工学院大学の研究室

地球温暖化対策! 金属材料の高機能化につながる表面処理の研究【無機表面化学研究室|工学院大学】

今回紹介する研究室は、金属材料の高機能化につながる表面処理の研究に取り組んでいる工学院大学「無機表面化学研究室」。自動車などに使われる材料を表面処理技術によって軽金属に置き換えることができれば、燃費向上が実現できるので、地球温暖化対策としても期待されている研究です。

どんな研究をしている? 「無機表面化学研究室」

動画で研究紹介(4分)

金属に様々な機能を付与する表面処理技術の研究

この研究室で特に力を入れて取り組んでいるのは、水溶液中に金属を入れて電流を流し、金属の表面に酸化膜を形成するプロセスの研究です。この皮膜によって、変色や腐食しにくい機能を付与したり、色をつけることが可能になります。使用環境や使用目的、使用する金属の成分に応じて、必要な表面処理を選択することが重要です。

研究室では、軽金属の中でも特にアルミニウムに着目しています。銀白色のアルミニウムに表面処理をすることで、様々な製品のカラーバリエーションを増やすこともできるようになるのです。

製品に使われる材料を重金属から軽金属に置き換えることができれば、例えば自動車なら、車体重量が軽くなり、それによって燃費が向上し、場合によっては地球温暖化防止対策にもつながります。省エネルギーの観点でも、大きく貢献できる研究なのです。表面処理技術は、スマートフォンのボディやApple Watchのフレーム、アルミサッシなど、多岐にわたって活用されています。

学生が語る研究室の魅力

「吹奏楽部の先輩がこの研究室に入ってから、大好きな楽器の練習よりも研究に没頭している姿を見て、私も活発な研究室に入りたいと思いました。研究室や学内で議論したり、学会などで学外に発表して研究成果を知ってもらえることが楽しいです。卒業した後も名前が残り、研究した証となるのでやりがいを感じます。阿相先生は学会で発表する機会などもたくさん与えてくれて、やりたいことをやりたいだけやらせてくれます。この研究室だったから、研究が大好きになれました」(修士1年)

「授業の中でいくつかの化学実験を行う科目があり、その中で一番興味を持ったのが表面処理に関する実験でした。私は、アルミニウムの表面処理について、最適な条件などを研究しています。この研究室は学会で発表する機会も多いので、人前で発表する力などもかなり身につきました。研究室で着る白衣にはバックプリントが施されていて、毎年学部4年生がデザインを担当しています」(修士1年)

先生紹介(工学院大学 阿相先生)

阿相先生は、どんな先生?

「研究の機会や環境、学会での発表機会などを提供していますが、選択は本人次第です。ヒーロー、ヒロインは学生たちなので、私はマネージャー的な存在として、学生たちがベストパフォーマンスできるようにサポートしています」(阿相先生)

「多忙な中でも実験が進んでいるか気にかけてくれたり、私たちのために多くの時間を割いてくれていることがありがたくて、とても尊敬しています」(修士1年)

「先日、応用化学科の研究室対抗ソフトボール大会があったのですが、阿相先生も打席に立って、学生と一緒に楽しんでいました。たくさん話を聞いてくれるので、先生の部屋ではみんな何時間も話しこんでしまいます」(修士1年)

阿相先生から高校生へメッセージ

およそ100年前に理化学研究所で開発されたアルマイト(アルミニウムの陽極酸化皮膜処理)は、私たちの日常生活を支えています。その普及に多大な貢献をされた宮田聰先生は、後に本学で教授として指導にあたっていました。先人から引き継いだ技術を、よりよいものとして発展させて、後生につなげたいと思っています。

卒業後の進路

・約3割が大学院へ進学
・就職先は、アルマイト業界、メッキ業界、自動車関連など

「化学系に限らず、学んだことを活かせる場が多いです。安全面や品質管理、コスト削減などの観点からよりよいものを目指すためには、原理原則がわかっていないとものづくりができないので、需要は高まっています。大学院へ進まず4年で卒業しても、研究開発職での就職を実現できている学生も多いです」(阿相先生)

研究室情報

大学名 工学院大学
学部・学科 先進工学部 応用化学科
研究室 無機表面化学研究室
教員名 阿相 英孝 教授
研究キーワード ナノテクノロジー、表面処理、エネルギーデバイス、環境負荷低減、アルマイト処理
URL https://www.kogakuin.ac.jp/faculty/lab/ae_lab21.html