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これからの”まちづくり”に欠かせない【小型モビリティ】。高齢者や環境にもやさしい移動手段!  

人口減と少子高齢化が同時に進行中の日本。今後は公共交通機関が減少し、自動車の運転ができない「移動弱者」と呼ばれる人が増えていくことが予想されています。これは特に地方都市にて顕著になっています。これを解決する手段のひとつとして「小型モビリティ」が注目されています。今回は、これから普及すると思われる小型モビリティについて説明します。

超小型モビリティは、自動車より小さい手軽な移動手段

モビリティとは「移動しやすさ」を意味する言葉で、移動手段や乗り物を指して使われることが一般的です。私たちは、自動車やバス、電車などさまざまな乗り物に乗って移動しながら暮らしていますが、最近は「小型モビリティ」という新しいジャンルの乗り物が登場してきました。

この小型モビリティとは、自動車よりも小さく、乗車人数は1人、多くても2人までという電動モーターで動く電気車(BEV=Battery Electric Vehicle)のこと。「超小型モビリティ」や「パーソナル・モビリティ」、「マイクロ・モビリティ」などとも呼ばれています。

電動で構造や安全基準も自動車に比べて単純で作りやすく、自動車やバイクのように、2輪か4輪かという形式での区別もありません。また「新しいサービスを生み出そう」と考える企業が参入しやすいのもポイントです。

手軽に近場に行ける「超小型モビリティ」

これまでこのカテゴリの移動手段としては、主に自転車や原動機付自転車が使われてきましたが、高齢化によりその中間的な、コンパクトで運転が手軽なモビリティが検討されてきています。

最高時速60km以下に限定される超小型モビリティ

現在もっとも一般的な小型モビリティは、国土交通省が「超小型モビリティ」という名前で2013年から認定制度を進めているものです。1~2人乗りまでの最高速度60km/h以下の軽自動車で、高速道路(高速自動車国道)を走らないというタイプです。

2020年9月1日に道路運送車両の保安基準と道路運送車両法施行規則の改正によって、超小型モビリティは軽自動車として扱われるようになりました。自動車検査証に記載されることと、最高時速60km以下の車両であることを車両後面の見やすい位置に表示して走行することで、一般公道走行が可能になっています。運転には普通自動車免許が必要です。

ちなみに、以前から普通自動車免許で乗る、1人乗りの3~4輪車というタイプもありました。ただ、これは軽自動車ではなく50ccエンジンの第一種原動機付自転車になります。こちらと違い、軽自動車になる超小型モビリティは、EVで2人乗りが可能になります。

<トヨタ自動車:【C+pod】商品紹介動画>

高齢者向けの電動シニアカー

ほかに、「シニアカー」とも呼ばれる運転免許不要の電動カートや電動車いすがあります。これは歩行者扱いになり、歩道のみが走行でき、最高速度は時速6kmです。これ以上の速度が出るものは、自動車または原動機付自転車(原付きバイク)の扱いとなり、ナンバーを取得した上で車道しか走行できなくなります。

<WHILL:新しいクルマに、乗り換えよう>

立って乗る電動キックボード

似たような扱いでは、「電動キックボード(キックスケーター/立ち乗りスクーター)」もあります。

電動キックボードも速度が出せるタイプは、ブレーキや保安部品(※)を取り付けた上で、ナンバーを取得して車道のみを走行することになります。原付きバイクとして走行する場合には、運転時にヘルメットを装着しなくてはなりませんし、運転免許や自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の加入も必須になります。

電動キックボードは、モデルによっては折りたたみができて持ち運びや収納が簡単なため、公共交通機関や自家用車と組み合わせ、さまざまな活用方法が期待できます。都内では、最高速度を時速15kmまでにした電動キックボードのシェアリング・サービスの実証実験を規制の特例措置により始まっていて、今後の展開が期待されています。

※ 保安部品は、道路運送車両法に規定されている、速度計、ヘッドライト、ウインカー、ストップランプ、ミラー、ホーンといった安全上の装備

<LUUP「LUUP:電動キックボードシェアアプリ」>

電動自転車や電動アシスト自転車

人間がこがずにモーターのみで走行する電動自転車も、電動キックボード同様に、出力に応じて原付きバイクまたは自動二輪車として扱われます。こぐ力をサポートする電動アシスト自転車に関しては、国内での基準を満たしていれば自転車の扱いになります。

<電動自転車:COSWHEEL(コスウエル) SMART EV>

コンパクトシティーで役立つ小型モビリティ

小型モビリティは移動弱者の移動手段として注目されていますが、人口減少と高齢化の課題を解決するべく、なるべく小さくまとまって住むコンパクトシティーへと進むときにも重要な役割を担います。近場で気軽に移動できる環境に優しい移動手段が必要になるからです。

コンパクトシティーでは、都市間移動は公共交通機関を使い、都市ではなるべくまとまって住むことで、効率や利便性を高めようという考えで都市開発を計画します。この都市内での移動には、駐車スペースをあまりとらずCO2を排出しないEVの小型モビリティは、うってつけです。

宅配やデリバリーサービス、観光など、さまざまな利用方法を模索中

また、小型モビリティは個人の移動手段だけでなく、宅配やデリバリーサービス、観光など、さまざまな場面での活用が考えられています。観光利用では、レンタカー代わりに観光地を巡るプランで安価に乗れるようにすることは、すでに認定制度として多く実現されています。観光の場合には、移動速度が遅い方が、ゆっくりと景色を堪能でき好都合なため相性が良い使い方になります。

<超小型モビリティでめぐる岩美の海>

こういったケースで公共交通機関と小型モビリティを結びつけ、ITを使って相互に利用できるようにすることは、MaaS(Mobility as a Service)と呼ばれ、今後都市で効率よくモビリティを利用できるようにするための重要なポイントになります。これは、観光だけでなく、駅からの通勤通学でカーシェアリングを使うといった用途でも活用されつつあります。

さらに、宅配やデリバリーでは、無人で自動運転技術を使うことも技術的には可能です。これはすでにロボットベンチャーのZMPが、日本郵便などと公道での実証実験を開始しています。無人のロボットが個人宅に配送してくれるサービスも、そう遠くない未来に現れることでしょう。いずれ、ほとんどの小型モビリティが自動制御になり、それ専用のレーンが作られるということになるかも知れません。

<無人宅配ロボ DeliRo(デリロ):公道走行実証実験>

小型モビリティの使いやすい制度整備が課題

小型モビリティは、電動化技術の進歩により、ここ数年で急に使われはじめました。車道を走行できるようになった超小型モビリティについては、今後周知が進んでいくことと思われます。ほかのさまざまな小型モビリティは、現行法に基づいて利用や実証実験が行われていますが、今後新たなジャンルが生まれて法整備される可能性は十分にあります。

特に手軽に入手できてしまう電動キックボードは、歩道を違法走行して事故を起こして逮捕される事件もあり、今後検討が進むことと思われます。電動自転車も同様です。現状ではいわゆるバイクと同じ扱いで、歩道走行ができず活用しにくいため、手軽でラクな移動手段としてのルール作りを期待したいところです。

また、自動配送ロボットの扱いについては、先にあげた国土交通省による基準緩和による公道実証実験が進んでいるほか、経済産業省が「自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」でも議論されるなど、制度整備の議論が進められています。

「小型モビリティ」を学べる学部、学科

小型モビリティは、今後もクルマのようにパーソナルな乗り物の1ジャンルとして進化していくことになるでしょう。さらに自動運転技術も活用されていく分野でもあります。

車両の構造に関連しては、工学部など理系を目指すと基本的なことを学ぶことができます。より専門的な自動車工学、先端機械工学、交通機械工学といった学科もあります。

また、コンパクトシティーを見すえた都市計画として関わりたい場合には、社会工学やシステム情報工学といった学科があります。

『小型モビリティ』の活用が期待できる分野

移動弱者の移動手段、通勤通学、物流、配達、郵便、宅配便、宅配デリバリー、訪問業務、訪問介護、カーシェアリング、観光、営業訪問、パトロール、施設内移動、マイカー規制地域での運行

参考リンク

国土交通省「超小型モビリティについて」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000043.html

国土交通省「道路運送車両法施行規則等の一部改正について」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001360503.pdf