2021年頃からインターネットやテレビ、雑誌などで見かける機会が急激に増えた「Z世代」という言葉。世代をくくるものであり、若者世代を指していることは知っていても、具体的な年齢層や特徴まではわからないという人もいるのでは。今回は、「Z世代」をはじめとする「世代」について説明します。
「Z世代」とは、1995年頃~2010年頃に生まれた若者世代
「世代」とは、ある一定の期間内に生まれて、共通した時代背景や体験を持つ人々をひとくくりにしたものです。「Z世代」もその一つで、若者世代を指す言葉として、最近メディアでも見聞きする機会が増えています。2021年には、新語・流行語大賞のトップ10にも選ばれました。
「Z世代」とは、具体的には1995年頃から2010年頃までに生まれた人たちを呼びます。2022年末時点で、12歳くらいから27歳くらいまでの人を指すと考えておけばよいでしょう。あなたがもし高校生であればまさにその「Z世代」です。なお、生まれた年の範囲に厳密な定義はなく、取り上げているメディアやシンクタンク(研究機関)などによって1~2年から数年の違いがあります。
「Z世代」の特徴は、デジタルネイティブ&SNSネイティブ
Z世代に属する人は、他の世代と比べて、主に次のような特徴があるとされています。
もっとも大きな特徴が、「デジタルネイティブ」でITリテラシーが高いということ。マイクロソフトがパソコンの基本ソフト(OS)であるWindows 95を発売して、家庭に本格的にパソコンが導入されてインターネットが普及し始めたのが1995年です。Z世代は、生まれたときからパソコンやインターネットが身近にあり、当たり前のように使いこなしています。
スマートフォンやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)も小さい頃から慣れ親しんだ存在で、ネットを介した情報収集や情報発信、ソーシャルメディアを活用したコミュニティー形成なども、他の世代に比べて得意とされています。
他には、
- 値段の高さよりも自分が気に入っているかどうかを重視(例:「ブランド品」より「ファストファッション」が好き)
- 社会問題への関心が高く、社会に貢献したいという意欲が強い
- ジェンダー問題への意識が高い
- 「モノ(商品)」以上に「コト(体験・サービス)」にも価値を見いだす(例:車を保有するより、乗りたいときだけカーシェアリングを利用する)
なども、Z世代の特徴です。
「X世代」から始まったアルファベットの世代
ところで、なぜ「Z」なのでしょうか。Z世代はもともとアメリカで誕生した言葉で、英語では「Generation Z」です。実は、Z世代の前にY世代が、さらにその前にはX世代がありました。
アルファベットが付けられた最初の世代が、1965年~1980年頃に生まれたX世代です。1991年にカナダ人のダグラス・クープランドが書いた小説『ジェネレーションX~加速された文化のための物語たち』が、名称の由来となりました。この小説がベストセラーになったことから、登場人物が生まれた年代がそのまま世代の名称になりました(「X世代(Generation X)」という言葉自体を作ったのは、世界的な写真家のロバート・キャパという説もあります)。
X世代は、その前の世代であるベビーブーマー(ベビーブーム世代)に比べて、個人主義的でとらえどころがないという特徴があるとされました。
続く1981年頃~1994年頃に生まれた人たちは、Zの次ということでY世代と呼ばれます。2000年代に成人することから、この世代を「ミニレアル世代」ともいいます。Y世代も、パソコンやインターネットに子供の頃から触れる機会がある「デジタルネイティブ」ですが、Z世代とは違って「生まれたときから」ではありません。Y世代とZ世代を区別するために、Z世代のほうを「真のデジタルネイティブ」と呼ぶこともあります。
ちなみに、Z世代の次は、α(アルファ)世代と呼ばれ始めています。具体的には2010年頃以降に生まれた子供たちで、今後はその特徴などが次第に明確になっていくと考えられます。
主な世代名称
名称 | 生まれ年 |
---|---|
X世代 | 1965年~1980年頃 |
Y世代(ミレニアム世代) | 1981年頃~1994年頃 |
Z世代(真のデジタルネイティブ) | 1995年頃〜2010年頃 |
α世代 | 2011年頃〜 |
「Z世代」が注目される理由の一つは、存在感の大きさ
Z世代が注目されているのは、なんといっても世界人口に占める比率が高いからです。Z世代の生まれ年をどのように設定するかによっても異なりますが、世界の人口の30%超がZ世代だといわれています。
今はまだZ世代の半数が10代ですが、これからどんどん社会の中枢で活躍するようになり、消費を担っていくことは間違いありません。そのため、彼らがどんな価値観を持っていて、何に関心があるのか、どのような消費行動を取るのかなどを知ることは非常に重要な意味を持つのです。
なお、少子高齢化が進む日本の場合、Z世代の占める割合は世界全体ほど高くはなく、だいたい12~13%となっています。
団塊・新人類・バブルなど、日本独自の「世代」とは?
Z世代(Generation Z)は、世界で広く使われている世代の名称です。冒頭で触れたように、日本でも新語・流行語大賞でトップ10に入るほど注目され、知られています。
しかし、Z世代の前となるX世代やY世代については、聞く機会はなかったのではないでしょうか。実際、X世代やY世代という言葉は日本ではほとんど使われず、そのかわり日本独自の世代名称が使われてきたのです。
日本独自の世代名称が使われてきた理由は、世代は生まれた時期だけではなく、生まれ育った環境が大きく関わるからです。日本の状況に即した、日本の言葉のほうがわかりやすくみんなが納得できるからといえるでしょう。
ただ、グローバル化が進んだこともあり、国ごとの違いはあるものの、Z世代に関しては日本も含む世界で使われています。
日本で使われてきた主な世代の名称
ここでは、日本で使われてきた第二次大戦以降の主な世代の名称を紹介します。名称や年代設定は、メディアやシンクタンクによって異なるため、あくまで一例です。
日本の主な世代名称
名称 | 生まれ年 |
---|---|
団塊世代 | 1947年頃~1949年頃 |
断層世代 | 1950年頃~1960年頃 |
新人類世代 | 1961年頃~1970年頃 |
団塊ジュニア世代 | 1971年頃~1978年頃 |
バブル後世代 | 1979年頃~1983年頃 |
少子化世代 | 1984年頃~1988年頃 |
ゆとり世代 | 1987年頃~2004年頃 |
時代ごとにさまざまな世代名称がありますが、このうち「団塊世代」は、アメリカの「X世代」同様に小説が由来です。経済企画庁長官なども務めた小説家の堺屋太一が、1976年に発表した主人公が戦後生まれという近未来小説『団塊の世代』から名付けられました。
上記には記載していませんが、新人類世代に分類される世代の中で、成人前後にバブル景気が到来した世代をバブル世代(1965年頃~1970年頃生まれ)、また団塊ジュニア世代とバブル後世代の一部をロスジェネ(ロストジネレーション)世代(1970年頃~1982年頃生まれ)などと呼ぶケースも多くあります。そのときどきの、何に注目するのかでも世代の名前は変わって来るのです。
「世代」で分けて考える意味と活用方法
ここまで見てきたように、海外でも日本でも生まれた年代で人々を区切って、ひとまとまりにしてとらえるということはよく行われています。では、世代に分けて考えたり、世代を研究することにはどんな意味があり、どんなときに役立つのでしょうか。
時代や社会の分析に役立つ
同じ世代の人は、共通の時代背景や体験があることから、考え方や価値観も一定程度、近いものがあると考えられます。それを明らかにして、世代間の変化を比較することで、時代や社会がどのように変わってきたのかを分析できます。
商品や広告などのマーケティングに活用できる
マーケティングの分野では、世代で区切って考えることが非常によく行われています。なぜなら、商品でも広告でもサービスでも、それを届けたいターゲットがいるため、そのターゲットに届く戦略を考える必要があるからです。
各世代で、「この世代はこういう特徴がある、こういうことを重視している」という点が明確になっていれば、特定の世代にアピールする表現やアプローチを考えやすくなります。
「Z世代」など「世代」について学べる大学の学部、学科
「世代」に関連した大学での学びといえば、マーケティングが挙げられます。すでに述べたように、マーケティング戦略では世代ごとの特徴を分析して、それに合ったアプローチをすることが欠かせないからです。世代そのものが研究対象ではありませんが、「世代」を使った学びができます。
マーケティングは、主に商学部や経営学部の学問の範囲です。専修大学の商学部、東洋大学や青山学院大学の経営学部など、大学部によっては学部の下にマーケティング学科を設けているところもあります。
また、「Z世代」をはじめとする「世代」や「世代論」自体を研究したいという人には社会学部がよいでしょう。社会学とは、社会現象や社会の人間関係など、社会に関わるあらゆる事象を対象とした学問分野です。例えば、世代ごとの特徴の深掘りや世代間の違いが社会にどのような影響を与えるのかなど、社会学的な観点から「世代」について研究できます。
最後に、「○○世代だからあなたはこういう人」といった決めつけやレッテル貼りに、「世代」を使うことは望ましくありません。あくまで、世代全体の特徴をとらえて、それを何かに生かすためのものだと考えておきましょう。