英検や漢検といった資格・検定を取得すると、自分の知識や能力を客観的に確認できるほか、大学受験でも大いに役立つ可能性があります。どのような利用法があるのか、どんな資格・検定の取得を目指せばよいのかなど、大学受験のための資格・検定との付き合い方を紹介します。
資格・検定は、大学受験でもさまざまに役立つ
英検(実用英語技能検定)や漢検(日本漢字能力検定)のような何らかの資格・検定を、高校在学中に取得したいと考えている人は多いでしょう。資格や検定を取ると、どの程度の知識やスキルが身についたのかを客観的に把握でき、自分の学びの成果を目に見える形で表すことが可能です。
しかし、資格・検定を取得する意味は決してそれだけではありません。取得しておくと大学受験の際に、さまざまに役立つ可能性があるのです。「取得した努力を評価される」のはもちろん、もっと直接的に役立つ、つまり受験を有利に進められる場合もあります。
資格・検定を出願要件としている大学も
大学によっては、指定された資格・検定の取得を出願要件とされているケースもあります。推薦型選抜や総合型選抜(旧・AO入試)が中心ですが、一般選抜でも資格・検定を出願要件にしている場合があります。
出願要件とされている場合、指定の検定や資格をひとつも持っていないと、そもそもの出願ができません。通常は英語の資格・検定をはじめ、さまざまな資格や検定が指定されていますので、前もって確認しておく必要があります。
大学受験に向けて、取りたい資格・検定は?
高校生が取得を目指せる資格・検定は多数ありますが、今回はあくまで大学受験を視野に入れたときに、取っておくとよい資格・検定を取り上げます。
まずは『英語』の資格・検定
大学受験を視野に入れた場合に、高校生が最優先で取得を検討したいのは英語関連の資格・検定です。
英語は、多くの大学で受験科目のひとつになっていますが、最近は英語の資格・検定を入学試験に活用するという「英語外部検定利用入試」を採用する大学が増えています。2021年度の導入では見送られましたが、「大学入学共通テスト(共通テスト)」でも、早ければ2024年度から民間の英語資格・検定のスコアが活用されるようになる予定です。
英語の資格・検定は非常に種類が多く、どれを選ぶのがよいか迷ってしまう人もいるでしょう。選ぶ際の参考のひとつになるのが、2021年度の共通テストで外部試験として認められる予定だった英語の資格・検定です。
具体的には、以下のとおりです。
・英検(実用英語技能検定)
・ケンブリッジ英語検定
・TOEFL iBT
・IELTS(International English Language Testing System)
・TEAP(Test of English for Academic Purposes)
・TEAP CBT(Test of English for Academic Purposes)
・GTEC
また、共通テストへの参加を途中で取りやめたTOEICも、非常によく知られた英語の資格・検定です。
迷ったときには、この中から志望する大学で利用できる資格・検定を選ぶのがよいでしょう。また、どうしても絞り込めないというときには、この中でも特に高校生になじみがあり、多くの大学の入学者選抜で活用できる英検を、まず検討してみるのもお勧めです。
『漢検、数検』など、英語以外の資格・検定
英語以外の資格・検定についても見ておきましょう。受験科目のひとつである英語に比べると、他の資格・検定は大学受験での利用の幅はそれほど広くはありませんが、出願要件になっていたり、推薦型選抜や総合型選抜(旧AO入試)で評価される場合も数多くあります。
自分の興味のある分野や志望先に関連する分野で、さらに普段の勉強にもプラスになるような資格・検定なら目指す意味は十分にあります。
代表的なものをいくつかご紹介します。
・漢検(日本語漢字能力検定)
漢字の能力を測定する技能検定。
・数検(実用数学技能検定)
数学の実用的な技能を測り、論理構成力をみる記述式の検定。
・理検(実用理科技能検定)
理科の基礎力を基礎・応用・発展・管理の段階に分けて評価する検定。
・日本語検定
日本語の総合的な能力を測る検定。
・ITパスポート試験
ITに関する基礎的な知識を証明できる国家試験。
大学受験での資格・検定の活用方法
続いて、取得した資格・検定を大学受験の際にどのように活用できるのかについて見ていきます。
英語試験の点数に『上乗せ』できる
一部の大学では、英語の資格・検定の成績を点数化し、受験時の英語の点数または総合得点に加点するという方法を採用しています。資格・検定を取得している場合、テストの点数に上乗せされるので、受験を有利に進めることができます。
ある大学の一般選抜では、8種類の英語の資格・検定を大学で定めた基準によって、4点、8点、12点、16点に点数化し、英語の試験の点数に上乗せします。
資格・検定:12点、英語の試験:75点
⇒ 英語の点数を87点(12+75)として評価
英語試験の『代わり』になる
英語の資格・検定の成績を点数化して、英語の試験に利用する方法には別のパターンもあります。「加点」ではなく、英語の試験の代わりになるように、資格・検定の評価を「得点換算」または「みなし得点」するというやり方です。
ある大学では、TOEICのスコアを次のように英語の試験の得点に換算しています。
・TOEIC 785点以上 ⇒ 英語の試験を95点として換算
・TOEIC 670点以上 ⇒ 英語の試験を80点として換算
・TOEIC 550点以上 ⇒ 英語の試験を70点として換算
得点換算の場合は、資格・検定のスコアが高ければ、大学独自の英語の試験を受けなくても、試験で高い点数を得ることが可能になります。また、英語の試験を受けた場合には、得点換算か実際の試験の点数か、どちらか高いほうを採用してもらえます。
さらに、大学によっては、英語の資格・検定で高いスコアを取得している場合、英語の試験を免除かつ満点とみなす場合もあります。
面接での『自己アピール』に利用
推薦型選抜や総合型選抜(旧・AO入試)では、英語に限らず高校時代に取得した資格・検定を志望動機書に書いたり、面接で話すことで、自己アピールに利用できます。
気になるのは、資格や検定をどの程度評価してもらえるのかということですが、これは大学によってまちまちです。明確に点数化して評価する大学もあれば、合否の参考程度にするという大学もあります。
資格・検定は、どのレベルをいつ取得する?
英検では、「準2級」が高校中級程度、「2級」が高校卒業程度を目安としています。資格・検定の主催団体がこうした目安を出している場合は、できれば「高校程度」以上のレベルを目指しましょう。あまりに低いレベルでは、出願要件を満たさなかったり、推薦型選抜や総合型選抜で評価されなかったりという可能性があります。
ある程度、志望大学が絞られている場合は、各大学でどのレベル以上の資格・検定が求められているのかを、確認するのが確実です。
また、資格・検定の取得時期についても確認が必要です。特に、英語の資格・検定の場合は、「出願時からさかのぼって2年以内」のように期限を設けている大学も多いためです。時期の要件を満たさない場合は、期限内に取得し直す必要があります。
自分にとって役立つ資格・検定の取得を目指そう
大学受験の際にさまざまな形で利用できる資格・検定ですが、取得するためには、それぞれの資格・検定に即した勉強も必要になります。そのため、「あれもこれも」と手を広げ過ぎると、資格や検定の勉強だけで手いっぱいということにもなりかねません。
資格・検定の勉強が、普段の学校の勉強や受験勉強の妨げになっては本末転倒です。自分にとってどの資格・検定がよいのかを、よく検討して選び、取得を目指しましょう。