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AIが市民生活に浸透する時代。【AIリテラシー】は大学生にとって必須のスキル!

人工知能(AI)というと、「すごい力を持ち、人間から仕事を奪ってしまうちょっと怖いモノ」と考えている人がいますが、果たして本当にそうでしょうか。「Society 5.0」の未来に向けて、AIの基本的な知識である「AIリテラシー」は、理系や文系に問わず、これからの社会を担っていく大学生にとって必須の知識となっています。

「AIリテラシー」は、これからの社会に必須のスキル

AIには得意な領域もあれば、不得意な領域もあります。たしかに、膨大なデータから類似したデータを見つけ出したり、異常などを見つける処理など、AIが得意とする「大量のデータを元に推論する技術」は、人にはかなわない分野といえるでしょう。

一方で、新しいことを想像する、言葉を理解する、データが蓄積されていない未知のものを分析するなど、不得意な分野もまだまだ多く、決して万能ではありません。

リテラシーとは「読み書きの能力」を意味する言葉で、「AIリテラシー」とは、AIに関する初歩的な知識を指します。これからの社会で生きるには、AIの強み、弱点を正しく理解し、うまく付き合うためのAIリテラシーを身につけることが求められているのです。

すでに見えないところでAIの活用は広がっている

今の社会ではデータやデジタル技術を活用して新たな価値を創出する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が進んでいます。

スマートフォンなど身近な機器はもちろんのこと、あらゆる機器に搭載されたセンサーより収集したデータを活用し、経済の発展や社会的課題の解決に役立てようと考えており、サイバー空間と現実空間が融合した「Society 5.0」の実現を目指しています。

IoT(モノのインターネット)をはじめとするさまざまな機器より集められた大量のデータを処理し、効率よく必要なデータを利活用するために重要となるのがAIです。

現在のAIは、大量のデータから学習する「機械学習」が中心で、音声や画像の処理を得意としています。すでにロボットや自動運転車などへの応用、医療分野などにも活用が始まっており、さらに少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差など、あらゆる社会課題の解決などにも応用が期待されています。

AIが抱えるさまざまな「問題」

社会問題の解決に期待されるAIの活用ですが、世の中においてAIの知識が十分に浸透しているかといえば、決してそうではないでしょう。

例えば、「とにかく何でもAIを導入すれば、ビジネスの効率化が図れたり、イノベーションを起こせる」と勘違いしている経営者がいます。その結果、十分効果が得られるとは限らないのに漠然とAIに投資し、失敗してしまうといったケースもよく聞きます。

また「AIによって仕事が奪われてしまうのではないか」「AIに社会を支配されてしまうのではないか」といった漠然とした不安を抱えている人も少なくありません。これらは「AIがすべての分野において優れている」といった誤った知識や思い込みによるものです。

AIとの付き合い方を見つめなおすとき

だからこそ、これから社会のデジタル化を実現し、経済発展や社会的な問題を解決していくにはAIリテラシーが必要となるのです。

そしてAIの特性を知らなければ、十分活用しきれないどころか、むしろ問題を引き起こしてしまう可能性もあります。

誤った方向にAIを育てるのも人間

現在のAIでは、データを学習させ、その結果より推論を導き出すものですが、与えられたデータに偏りがあれば、学習にも偏りが生じ、その結果、誤った判断を行ってしまうこともあります。

実際にAIに誤ったデータを学習させた結果、「AIが一部の人間への差別的な発言をするようになってしまった」というような重大な問題を引き起こしてしまったケースもあるのです。

何をどこまでAIに判断させるのか、決めるのも人間

また重大な判断について、「どこまでAIにまかせて良いのか」といった倫理的な問題も存在しています。AIが誤った判断を下し、人生や生命などに重大な影響を与えてしまった場合に、「誰が責任を取るのか」といった問題も抱えています。

AIを活用するには、「AIの特性」を十分理解した上でどのような分野で活用すると効果的であるか検討し、品質の良いデータを十分に用意した上で活用していかなければなりません。

AIリテラシーを学べる大学の学部、学科

AIは、さまざまな分野で応用が期待されており、ビジネスや社会生活においても重要な知識です。そのためAIリテラシーは、大学においても広く取り入れられています。

政府が掲げた「AI戦略2019」でも、すべての大学生や高等専門学校生が、初級レベルの「数理」「データサイエンス」「AI」を取得することを目指しています。そのため、いわゆる「文系」「理系」の垣根を越えてAIリテラシーについては多くの大学で学ぶことができるでしょう。

「AI戦略 2019」の概要と取組状況:内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg7/20191101/shiryou1.pdf

もし、基本的な知識だけでなく、「AIそのものの理論」や「AIが抱える諸問題の解決」など、より深く専門家としてAIに関わりたいのであれば、工学部や情報学部、データサイエンス学部などを目指すこととなります。

最近では、AIの専攻コースを設けている大学もありますので、いくつか例を紹介します。

東京国際工科専門職大学 情報工学科 AI戦略コース

東京国際工科専門職大学は、「AI」「IoT」「ロボット」などを学ぶことができる専門職大学です。産業界などと連携した教育を実施しており、実務家の教員も多く配置されており、実習に重きがおかれています。

情報工学科には、「AI戦略コース」も設置しており、人工知能の理論はもちろん、実装のためのプログラミング技術などもカリキュラムに取り入れています。

東京国際工科専門職大学
https://www.iput.ac.jp/tokyo

埼玉工業大学 情報システム学科 AI専攻

埼玉工業大学の情報システム学科にはAI専攻が用意されています。理論について学ぶほか、実践的な演習などを通じて、AIの開発や運用に関する知識や技術などを学びます。

入学から卒業まで科目や講義の内容、研究室の一覧などもウェブサイトで公開されており、具体的に学ぶイメージをつかむことができるでしょう

埼玉工業大学 情報システム学科 AI専攻
https://www.sit.ac.jp/gakubu_in/kougaku/ai/

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