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心理職初の国家資格【公認心理師】とは。大学に取得コースも新設!

心理に関する業務を担う「心理職」では初となる国家資格「公認心理師」が創設されました。心に悩みを抱えている人の心理状態を分析し、相談、アドバイスなどを行うための資格です。2018年には国家試験が初めて実施されました。今注目の公認心理師の仕事内容や受験資格などについて解説します。

公認心理師とは?

公認心理師は、公認心理師法を根拠とする、日本初の心理職における国家資格です。公認心理師法が成立したのは2015年。2017年に施行されたことを受け、2018年に国家試験を実施し、ついに国家資格として認められた「公認心理師」が誕生しました。

新設されたばかりの資格のため、まだ耳慣れないという人も多いでしょう。しかし、大学では「公認心理師コース」を開講するなど対応する動きも見られます。

心理学などに興味があり、就職に知識を生かしたいと考えているならば、公認心理師の資格取得を前提に大学を検討してみても良いでしょう。

「公認心理師」の仕事内容は主に4つ

では、公認心理師は具体的にどのような仕事を行う職業でしょうか。公認心理師法では、次の4つを挙げています。

  1. 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
  2. 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと。
  3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
  4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育および情報の提供を行うこと。

つまり、悩みを抱えている人の心理状態を観察、分析して、相談やアドバイス、情報提供をする仕事が公認心理師というわけです。

公認心理師法の趣旨

「公認心理師法の施行について」という文書では、公認心理師を作った趣旨が次のように説明されています。

今日、心の健康の問題は、国民の生活に関わる重要な問題となっており、学校、医療機関、その他企業をはじめとする様々な職場における心理職の活用の促進は、喫緊の課題となっている。しかしながら、我が国においては、心理職の国家資格がないことから、国民が安心して心理に関する支援を受けられるようにするため、国家資格によって裏付けられた一定の資質を備えた心理職が必要とされてきた。
法は、このような現状を踏まえ、公認心理師の国家資格を定めて、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とするものである。

文中で言及されている「国家資格に裏付けられた一定の資質を備えた心理職」こそ、公認心理師です。
医師や看護師、薬剤師、弁護士、公認会計士などさまざまな国家資格がありますが、それらと同様、臨床心理師も、国が定めた法律に基づいて業務が行える資格となるのです。

公認心理師法の施行について

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000181571.pdf

臨床心理士とどこが違うの?

「日本初」と紹介しましたが、これまでに心理専門職がなかったわけではありません。例えば、「臨床心理士」という資格は有名です。
新しくできた公認心理師と臨床心理士の違いはどこにあるのでしょうか。大きな違いは、公認心理師が国家資格であり、臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定する「民間資格」ということ。

では、仕事内容に違いはあるでしょうか。日本臨床心理士資格認定協会のWebサイトでは、専門業務として次の4つを挙げています。

  1. 臨床心理査定
  2. 臨床心理面接
  3. 臨床心理的地域援助
  4. 上記三つに関する調査と研究

臨床心理士の専門業務

http://fjcbcp.or.jp/rinshou/gyoumu/

業務を比較してみると非常に似ていますが、細かく見ると「調査と研究」という項目は臨床心理士にしかありません。そこに着目すると、「調査や研究に携わりたい」という方は、臨床心理士が向いているのかもしれません。
なお、公認心理「師」、臨床心理「士」と、「し」の漢字が異なる点も覚えておきましょう。

精神保健福祉士との違いは?

またメンタルヘルスを支える資格として、「精神保健福祉士」があります。公認心理師と同様に国家資格です。精神科ソーシャルワーカーとも呼ばれます。

精神保健福祉士は、医療機関や福祉施設などで精神疾患を持った患者を支え、社会参加や社会生活を支援するのが主な業務となりますが、公認心理師は、一般企業や学校、病院など、広いシーンで心理面からサポートしていく点に違いがあります。

「公認心理師」になるには?

国家資格である公認心理師になるには、国家試験に合格する必要があります。その試験や登録を担当しているのが、一般財団法人 日本心理研修センターです。

国家試験を受験するための条件

受験資格を得るには、大学と大学院の心理学系学部、学科で受験に必要な指定科目を履修することが必要です。

大学における必要な科目とは、心理学概論や発達心理学、福祉心理学、司法・犯罪心理学、心理演習などが挙げられています。さらに卒業後は大学院に進学するか、特定施設で実務経験を積む必要があり、最低6年を学ぶ必要があります。

受験の手引きやブループリントも確認

受験の条件などの詳細は、日本心理研修センターが公開している「公認心理師試験『受験の手引』デジタルブック」「ブループリント」などを確認してください。ブループリントとは、公認心理師試験設計表のことで、「公認心理師試験出題基準の各大項目の出題割合を示したもの」になります。

公認心理師試験「受験の手引」デジタルブック

http://shinri-kenshu.jp/assets_certified/digitalbook/html5.html#page=9


令和3年版 公認心理師試験出題基準・ブループリント

http://shinri-kenshu.jp/wp-content/uploads/2017/10/blue_print_201912.pdf

「公認心理師」に対応している大学の学部、学科

公認心理師になるには、大学で心理学系の学部、学科に入ることが前提となります。心理学部の臨床心理学科や、人間関係学科、人間社会学科などが対応しています。また、茨城大学大学院聖学院大学大学院、立命館大学大学院のように、公認心理師コースを設けている大学もあります。さらに放送大学では、公認心理師対応カリキュラムを学部段階で開設しています。

・一般財団法人 日本心理研修センター 公認心理師試験
http://shinri-kenshu.jp/