しているため、AI分野でよく用いられています。データサイエンティストにとってはほぼ必須といえる基本的なスキルですので、資格の有無を問わず使えるようスキルを磨いておくと有利です。
資格として、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が行う「Python 3 エンジニア認定データ分析試験」がデータサイエンスに向いています。Pythonの基礎から、ブラウザーで動作する実行環境Jupyter Notebook、NumPyなどの必須ライブラリの使い方などまで扱います。どれもデータサイエンスを扱う業務では必須ですので、学んでおいて無駄になることはありません。
・Python 3 エンジニア認定データ分析試験
https://www.pythonic-exam.com/exam/analyist
Python、そしてAIの学習ツールやプログラム、参考電子書籍は、無償でも配布されていますので、独学である程度身につけることが可能です。京都大学が全学共通科目として実施する「プログラミング演習」向けの教科書として作成した、Pythonの教本「プログラミング演習 Python 2021」が無料公開されています。とてもよくできていて入門に最適です。興味を持って始めてみるなら、まずはここから手をつけてみるとよいでしょう。
・京都大学「プログラミング演習 Python 2021」
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/265459/1/Version2021_10_08_01.pdf
また、東京大学が無料公開している「Pythonプログラミング入門 2021年度A1」も実践的で参考になります。
・Pythonプログラミング入門 2021年度A1
https://sites.google.com/view/ut-python/resource/%E6%95%99%E6%9D%90%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E5%8B%95%E7%94%BB
データベース関連資格もデータサイエンスに役立つ
ほかにも、データサイエンスに役立つ資格は多岐にわたっています。
統計の資格
統計の知識も必須ですので、日本統計学会が認定し一般財団法人統計質保証推進協会が行う「統計検定」も役立ちます。1~4級まで分かれているほか、統計検定 データサイエンス基礎/発展/エキスパートの3段階も用意されています。
統計質保証推進協会「統計検定」
https://www.toukei-kentei.jp/
コンピューターの資格
コンピューターの知識をつけたいなら、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行う「基本情報技術者試験」をはじめとした国家試験「情報処理技術者試験」が役立ちます。
・情報処理推進機構(IPA)「情報処理技術者試験」
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/seido_gaiyo.html
データベースの資格
データベースの扱いに関しては、日本オラクルが行うデータベース認定試験「ORACLE MASTER」があります。その初級である「ORACLE MASTER Bronze DBA」で基礎知識を習得し、データサイエンスとして多くのデータを扱うために必須のデータベース言語SQLの知識をつけ「ORACLE MASTER Silver SQL」にチャレンジするとよいでしょう。
・日本オラクル「ORACLE MASTER」
https://www.oracle.com/jp/education/index-172250-ja.html
データベース関連では、オープンソースのデータベース言語PostgreSQLの習得を目指す、LPI-Japanが行っている「OSS-DB Exam(オープンソースデータベース技術者認定試験)」もあります。
・LPI-Japan「OSS-DB Exam」
https://oss-db.jp/outline
Googleが行う「Google Cloud 認定資格」のひとつ「GCP Professional Data Engineer」も、データサイエンティストに向いています。GCPはGoogle Cloud Platformと呼ばれる、広範な機能を持つクラウドサービスです。GCPを駆使したデータ収集からシステム設計に対応できる技術力が試されるものです。国際資格になるので、海外でも通用するメリットがあります。英語か日本語を選択して受検できます。業界経験3年以上を推奨しているので、どちらかといえば実務者向けです。模擬試験があるので、試してみることができます。「Google Cloud 認定資格」には、ほかにも「Cloud Digital Leader」というクラウドの基礎の資格もあり、こちらは職種に関係なくクラウドの基礎知識を試すものです。
・Google「GCP Professional Data Engineer」
https://cloud.google.com/certification/data-engineer
”いかにビジネスでデータサイエンスの力を生かすか”という視点が大事
弁護士のような国家資格が必要な士業などとは違い、データサイエンティストは資格がないと始められない職業ではありません(こう言ってしまうと身もふたもありませんが)。逆にいえば、資格を持っていれば必ずなれるというものでもありません。
実際にデータサイエンティストとして働く場合、もっとも重視されるのは「大学~大学院での研究成果」や「実務でどのような経験を積んだか」や「プログラミングやデータベースに関する知識」です。
本当のゴールは「資格を取ること」ではなく、「ビジネスにデータサイエンスの力を生かすための能力」を磨くことであり、その一環として資格を取得するという視点を忘れないようにしましょう。