3DCGで作られたオンライン上の仮想空間は、これまでもインターネットが普及するにつれて、さまざまなサービスが生み出されてきました。最近になってこれらは「メタバース」と呼ばれ、新しいコミュニケーション方法として再注目されています。
「メタバース」は仮想空間でのコミュニケーションサービス
「メタバース」は、「メタ(超)」+「ユニバース(世界)」を合わせた造語で、仮想空間上でコミュニケーションを取るサービスの一種です。
もともとは、ポストサイバーパンクSF作家ニール・スティーヴンスンの小説「スノウ・クラッシュ(1992年)」内の仮想空間の名称としてメタバースという言葉が使われていたことから、このキーワードが生まれました。小説の主人公はメタバース内のハッカーとして描かれています。
かつて第1次メタバースブームがあった
オンライン上の仮想空間サービスは、特段新しいものではありません。2003年から始まり、当時かなり話題になった「セカンドライフ」があります。米ドルに換金可能なサービス内の独自通貨(リンデンドル)があり、土地の購入などもでき、日常とは違った生活がバーチャルで楽しめるサービスでした。サービスは現在も継続中です。当時は有名企業が多数参入していて、メタバースの先駆といえるでしょう。
Second Life(セカンドライフ)
https://secondlife.com/?lang=ja-JP
<Second Life QuickTips>
小説「スノウ・クラッシュ」が出版されたのが1992年ですので、そこからの数年が、セカンドライフを含め最初のブームだったといえるでしょう。当時の日本でも「PlayStation Home」や「はてなワールド」「アメーバピグ」など、いくつかのサービスが生まれました。スマホ版のアメーバピグは続いていますが、多くはすでにサービスを止めてしまっています。
コロナ禍でメタバースサービスが再燃
しかし近年になって、メタバースのサービスが再燃しつつあります。これには、インターネット回線の高速化、5Gモバイル回線の普及、3DCG(3次元CG)の高精細化、VRやARの普及、スマホの普及など、テクノロジーの進化があります。そして、新型コロナウイルスのまん延により、リモートでコミュニケーションを取らざるをえなくなっていることも、大きな要因と考えられます。
リモートワークを効率的に進めるためのバーチャルオフィスも提供されつつあります。例えば、Facebookが提供している「Horizon」。これは、VRゴーグル「Oculus Quest 2」を使用してVR空間に設置された会議室に参加する方式のバーチャルオフィスです。
<Facebook Horizon>
ゲーム内の世界を活用する事例も多い
ゲーム内仮想世界もメタバースの一種です。ニンテンドーSwitch向けのゲーム「あつまれ どうぶつの森」では、ユーザーが自分の島を作りあげ、ユーザー同士がお互いの島を行き来できます。ゲーム内でオリジナルデザインのアイテムを分けたり、就職活動をしたりすることが話題にもなりました。
またオープンワールドゲームと呼ばれる3DCGゲームは、仮想空間の中を動き回れる自由度の高いゲームなのですが、その中のイベントとして、有名アーティストによるコンサートを開催したりしています。
例えば、「フォートナイト」という無料プレイ可能なオープンワールドのバトルロイヤルゲームでは、2021年8月7日~9日に、歌手のアリアナ・グランデがコンサートを行って話題をさらいました。これ以前にもマシュメロとトラビス・スコットもライブを行っていて、今後もさまざまな体験やイベントスペースとして、オープンワールドゲーム内仮想空間の可能性は十分に感じられます。
<Rift Tour featuring Ariana Grande>
ブロックチェーン技術が「メタバース」をリアルに近づける
アバターを操作して仮想世界を散策するだけでは、単なるグループチャットの延長に過ぎません。飽きれば人が集まらず、いずれ使われなくなってしまいます。これが2000年代に廃れてしまった原因です。
しかし今になって、再度メタバースに注目が集まるようになった理由は何でしょうか。ひとつに、NFT(Non-Fungible Token)や仮想通貨が実用的になってきたことも大きく関係していることが挙げられます。
メタバース内のアイテムが「NFT」で価値が高まる
ブロックチェーンの技術を使うNFTは、そのもの以外では替わりがきかない(非代替性)トークンで、複製が簡単にできるデジタルデータでありながら、唯一のモノとして所有する権利を保障できます。簡単にいえば、NFTによって、メタバース内のデジタルデータもオリジナルとして所有することができるようになるということです。
そして、そこに価値も生まれます。例えば、アバターが着る衣装、武器などのアイテム、土地、家、家具といったメタバース内で利用するものを所有する権利に、NFTを使って唯一無二の価値がつくことになります。
「メタバース」で仮想通貨の新たな経済圏が生まれる
ゲーム内のレアアイテムなどを売買する行為は、RMT(Real Money Trading)と呼ばれ、ゲームの規約によっては禁止されている場合もありますが、メタバースと仮想通貨がつながると、新たな経済圏が生まれることになります。
例えば、ディセントラランドというメタバースは、イーサリアムのブロックチェーンにて作られていて、MANAという仮想通貨で架空の土地や洋服などを売買することが可能です。そしてMANAは、仮想通貨取引所で現金と交換することができます。また、似たようなメタバースにクリプトボクセルズもあり、こちらはNFTのアートを飾って売買ができます。
<Decentraland(ディセントラランド)>
メタバースは、日本を含め多くの企業が参入を表明しています。国内では、GREEグループの「REALITY」は、日本で人気のアニメ調アバターを使ったスマホライブ配信SNSアプリを軸にメタバースを推進していくようです。今後インターネットサービスの主流になっていく、という見方もあり、どのように進展していくのか興味が尽きない分野です。
<REALITY Metaverse Trailer 2021>
「メタバース」を学べる大学の学部、学科
メタバースそのものを学ぶことができる学問はまだありませんが、基本的な技術は3DCGやVR、AR、人工知能(AI)、プログラミングです。工学部や理工学部であれば基礎を学ぶことができます。また、プログラミングを学び、ゲームの知識を得ておくことも、メタバースへの理解を深める助けになるでしょう。将来、メタバースにかかわりたい方は、ソフトウエア、メディア、コミュニケーション、情報といった学科を選ぶことをおすすめします。
また、仮想通貨やNFT、仮想空間と実社会の関係などは、経済学、経営学、商学、社会学などで学ぶことができます。
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