最近、テレビ番組でもよく取り上げられるようになり、よく耳にするようになった「メタバース」というキーワード。中でも目立っているのはMeta(元Facebook)を筆頭とする海外企業になっていますが、もちろん日本の企業でも取り組みを深めています。国内でのメタバースへの取り組みを紹介してみます。
「メタバース」は、SNSに代わる仮想空間でのコミュニケーションサービス
「メタバース」とは、仮想空間でのコミュニケーションサービスの総称です。インターネットを使った、新たなコミュニケーション手段として大変注目が高まっています。主にVRゴーグルを装着して、没入感ある3D空間にアバター(仮想世界での仮想のキャラクター)として参加して、他者と交流します。
この「メタバース」という言葉は、SNS大手のFacebookが社名を「Meta」に変更したことが、ニュースなどで、耳にしたことがあるのではないでしょうか。このMetaとは「メタバース」の「メタ」のこと。つまり、Facebookが社名を変えるくらい入れ込むほど、「メタバース」はSNSの次のインターネット上のコミュニケーションとして注目されているのです。
メタバースに関することは、こちらにも公開していますので、詳しく知りたい方は下記を参考にしてください。
コロナ禍でバーチャルなコミュニケーションが加速
利用者側の視点に立つと、新型コロナウイルス感染症流行の影響もメタバースへの注目を高める結果を招いたと考えられます。高校生の皆さんもコロナ禍で、学校に通学せず、自宅にいたまま授業を受けるリモート授業を経験でしたのではないでしょうか。
そのように人と人が直接会う場が減った結果、バーチャルでのコミュニケーションに違和感がなくなってきている状況にあることも、注目される要因のひとつといえるでしょう。
国内「メタバース」関連の動き
メタバースには、国内の多くの企業が参加しはじめています。代表的な動きを紹介してみましょう。
バーチャルイベントは盛んに開催
NTTドコモは、アバターの表情など顔の動きや手足の動きを反映する技術を公開したり、国内でVRイベントを手がける企業HIKKYと、メタバースで行うVRイベントを開催しています。
リアルな街とバーチャルを融合させるバーチャルシティ(都市連動型メタバース)を使ったVRイベントはKDDIも手がけていて、2020~2021年のハロウィーンに「バーチャル渋谷」としてイベントを開催しています。2022年サッカー日本代表応援イベントとパブリックビューイングも、この「バーチャル渋谷」を使って開催されています。
<au(KDDI) バーチャルシティ構想 コンセプトムービー>
<新しい景色を2022 日本代表戦 みんなで熱狂メタバースイベント>
上記で紹介した「バーチャル渋谷」には、クラスターが提供する「cluster」と呼ばれる共通のメタバースプラットフォームが使われています。2017年から正式サービスを開始していて、ライブやイベントなどバーチャル空間でアバターを介して人が集まって楽しむ目的に採用例が多いプラットフォームです。cluster向けのオリジナルアバターを作成ツールも提供されています。
・クラスター
https://cluster.mu
<Clusterカンファレンス – メタバースを再定義する>
また、GREEグループの「REALITY」は、日本で人気のアニメ調アバターを使ったスマホライブ配信SNSアプリを軸にメタバースを推進しています。「REALITY XR cloud」と呼ぶメタバース構築ソリューションを使ったバーチャル音楽ライブも開催されています。
<湘南乃風 Blu-ray&DVD「風伝説番外編 ~電脳空間伝説 2020~ supported by 龍が如く」Teaser>
国内でも進む「メタバース」の技術開発
メタバースやAR、VRに関する技術開発も、国内で数多く進められています。メタバースの中で重要な技術はいくつかあります。そのひとつは3Dアバターとその完成度でしょう。
3Dアバターは、YouTubeなどで人気のVTuberとして、あるいはテレビなどでも見かけるのでなじみがあるのではないでしょうか。日本人好みのアバターは独特で、アニメ調のアバターは特に人気があります。髪の揺れ方など細かな動きにもこだわって作られています。
また、3Dアバターはゲームキャラクターとしてもよく使われて、ゲーム内のワールドはほぼメタバースといってもよいでしょう。
リアル「メタバース」を作る「ボリュメトリックキャプチャー」という技術
人物そのものや動きと位置を3Dデータにする手法は「ボリュメトリックキャプチャー」と呼ばれており、上記のNTTドコモのほかソニー、キヤノン、ソフトバンクも対応スタジオを作りはじめています。この技術は実世界空間からVRコンテンツを作り出したり、リアルなアバター制作に役立ちます。
<ソニー 全天球映像技術の先を見据えたボリュメトリックキャプチャ技術>
これまで人などの動きの記録は「モーションキャプチャー」という手法が使われていました。こちらは体の動く軌跡のみを記録し、そのデータをもとに3Dモデリングされたアバターなどを動かします。
一方「ボリュメトリックキャプチャー」では、さまざまな角度からの映像を記録して3次元のボクセルデータという形で記録し、どの角度から見ても再現できるようにしており、モーションキャプチャーを用いた3Dモデリングとはまったく異なるアプローチといえます。
この技術が一般的になると、メタバースにリアルワールドそっくりのデータを使うことができ、入り交じることが容易になってきます。
<Canon Official Volumetric video of an action scene / ボリュメトリック アクションシーンビデオ>
VRゴーグルもさらに進歩
さらに、国内メーカーでは古くからVRゴーグルやARグラスの開発が行われていました。ゴーグルは、VRやARだけでなく、メタバースでも使われるデバイスです。これらの開発も盛んに行われています。
例えば、最近ではパナソニックの100%子会社「Shiftall」が「MeganeX」という大幅に軽量化し、両目で5.2K映像を表示するVRゴーグルを2022年春に発売すると発表しています。映像が緻密になると、より自然で現実感のあるVR映像が堪能できるようになります。
ほかにも、ソニー「PS5」向けのVRシステム「PlayStation VR2」の発売も発表されています。ゲームを通してVRがより身近になるでしょう。
リモートに慣れた生活を送ったことで、メタバース普及に拍車
このように、メタバースで使われる個別の技術はすでに日本でも数多く扱われています。リモートコミュニケーションに慣れた今、普及の下地は十分にできていると考えられます。現在のSNSやオンラインミーティングなどから徐々にメタバースへ切り替わっていき、より普及に向け拍車がかかることでしょう。
国内で世界的メタバース企業が生まれる可能性もある
このように、国内でもさまざまメタバース関連の動きが盛んになってきていますが、海外と比較すると、まだまだ勢いは大きくはないという状況にあります。しかし日本にはマンガカルチャーもあり世界に誇れるコンテンツもあります。「どうぶつの森」や「ドラゴンクエスト」など独特のゲームシリーズのほか、ソーシャルゲームでも人気が高いタイトルが多くあります。これらがまとまっていけば、世界を席巻するメタバース企業が生まれる可能性もあるでしょう。
「メタバース」を学べる大学の学部、学科
メタバースそのものを学ぶことができる学問はまだありませんが、基本的な技術は3DCGやVR、AR、人工知能(AI)、プログラミングになります。工学部や理工学部であれば基礎を学ぶことができます。また、プログラミングを学び、ゲームの知識を得ておくことも、メタバースへの理解を深める助けになるでしょう。将来、メタバースにかかわりたい方は、ソフトウエア、メディア、コミュニケーション、情報といった学科を選ぶことをおすすめします。
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