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【フィンテック】で金融の世界が変わる! AI、ブロックチェーンを背景に革新的なサービスが続々登場

QRコード決済や仮想通貨、クラウドファンディングなど、ここ10年ほど革新的な金融サービスが次々に登場しています。その背景にあるのが、人工知能(AI)やビッグデータ、ブロックチェーンといった最新のテクノロジーです。それらの新しい金融サービスは「フィンテック」と呼ばれ、注目が高まっています。今回は、フィンテックについて紹介します。

「フィンテック」=金融(ファイナンス)×テクノロジー

フィンテック(Fintech)は、金融を意味する「ファイナンス(finance)」と「テクノロジー」を組み合わせた造語です。ICT(情報通信技術)やAIなどの最新テクノロジーを利用した革新的な金融サービスや、それを生み出そうとする取り組み自体のことを指します。

フィンテックが本格化したのは2008年頃から

フィンテックは、いつ頃誕生したのでしょうか。2000年代前半頃にはアメリカでフィンテックという言葉が使われていました。

しかし、広く知られるようになったのは2008年に起きたリーマンショック(アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破たんを契機とした世界規模の金融危機)以降だといわれています。

リーマンショックで一部の金融機関が破たんしたり、既存の銀行が融資を引き締めたりした結果、新しい金融サービスへのニーズが高まったことも、フィンテックが広がる一つのきっかけになったのです。

すでに実社会で活用されているフィンテック

では、具体的にはどのような「フィンテック」があるのでしょうか? ここでは、いくつかのフィンテックのサービスについて簡単に紹介します。

キャッシュレス決済

現金のやり取りをせずに支払いができるキャッシュレス決済は、フィンテックの代表的なサービスの一つです。よく知られているサービスには、QRコードなどを使って決済する「PayPay」や「楽天ペイ」などがあります。

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仮想通貨(暗号資産)

仮想通貨は、ネットワーク上で取引される「通貨」のことです。通貨といっても紙幣や硬貨のような現物資産はなく、デジタルデータとしてのみ存在します。銀行を利用した取引と比べると手数料が非常に安価または無料で、海外への送金も簡単なことなどがメリットです。

ただし、特定の国家や中央銀行などによって発行された法定通貨ではなく、国家による価値の裏付けはありません。

仮想通貨としては、「ビットコイン」や「イーサリアム」「リップル」などが有名ですが、現在では世界で2000種類以上の仮想通貨が発行されているといわれています。

投資・資産運用

2000年代前半から、パソコンを使った株式の売買などはすでに行われてきましたが、フィンテックではさらにその先のサービスが提供されています。

具体的には、AIなどを活用して利用者に合った投資先を自動で選定し、運用までを行う「ロボ・アドバイザー」と呼ばれるサービスなどが挙げられます。

融資サービス

これまで金融機関から融資を受けるには、さまざまな書類を提出し、審査を待つ必要があり、時間がかかるのが難点でした。

しかし、フィンテックでは、AIが大量の取引データや資産状況などを短時間で収集・分析し、適正な金利を算出するため、スピーディーに融資を受けることが可能になります。

その他のフィンテック

この他にも、次のようなサービスがフィンテックとしてよく知られています。

  • クラウドファンディング:インターネットを活用して個人など少額の寄付を募ること
  • 送金サービス:銀行を介さず、個人間で送金を行うこと
  • バックオフィス業務のクラウド化:企業がクラウド型ソフトを使い財務や会計を行うこと
  • 個人財務管理:家計簿アプリや金融講座をまとめて管理するアプリなどを使って、個人の家計や資産情報を管理すること

<経済産業省「フィンテックがある1日~お金が変わる。社会が変わる。~」>

フィンテックの背景にある多様な技術

冒頭でも触れたように、フィンテックにはさまざまな技術が使われています。

まず、大前提にあるのがインターネットに代表されるICT(情報通信技術)です。また、スマートフォンなどの通信機器、IoT(Internet of Things)もフィンテックには欠くことのできない存在です。

さらに、AIやビッグデータ解析、生体認証、システム同士を簡単に連携するためのAPI(Application Programming Interface)、仮想通貨と一緒によく取り上げられるブロックチェーン技術も、フィンテックでよく活用される技術です。

今後も、新しい技術が開発されれば、その技術を活用してさらに新しいフィンテックが生まれる可能性は高いといえるでしょう。

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フィンテックで変わることは?

個人の立場から見ると、フィンテックの利点には、利便性の向上やコストの削減、選択肢の増加が挙げられます。スマートフォン一つで買い物も資産運用も保険加入もでき、しかも、いずれのサービスもこれまでより安価に受けることができます。

しかし、金融サービスを便利かつ安価に受けられることだけがフィンテックによる変化ではありません。企業の側に立つと、もっと大きな変化が見えてきます。さらに、フィンテックによって社会も変わっていく可能性があります。

大企業と中小企業など、立場で異なるフィンテックの影響

大企業にとっては、フィンテックで業務が効率化され、生産性の向上が期待できます。一方で、これまで人間が担当していた業務がフィンテックに置き換わり、銀行など大手の金融機関では大規模なリストラや配置転換が必要になるかもしれません。その結果、業界再編などもあり得るでしょう。

逆に、人手が足りない中小企業にとっては、フィンテックで人手不足の解消が期待できます。また、中小の金融機関には難しかった、大手金融機関並みの金融サービスの提供が可能になるかもしれません。フィンテックを活用すれば、大規模な費用をかけずとも新たな金融サービスを導入できる可能性があるためです。

さらに、フィンテックによる新しい金融サービスは多くの若い企業から誕生していることから、フィンテックが活発になることは起業の増加やベンチャーの促進にもつながると考えられます。

国が考えるフィンテック社会のあり方

経済産業省は、2017年5月に「FinTechビジョン」としてフィンテックに関する報告・提言を発表しています。その中では、「フィンテック社会」として、キャッシュレス決済などにより個人の生活(家計)が劇的に変わり、企業も生産性の向上やイノベーションによって収益力が劇的に変わるという将来像を掲げています。

「フィンテック」について学べる大学の学部、学科

フィンテックの全体像や各サービス内容、フィンテックが企業経営や社会の仕組みに与える影響については、主に商学部や経営学部、経済学、大学院のファイナンス研究科などで学ぶことができます。科目の設置などはまだ一部の大学にとどまっていますが、フィンテックの広がりと共に、今後は増えていくことが予想されます。

例を挙げると、名古屋商科大学の商学部会計ファイナンス学科には、「フィンテック概論」という専門科目があります。また、慶應義塾大学の経済学部では、企業の寄付講座として「フィンテックの理論と実践」を開講しています。(いずれも記事執筆時点の情報)

一方、フィンテックのバックボーンとなる技術や理論、例えばAIやブロックチェーン、ビッグデータ解析、セキュリティーなどは、主に理工系の学部で学ぶことができます。

慶應義塾大学はフィンテックに関する研究組織も設立

慶應義塾大学の経済学部・経営学部では、フィンテックに関する学際的研究と教育のためとして、2017年6月に「FinTEKセンター」を開設しています。

このセンターでは、フィンテックを支える技術の研究を促進すると共に、フィンテックが経済や社会に与える影響を実証的に分析し、よりよい制度設計に向けた政策提言を行うことを目指しています。

慶應義塾FinTEKセンター
http://fintek.keio.ac.jp/

参考

経済産業省「FinTechビジョン」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2019/190313smartsme11.pdf