大学の選び方

大学在学中に【海外留学】を希望するなら、志望校選びの前に留学の基本を押さえておこう!

「大学生になったら留学したい」と思っている人は多いのでは? それなら、大学選びの段階から留学を視野に入れた検討をおすすめします。留学先の単位が卒業単位として認められる、留学関連の奨学金制度があるなど、大学によっては留学しやすい環境が整えられているからです。コロナ禍の留学の現状から、留学の種類、留学が必須の大学などについて説明します。

大学生の海外留学の現状

大学(学部)時代に海外に留学する人はどのくらいいるのでしょうか。

日本学生支援機構の「日本人学生留学状況調査」によると、2019年度は10万7346人の大学生が海外に留学していました。過去10年では留学生の数は右肩上がりで増え続けていましたが、2018年の11万5146人がピークで、2019年度は減少に転じました。減少した理由は新型コロナウイルス感染症の拡大です。このデータは年度で区切っているので、2019年度のデータにはコロナ禍で留学生が急激に減った「2020年1~3月」が含まれているからです。

ちなみに、大学生(学部生)の総数は約262万6000人なので、留学しているのは学生全体の4%ほどです。

留学生全体の6割以上が1カ月未満の短期留学

留学とは、一定の期間、海外の教育機関で学習・研究することを指します。留学には、1週間~1カ月程度の短期留学もあれば、1年以上をかけて留学先の大学でしっかり学ぶ長期留学もあります。

留学というと長期をイメージする人も多いと思いますが、実際には1年以上という長期留学をする人は少数派です。2019年度のデータでは、1カ月未満の留学が全体の66.4%でもっとも比率が高く、1~3カ月未満が9.7%、3~6カ月未満が10.62%、1年未満が10.77%、1年以上は1.79%でした。

留学先のトップ3は、アメリカ、オーストラリア、カナダ

主な留学先も見ておきましょう。2019年度のデータでは、大学生が留学した国は次のようになっています。

大学生の主な留学先(2019年度)

順位 留学先国 留学人数
1位 アメリカ合衆国 1万8138人
2位 オーストラリア 9594人
3位 カナダ 9324人
4位 韓国 7235人
5位 イギリス 6718人

留学生の総数が10万7346人なので、留学生の約17%がアメリカを留学先に選んでいることがわかります。

6位以下は省略しますが、中国やタイ、台湾、フィリピンなどアジアの国が多くなっています。留学先を地域で分けた場合は、アジアが4万836人、北米が2万7462人、ヨーロッパが2万4176人で、アジアがもっとも多くなっています。

コロナ禍で大幅に激減した留学生の数

2020年度(2020年4月~2021年3月)は年間を通してコロナ禍にあり、大学生の留学者数は2019年度の10万7346人⇒1487人で、前年度比で98.6%減となりました。

2021年度のデータはまだ出ていませんが、2020年度同様、コロナ禍で海外留学は非常に低調だったと見られます。ただ、今後は新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着くという前提で、留学者数は再び増加していくと考えてよいでしょう。

なお、一部の大学ではコロナ禍で海外留学ができなくなったことを受けて、代替手法としてオンラインで現地の大学の講義などを受講する「オンライン留学」を取り入れています。海外に再び行けるようになっても、大学によっては、手軽に海外の大学の授業が受けられる方法として、オンライン留学も併用していくとしています。

※出典:2019(令和元)年度 日本人学生留学状況調査結果 独立行政法人日本学生支援機構
https://www.studyinjapan.go.jp/ja/_mt/2021/03/date2019n.pdf

大学在学中の留学のメリット・デメリット

そもそも、なぜ留学するのでしょうか。メリットとデメリットを簡単に確認しておきましょう。

留学の主なメリットとは

一般的に、留学には次のようなメリットがあるとされます。

  • (日本で学ぶより)語学力がつく
  • 国際感覚が身につく、異文化への理解が深まる
  • 視野が広がる
  • 海外の友人・知人を得られる
  • 就職活動でアピールできる

また、特定の分野を学ぶために長期で留学する場合は、日本で学ぶ以上の知識を身につけたり、最先端の知見に触れたりすることも可能です。

ちなみに、「大学生のうちに留学するメリット」としては、キャリアの中断がないことが挙げられます。卒業後、社会人になってから長期留学をするには、会社を休職・退職しなければならずキャリアが途切れるリスクがありますが、大学生の場合はその心配がありません。

留学にはデメリットもある!?

では、留学のデメリットとは何でしょうか。よく指摘されるのは、次のようなことです。

  • 多額の留学費用がかかる
  • 日本の大学の卒業が遅れる
  • (卒業が遅れることで)就職活動に不利になる

本当にデメリットになるのか、一つずつ見ていきましょう。

留学費用とは、渡航費、ビザ代、学費、住居費、生活費などです。短期留学なのか長期なのか、交換留学なのか個人で手配する留学なのかなどによって金額は大きく変わります。例えば、アメリカに1年間の長期留学をする場合は、400万円程度かかるとされています。

ただし、交換留学(詳細は後ほど説明)の場合は、在学中の大学の学費のみで、留学先の学費はかからないのが一般的です。また、在学中の大学や留学先の大学、公的機関などには留学のための給付型の奨学金制度もあり、奨学金を利用すれば費用を抑えられます。

・海外留学のための奨学金 日本学生支援機構(JASSO)
https://ryugaku.jasso.go.jp/scholarship/

長期留学の場合は日本で在学中の大学を休学する必要があり、そのため大学の卒業が遅れるケースは確かにあります。ただし、交換留学などで留学先の単位を在学中の日本の大学の単位として認定できる場合には、1年間留学しても4年で卒業できるケースもあります。

また、留学による留年が就活にもたらす影響については、文部科学省の留学促進キャンペーンサイト「トビタテ!留学JAPAN」に参考となるアンケート結果が公表されています。その中では、企業の採用担当者の73.1%が「留学による留年はマイナス評価にならない」と回答しています。学生へのアンケートでも、留学による留年が就活でマイナス評価にならないと答えた人が75.3%で、悪影響を及ぼしたという回答は3.4%のみでした。つまり、デメリットになる可能性はあるものの、その割合は小さいといえそうです。

・トビタテ!留学ジャパン「留学生の就活とキャリアのリアル」 文部科学省
https://tobitate.mext.go.jp/about/career/

知っておきたい留学の方法と種類

ひと口に「留学」といっても、方法も種類も一つではありません。

まず押さえておきたいのは、留学の方法です。大きく分けると、

  • 個人でイチから留学先を選ぶ方法
  • 在籍している大学の制度を利用する方法

があります。どちらを利用するかで、費用や取得できる単位などに違いが生じます。

個人で留学する場合は、エージェントを利用するのが一般的

個人で留学する場合は、どこの大学に在籍していても基本的には自由に留学先を選べるのがメリットです(留学生を受け入れている大学のみ)。ただし、長期留学の場合は日本の大学を休学する必要があります。

資料の取り寄せから入学手続き、ビザの申請、滞在先の手配など自分ですべて行うのはかなり大変です。そこで、個人で留学する場合には、手数料を支払うことで留学に関わるさまざまな手続きを代行してくれたり、留学の相談に乗ってくれたりする「留学エージェント」を利用するのが一般的です。さまざまな留学エージェントがありますが、語学留学に強いエージェントと海外の大学への留学に強いエージェントの2種類に大別できます。

さまざまな種類がある大学の留学制度

大学として留学制度を設けている場合、当然ながらその大学に在学している学生のみが利用できます。大学の制度なので、留学にあたっては大学がサポートをしてくれるのがメリットです。また、個人で留学するより、学費面や取得単位の面で有利になることもあります。

代表的な留学の種類を簡単に紹介します。

交換留学(協定留学)

大学が協定を結んでいる海外の大学に、学生を派遣する留学制度です。期間は半年~1年程度で、語学力を前提に専門的な内容を学びます。留学先の大学の単位が、在学中の大学の単位として認められる場合が多く、海外に1年間留学しても日本の大学を4年間で卒業できるケースが多いのも魅力です。

短期留学

主に、夏休みや冬休みなどの長期の休みを利用した、1~数週間程度の留学制度です。短期間なので気軽に利用できるのがメリットです。大学の留学制度を利用する場合は、基本的に協定を結んでいる海外の大学が対象になります。語学を学ぶプログラムが主流ですが、短期でも専門分野を学ぶプログラムを用意している大学もあります。

ダブル・ディグリー留学

大学が協定を結んでいる海外の大学で学ぶことで、「日本の大学の学位」と「留学先の大学の学位」の両方を得られる留学制度です。一般的には、二つの大学の学位を取得するには、それぞれの大学に4年間通う必要がありますが、ダブル・ディグリー留学なら時間も費用も節約できます。

海外インターンシップ

海外の大学で学ぶ、いわゆる「留学」とは異なりますが、海外の企業で一定期間働く海外インターンシップのプログラムを用意する大学も増えています。期間は、数週間~1年程度と幅があり、給料が支払われるケースもあります。

海外留学したい人が選ぶべき大学

「大学生になったら留学したい」と考えているのであれば、進学先として留学制度が充実している大学を選ぶのはよい方法といえるでしょう。

現在は、多くの大学が留学制度を設けていますが、中でも充実しているのは外国語学習に力を入れている「外国語大学」などです。例えば、国立の東京外国語大学では世界65カ国・地域の178大学と交換留学などの協定を結んでいます。また、関西外国語大学の場合は55カ国・地域の395大学と協定締結などによるつながりがあります。

・東京外国語大学 留学案内
http://www.tufs.ac.jp/student/studyabroad/

・関西外国語大学 国際交流/留学
https://www.kansaigaidai.ac.jp/international/

その他の大学でも、留学制度がある場合は大学の公式サイトに情報が掲載されています。各大学の公式サイト内で「留学」のキーワードで検索してみましょう。

海外留学が必須の大学・学部もあり

大学・学部によっては、学生に数週間~1年程度の海外留学を義務付けている場合もあります。カリキュラムに組み込まれているので留学しやすいことに加えて、留学のための給付型奨学金制度や補助金制度が用意されている場合も多く、大学時代に必ず留学をしたいという人には魅力的な進学先といえるでしょう。

留学が必須の大学・学部の例

・国際教養大学(公立) 留学期間:1年間
https://web.aiu.ac.jp/undergraduate/abroad/

・同志社大学 グローバル・コミュニケーション学部 留学期間:1年間
https://globalcommunications.doshisha.ac.jp/to_world/index.html

・明治学院大学 法学部グローバル法学科 留学期間:4カ月程度
http://mgulaw.jp/global/abroad/

・早稲田大学 国際教養学部 留学期間:1年間
https://www.waseda.jp/fire/sils/about/overview/