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SDGs時代にマッチする新たな競技【eスポーツ】、大学研究もスタート!

ここ数年、コンピューターゲームをスポーツとして扱い、競い合う「eスポーツ」への注目が高まっています。世界各国ではeスポーツのプロ選手たちによって構成された「プロチーム」も誕生しており、大学でも研究対象として扱われるようになりました。従来のスポーツと同様、さまざまな側面からの研究が必要となるでしょう。

「eスポーツ」はただのコンピューターゲームではない

趣味や遊びと考えられてきた「ゲーム」の世界ですが、それはひと昔前の話。新たな競技「eスポーツ」として注目されるようになり、その存在感は年々高まっています。このようなかつてない取り組みに対して、大学でも研究がスタートしています。

「eスポーツ」のはじまり

「eスポーツ」とは、「エレクトロニックスポーツ」の略です。コンピューターゲームによる対戦をスポーツ競技として楽しむものです。

「ビデオゲーム」は数十年前に登場しました。登場したころは、ゲームセンターや家庭における遊戯であり、趣味のひとつに過ぎませんでした。

その後、人気の高まりから格闘対戦ゲームなどでは世界大会も開催されましたが、コンピューターやネットワークが徐々に発展し、状況が変わりはじめ、2000年前半には「eスポーツ」という言葉も誕生しました。とはいえ、一部ファンに限られ、あくまでも趣味の世界にとどまっていた話でした。

市民権得た「eスポーツ」、SDGs時代にもマッチ

状況が大きく変化したのはここ数年です。コンピューターやインターネットの進化により、演算や大量のデータ通信を高速に行うことができ、これらの技術に支えられたオンラインゲームは、柔軟で複雑なプレイが可能となりました。瞬発性や戦略、チームワークなど競う新たなプラットホームとなり、プレイ人口も増加しています。

その競技性は、まさに従来のスポーツと通じるところもあり、「eスポーツ」として一気に認知度が高まったのです。

国際オリンピック委員会(IOC)でも、2021年5月から6月にかけて「オリンピックバーチャルシリーズ」を開催しました。政治の分野でも、超党派の議員による「オンラインゲーム・eスポーツ議員連盟超党派の議員連盟」などもあり、政策として注目されています。

世代やハンディキャップなども超えて仮想空間で楽しめるその競技性は、SDGsなど多様性が重視される今日の流れともマッチしています。デジタル技術と多様性が生み出したまさに「新しいスポーツ」と言えるでしょう。

高校生などを対象とした大会も開催されています。高校でも従来の運動部や文化部と同様に、「eスポーツ部」を設置する高校もあり、この傾向は競技人口の増加とともに今後より高まっていくことでしょう。

<第3回全国高校eスポーツ選手権リーグ・オブ・レジェンド部門決勝大会>

「eスポーツ」が抱える課題

eスポーツでは、賞金が出る大会が開催されており、プロチームなども誕生しています。新たな産業として歩みはじめましたが、新しい分野であるゆえに解決すべき課題は多くあります。スポーツ同様、今後は大学においてもさまざまな領域で研究が進むことが予想されます。

eスポーツを支えるIT技術

スポーツでは、練習環境やユニホーム、シューズをはじめとする周辺道具がかかせず、ときとして競技のパフォーマンスにも大きく影響します。

数ミリ秒の差が勝敗を分けるeスポーツの世界では、道具への依存も大きくなります。レギュレーションにもよりますが、パソコンやスマートフォン、ディスプレー、入出力装置、ネットワークなどもプレイを支える上で重要な道具です。これまでもゲーミングパソコン、ゲーミングキーボードなどが販売されていますが、よりプロ志向のツールが研究され、需要が高まっていくに違いありません。

またデジタル分野では、バグを利用して想定とは異なる動作を悪用して得点をかせぐといった「チート行為」の問題もあります。プレイ環境を保護する「セキュリティー」の研究もeスポーツ分野では重要な課題です。

デジタルにとどまらない研究領域

eスポーツだからといって研究分野は、なにも「デジタル」とは限りません。今後あらゆる学問分野で研究対象となることが予想されます。

例えば、プロスポーツとしてチームや大会運営など行い、ファンを獲得したり、事業として収益を上げ、ビジネスとして成立させていくとなれば、経営学やマネジメントが重要となるでしょう。

プロチームとしては、契約する選手のコンディションを良好に保つことが必要となります。効果的な練習方法や健康管理など、スポーツ科学と同様の研究も求められます。

もちろん「法律問題」も切っては切れないテーマとなるでしょう。選手との契約、労務問題などがあります。

またプロともなれば、当然ながら勝敗がシビアに問われることとなります。誰もが納得のいくよう公平に大会を開催するには、スポーツと同様にルールを整備し、運用しなければなりません。また「ドーピング」なども問題となっていくでしょう。

より多くの人が観戦して楽しむプロスポーツとして成熟していくには、法律面での検討は避けては通れない問題です。

身体を使うリアルなスポーツがさまざまな分野の学問と関係しているように、eスポーツもあらゆる角度から研究する必要があるのです。

<イギリスの公立大学であるスタッフォードシア大学のeスポーツ講座>

産学官で「eスポーツ」の研究を開始した筑波大

筑波大学では、茨城県、NTTe-Sports、NTT東日本などと協定を結び、産学官連携でeスポーツの発展や普及を目指す研究を2021年より開始しました。

筑波大学では、これまでもスポーツ科学を研究してきましたが、これらノウハウを生かして「eスポーツ」の効果を研究するため、eスポーツ科学プロジェクトチームを設置したのです。

具体的には、脳科学や生理学のほか、栄養学、睡眠学、さらには哲学など幅広い学問より研究するとしており、eスポーツが人の体や心にどのような有益な効果をもたらすのか調べるそうです。

選手のパフォーマンスを高める食事や競技寿命を延ばすことなども研究対象としており、新たな分野における研究成果へ期待が高まります。

筑波大学:”eスポーツ科学”を推進する産学官連携協定を締結
https://www.tsukuba.ac.jp/news/20210115114152.html

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