およそ30年続いた大学入試センター試験の後継として、新たに導入される『大学入学共通テスト(共通テスト)』の出願受付が9月28日から始まるなど、大学受験シーズンが本格的にスタートしました。
共通テストでは、新型コロナウイルス感染症の拡大が高校に大きな影響を及ぼしたことを踏まえ、本試験を2回実施したり、追試験を設定したりするなど、例年と異なるスケジュールとなっています。また、半数以上の大学で個別試験の出題範囲についても何らかの配慮を実施します。対応は大学ごとに異なるので、事前に確認するようにしましょう。
『大学入学共通テスト』は、第1日程と第2日程で2回実施。さらに新型コロナの影響を配慮し特例追試験も
国公立、私立大の入試は、大きく以下の3種類があります。
・一般選抜(一般入試)
・学校推薦型選抜(旧 推薦入試)
・総合型選抜(旧 AO入試)
国公立大の一般選抜では、およそ30年続いた大学入試センター試験に代わり、『大学入学共通テスト』が新たに導入されました。そのスケジュールについて説明します。
本試験の日程
共通テストの出願期間は2020年9月28日から10月8日まで。12月15日までに募集要項が発表されます。本試験の受験日は2021年1月16日と17日ですが、新型コロナウイルス感染症の影響による学業の遅れが考慮され、2021年度は本試験が2回(第1日程、第2日程)実施されるのがポイントです。
出願、試験名 | 実施日程 |
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大学入学共通テスト出願 | 9月28日〜10月8日(12/15までに募集要項発表) |
共通テスト【第1日程】 | 2021年1月16日、17日 |
共通テスト【第2日程】(追試) | 2021年1月30日、31日 |
共通テスト【特例追試試験】(第2日程欠席者対象) | 2021年2月13日、14日 |
第2日程は1月30日と31日。2021年3月卒業見込みの高校3年生の希望者で、新型コロナウイルス感染症の影響で学業に遅れが生じているなどと学校長が認めた場合に、第2日程を選択できます。本試験の第1日程を疾病などで受験できない場合の追試験としても受験できます。
また本試験の第2日程を疾病などにより受験できない場合の特例追試験が2月13日と14日に実施されます。
国立公立大学の前期、後期日程試験
共通テストによる第1段階選抜結果の発表後、前期日程試験が2月25日から始まります。合格発表は国立大が3月6日から、公立大が3月3日からです。
試験名 | 実施日程 |
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国公立大の前期日程試験 | 2021年2月25日〜 (合格発表:国立3/6〜、公立3/3〜) |
公立大の中期日程試験(一部の公立大) | 2021年3月8日〜 |
国公立大の後期日程試験 | 2021年3月12日〜 (合格発表:3/23まで) |
後期日程試験の実施は3月12日以降で、合格発表は3月23日までとなっています。前期日程、後期日程試験において新型コロナウイルス感染症などに罹患(りかん)した場合を考慮して、各大学で3月22日以降に追試験が実施される予定となっています。
国公立大の学校推薦型選抜、総合型選抜
国公立大の学校推薦型選抜、総合型選抜のスケジュールはどうなっているでしょうか。
学校推薦型選抜には共通テストを課すケースと課さないケースがあります。いずれも各大学への出願は11月以降で、締め切りは各大学によって異なります。共通テストを課す場合の合格発表は2月中旬。課さない場合の合格発表は1月中旬となっています。
総合型選抜にも共通テストを課すケースと課さないケースがあります。出願時期は9月以降が目安とされ、試験も10月から11月にかけてと長期間にわたります。
私立大の「一般選抜」は、共通テスト利用方式と一般方式の2パターン
では、私立大の入試スケジュールを見てみましょう。私立大の一般選抜には、「共通テスト利用方式」と「一般方式」があります。
試験名 | 実施日程 |
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一般選抜「共通テスト利用方式」 | 共通テストを受験後 ・前期日程:2月中旬(合格発表:2月下旬) ・後期日程:3月上旬(合格発表:3月中旬) |
一般選抜「一般方式」 | <出願> ・前期日程:12月下旬〜1月下旬(合格発表:2月下旬) ・後期日程:1月下旬〜2月下旬(合格発表:3月中旬) |
<試験> ・前期日程:2月1日〜中旬(合格発表:2月中旬〜下旬) ・後期日程:3月上旬〜中旬(合格発表:3月中旬) |
共通テスト利用方式
共通テスト利用方式では、国公立大と同様に共通テストを受験した後、前期日程では2月中旬に、後期日程では3月上旬に個別試験が行われます。合格発表は、前期日程では2月下旬、後期日程では3月中旬ごろです。
私立大でも、国公立大と同様に、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、本試験が2回実施され、特例追試験も実施されます。
一般方式
一般方式では、募集要項がすべて出そろうのが12月15日。出願期間は大学によって異なりますが、前期日程では12月下旬から1月下旬まで。後期日程では1月下旬から2月下旬までとなっています。
前期日程の入学試験は2月1日から中旬まで実施され、合格発表は2月中旬から下旬。後期日程の入学試験は3月上旬から中旬にかけて行われ、合格発表は3月中旬です。
私立大「学校推薦型選抜」は11月以降に出願開始
私立大の学校推薦型選抜については、高校によっては9月以降に校内選考を実施する場合があります。その後、11月以降に出願が始まり、11月中旬から下旬にかけて試験が実施され、12月初頭に合格発表となります。
これらのスケジュールは、あくまで一般的なものです。各大学や学部・学科によって日程が異なるため、詳細は各大学が公開する各種資料を確認するようにしてください。
「総合型選抜」の試験は10月以降。選考期間が長いのが特徴
私立大学の多くが実施している総合型選抜は、「AO入試」と呼ばれていた入試の後継となるもので、2020年度から導入されました。
これは、大学が求める人物像(アドミッション・ポリシー)に合う人物を採用するための入試で、求められる人物像は大学や学部・学科によってさまざまです。
総合型選抜の日程、方法
総合型選抜の出願時期は9月以降が目安とされ、試験も10月から11月にかけてと選考期間が長いのが特徴です。なかには3月まで試験を実施する大学もあります。
選考方法は書類審査や小論文、面接のほか、模擬授業やセミナー、プレゼンテーションなど種類も豊富です。最近は基礎的な学力を測るため、出願時に一定の学業成績基準が設けられるケースも増えています。
総合型選抜の注意点
総合型選抜は実施時期や合格決定が早いため、早い時期に志望校を決定する必要があり、そのため単願となる場合も少なくありません。万が一不合格だった場合を考えて、他校の一般選抜も視野に入れて受験勉強をしておいたほうがいいといえるでしょう。
新型コロナウイルスの影響に対する「配慮」。出題範囲など各大学で対応はさまざま
新型コロナウイルスの感染拡大で休校期間が生じたことで、学習に遅れや地域差が生じたとして、文部科学省では各大学に対し、個別試験での「配慮」を強く求めていました。具体的には、個別試験の出題範囲について、地理や歴史、理科などの科目について「(学習指導要領の範囲を超える)発展的な学習内容」を出題しない、回答する問題を選べるよう選択問題を設ける、「発展的内容」を出題する際には補足説明を書く、などの配慮を求めました。
配慮を表明した大学
文部科学省からの求めに対し、52%の大学が何らかの配慮をするとしています。茨城大学、岡山大学、関西学院大学などは、発展的内容を出さないと決めました。山口大学、長崎大学、室蘭工業大学は、選択問題を設定。発展的内容を出す場合に補足説明をつけるとしたのは、北海道大学や上智大学、東京理科大学などです。
個別試験を実施しない大学
横浜国立大学は、個別試験そのものを取りやめる決断をしました。全国から集まる受験生に、安心して入試に臨む場を提供するのは難しいという理由から、共通テストの成績と自己推薦書をもとに合格・不合格の判定をするということです。
従来通りに実施する大学
東京大学、岩手大学、早稲田大学、慶應義塾大学などは、出題範囲を変更しないとしています。
こうした、新型コロナウイルス対策に伴う試験実施上の配慮や、追試験の実施、振替の実施などについては、文部科学省が各大学の対応に関する情報をまとめたウェブページを公開しています(注)。ただし対応に不明な点がある場合は、各大学の入試担当者に電話やメールで問い合わせるようにしてください。
(注)文部科学省:令和3年度大学入学者選抜での新型コロナウイルス感染症対策に伴う大学等の試験期日及び試験実施上の配慮等の対応状況について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/mext_00060.html