高校生に大学での学びを体験してもらうことを目的に、さまざまな大学が公開講座を開催しています。大学教員が、自分の研究テーマや専門分野についてわかりやすく伝えることで、興味や関心を喚起するほか、高校生が進路を選択する際の参考にもなります。どのような大学が、どのような「高校生向け公開講座」を実施しているのかを紹介します。
「高校生向け公開講座」とは
「高校生向け公開講座」とは、大学教員が高校生を対象に講義や施設案内を行うものです。
中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」の第4章に「初等中等教育と高等教育との接続の改善のための連携のあり方」があります。その中で「高校生が個々の能力、適性、意欲、関心に基づいて具体的な進路選択を行うことができるよう、高大連携の取り組みを積極的に進めるべき」との見解が示されました。
それを踏まえ、オープンキャンパスで高校生向けの模擬講義、高校での出張講義などが行われるようになりました。その実施場所を大学に移して発展させたのが、高校生向け公開講座です。
受講料は無料としているところが一般的ですが、事前の予約申し込みは必要とされています。
公開講座のメリット
高校生にとってのメリットは、最先端の研究内容を知って理解を深めたり、興味や関心を高めたりできる、進路選択の参考にできることなどが挙げられます。
また大学側のメリットとしては、高校生に対し大学をPRできること、意欲のある学生を集められること、高校生の意識や実態を把握できることなどが挙げられます。
「高校生向け公開講座」を開催している主な大学
さまざまな大学が高校生向け公開講座を実施していますが、その中で主な大学を紹介します。
東京大学
東京大学では、金曜日の夕方に駒場キャンパスで「高校生と大学生のための金曜特別講座」を開催しています。
講義は50以上の高校にもリアルタイムで配信されます。そして講義後は、全国の高校生からの質問も受け付けています。
講義内容は、人工知能、iPS細胞、バイオテクノロジー、スポーツ科学、タイムマシン、ニュートリノ、8K映像、アメリカ外交、言語学、思想史、源氏物語など、文系から理系まで多岐にわたります。
東京大学:高校生と大学生のための金曜特別講座
http://high-school.c.u-tokyo.ac.jp/
<東大TV:國分功一郎「新型コロナウイルス感染症対策から考える行政権力の問題」ー高校生と大学生のための金曜特別講座>
東京理科大学
東京理科大学では「坊っちゃん講座」を開催しています。これは世界に潜む謎の解明に取り組んでいる研究者が、高校生や中学生向けにわかりやすく研究を解説する公開講座です。研究者が自ら歩んできた道についても語られます。
内容は「デジタルトランスフォーメーションによる酪農の新たな可能性」「ナノ粒子とナノ光の世界」「がん細胞に抗がん剤さがしを手伝ってもらう」「光を利用した環境浄化~梨状から宇宙まで~」「5G、IoT×AI -無線通信技術」など幅広い分野を扱っています。
ちなみに講座名は、夏目漱石の小説「坊っちゃん」の主人公が、東京理科大学の前身である東京物理学校を卒業したという話に由来しています。
東京理科大学:公開講座「坊っちゃん講座」
https://www.tus.ac.jp/event/entry/pr/bocchan2021/
青山学院大学
青山学院大学では、青山キャンパス、相模原キャンパスで公開講座を開催しています。講座テーマは「SDGs達成にむけてどう取り組むか:学術研究からのアプローチ」「自宅・オンラインで愉しむ芸術のかたち」「ゲームフルソサイエティ:社会はゲームとどう向き合うのか」「国際社会共通の価値としての人権ー青山学院大学法学部ヒューマンライツ学科のアプローチ」などが用意されています。
青山学院大学:公開講座
https://www.aoyama.ac.jp/outline/effort/extension/
大阪市立大学
大阪市立大学では、いくつかの高校生向け公開講座を開いています。
「高校生のための大阪市立大学先端科学研修」
「化学」は高校でも学びますが、それとは違った視点から先端科学に関する学びを体験し、おもしろさを感じてもらおうという活動の一環として、夏休みに開催しています。
「文学部を知りたい人のための『市大授業』」
大学における授業の雰囲気や学内の様子を、高校生が体験できるようにと開催しているものです。文学部主催で教員が自らの専門分野に関する講義を行います。
「数学や理科の好きな高校生のための『市大授業』」
数学や理科に興味関心を持つ高校生、あるいは予備校生を対象に、さらに興味を深められるようにと、理学部主催で開催してるものです。
大阪市立大学:高校生向け公開講座
https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/contribution/highschool/event
広島大学
広島大学では、5月末から10月まで、さまざまな学部がオンラインまたは対面で公開講座を開催しています。講義内容は、「超新星の最新観測(理学部)」「先端医療は今ー広島から世界へ2021(医学部)」「フィールド総合サイエンス;陸と海のSDGsに向けて(総合科学部)」「オオサンショウウオの生物学(両生類研究センター)」「やってみよう「法的思考」で身近な問題の解決(人間社会科学研究科)」など、理系から文系まで多岐にわたっています。
広島大学:高校生対象公開講座一覧
https://www.hiroshima-u.ac.jp/AC/kokai/31_koza
三重大学
三重大学では、以下のようなテーマで高校向け公開講座(高大連携授業)を開催しています。
前期(4月~8月)は「倫理学の基礎知識」「人体の扉:神経と運動」「西洋近代史」「食品の化学・食品機能」「中国女性史」「現代社会と健康」「化学の特徴の理解」などが受講できます。
後期(10月~2月)は「人体の扉:内臓と脈管」「自然際学と防災・減災」「森と土壌」「三重県の防災と復興」「演劇の基礎知識と実践」「暮らしと看護」「世界の地域保健と医療」「先端医療工学を学ぶ」などが受講できます。
三重大学:高校向け公開講座(高大連携授業)
https://www.ac.mie-u.ac.jp/activity/koudai/about/post.html
香川大学
香川大学では、高校生が、大学生と一緒に授業を受けることができます。インターネットで使われている暗号技術について学ぶ「現代暗号入門」や、小中学校の教師になりきって授業動画コンテンツを作成する「学習環境の現在と未来」のほか、「民法入門」「刑事法入門」「政治学入門」「方角入門」などが高校生向けに公開されます。
香川大学:高校生を対象とした公開授業
https://www.kagawa-u.ac.jp/cooperation-community/course/20433/
事前に開催状況を確認しよう
今後の新型コロナウイルスの感染状況、収束状況により、予定されていた公開授業が中止になったり、延期になる場合があります。また対面で開催予定だったものがオンラインに変更になる可能性もあります。開催日が近づいてきたら、大学のWebサイトなどで開催状況を確認しておきましょう。