大学生の新生活

大学でも警戒。霊感商法などで話題の【カルト】とは? 若い世代が格好のターゲットに!

安倍晋三元首相が暗殺されるという歴史的な事件が発生しました。事件の背景として注目されているのが、問題ある宗教団体との関係です。社会的問題を引き起こす宗教は「カルト」とも呼ばれ、実は大学生にとっても「カルト」はひとごとではありませんし、これから大学へ進もうと考えている高校生に、も覚えておいてほしいことがあります。今回は、カルトの活動や注意すべきポイントなども含めて解説します。

ニュースで話題となっている「霊感商法」って何?

安倍晋三元首相の事件以降、政治と宗教団体の関係が大きく注目されています。これまでに社会問題を引き起こした宗教団体と多くの大物政治家が、国民の知らないところで関係を築いていたことは、大きな衝撃を与えました。

今回の事件において、犯行の動機にも影響したとされるのが、信者から大金を集めたとされる「霊感商法」です。宗教団体の資金源とも見られています。霊感商法とは、一体どのようなものでしょうか。

霊感商法は、今から40年近く前の1980年代ごろより社会問題として注目を浴びた悪徳商法の一種です。連日メディアに取り上げられ、50歳以上の人であれば、なじみのある「キーワード」ですが、2000年以降はメディアで取り上げられることも少なくなり、若い人は今回初めて耳にしたという人もいるでしょう。

霊感商法の具体的な手法を見ると、最初に占いや霊が見えるなど、超自然的な力があると相手に信じ込ませます。そして「悪霊が憑いている」「呪われている」などと不安をあおり、解決策として単なる「つぼ」や「印鑑」「絵画」「数珠」「水晶玉」などを不当に高い金額で購入させます。

警察も、霊感商法を悪徳商法のひとつとしており、注意喚起を行ってきました。

・警視庁:霊感商法
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/shoho/reikan.html

なぜ「霊感商法」にだまされるのか? 背景には日本の風習がある

日本では「霊」の存在を自然と肯定する文化が深く根付いています。先祖の霊を迎えるとされるお盆の風習なども、そうした一面といえるでしょう。

薄暗い夜の墓場を薄気味悪いと感じ、「肝試し」の場所に選ばれるのも、霊的な存在を心のどこかで信じている証拠です。「心霊写真」「こっくりさん」「金縛り」などを霊の影響と信じている人もいるかもしれません。

初詣などで「おみくじ」「お守り」を買ったり「おはらい」を受ける人もいます。信じる度合いもさまざまですが、「占い」を信じたり、「縁起」や「ジンクス」などを何気なく信じていたり、気にかける人もいます。

日本にはこうした慣習から、自然と「霊」の存在を受けられてしまう土壌があるといえます。博報堂生活総研の2020年に実施した調査では32.5%が「占い」「おみくじ」を信じるとしており、33.3%が「霊魂」を信じると回答しました。

・博報堂生活総研:占い・おみくじを信じる
https://seikatsusoken.jp/teiten/answer/1362.html

信教の自由は大切だが、やってはいけないこともある

言うまでもなく「霊」の存在は科学的に証明されていません。とはいえ、霊や超自然的な現象を信じるかについては、個々人における心の中の問題です。日本国憲法では「信教の自由」が保証されており、否定されるものではありません。

しかし、信教の自由は保証されていますが、宗教団体が何をしても良いわけではなく、法律を守る必要があります。他者の権利を侵害するなど反社会的な行為まで許されるわけではありません。

「霊感商法」に関しては、不安に漬け込むことで「不当に高い金額」を払わせるなど、従来の宗教と大きく異なっています。被害の訴えも多く、社会問題に発展するなど、社会的に許容できないものでした。

1990年代には、オウム真理教が相次いで殺人事件を引き起こすなど「宗教」の裏側で反社会的な行為が行われることもあり、社会問題を引き起こす宗教集団は「カルト」とも呼ばれ、社会から厳しい目が向けられるようになりました。

そのなかで、多くの政治家とトラブルを抱える宗教団体の関係が今回の事件で明らかとなり、衝撃を与えたのです。

カルトの標的となる大学生

問題が指摘されるカルトですが、信者の獲得に余念がありません。そのなかでも大学に入ったばかりの新入生は引き込みやすい標的となっています。なぜ大学生が狙われるのでしょうか。

ひとつは高校を卒業したばかりで、社会経験が少ないことが挙げられます。社会問題への知識も乏しく、警戒心も弱いのです。

またひとり暮らしを始めたばかりで、周囲に相談できる人が少ないことや、就職活動など将来に不安を感じている場合もあります。不安を感じているところに、やさしい声をかけられれば、誰もがうれしいと感じ、頼りたくなるのは自然なことです。

大学という比較的自由な環境も悪用されています。高校であれば、部外者がうろうろしていればすぐに捕まるでしょう。しかし、大学は開かれた環境であり、学生の数も多く、不特定多数の人間が出入りしています。

公認サークルだけでなく、非公認サークルなども活動しており、カルトなども目立たず活動することができるのです。

問題ある宗教団体は、本来の宗教勧誘とはまったく関係ないサークルなどを名乗り、ターゲットを探しています。最近では、国際交流、環境保護やSDGsなどのボランティアなど、一見社会貢献を行っているサークルを偽装しているケースもあります。

最初は「霊感」や「宗教」を信じていなくても、組織にいるとマインドコントロールされ、いつのまにか信者になってしまった、というケースもあります。オウム真理教の事件では科学に強いはずの理系学生が多く入信していました。

誰もがハマるおそれがある巧妙な手口

「だまされるはずはない」と思っていても、勧誘はマニュアル化されており、大変巧妙です。ひとりでいるところが狙われ、最初のうちは宗教と伝えずに親しくなり、人間関係を構築した上で帰属意識をもたせ、抜け出しづらい環境を作るのです。

アンケート調査やコンサートの誘いにみせかけて近づいたり、大学生であれば興味を持つ「就職セミナー」で興味を引くなど、警戒心を持たれないように近づき、個人情報などを聞き出します。TwitterなどSNSで接触する場合もあります。

厄介なのは末端の信者は、本気でカルトの教義を信じていて、「だまそう」という気持ちはなく、本気で良いものと信じ、勧めてくる点にあります。自分が被害者であると気が付かず、さらに被害者を増やしてしまうことも少なくないのです。

<大阪大学:学生の皆さんへ:カルト集団などの不審な勧誘に注意 その1>

<大阪大学:学生の皆さんへ:カルト集団などの不審な勧誘に注意 その2>

<大阪大学:学生の皆さんへ:カルト集団などの不審な勧誘に注意 その3>

カルトの動きに大学も警戒

大学もマルチ商法などとあわせてカルトの活動に警戒しており、ウェブサイトなどを通じて注意喚起を行っています。

もし勧誘された場合や、不審と思われる人物が接触してきた場合は、これまでも付き合いがあり、信頼できる友人や家族に相談することはもちろんですが、大学の学生課などに相談できる場合があります。

大学では、自分が勧誘された場合だけでなく、勧誘行為を見かけた場合は通報するよう呼びかけているケースもあります。

新興宗教は有名な宗教の名前を出すことで信用を得ようとする場合があります。宗教をベースに設立された大学もありますが、具体的な新興宗教とは無関係であることを強調し、具体的な宗教団体の名称を挙げ、注意喚起を行っている大学もあります。

・法政大学:危険な団体による勧誘について
https://www.hosei.ac.jp/campuslife/guide/chui/trouble/shukyo/?auth=9abbb458a78210eb174f4bdd385bcf54

・青山学院大学:「キリスト教」を名乗る団体について
https://www.aoyamagakuin.jp/rcenter/warning.html

「消費者契約法」を覚えておこう

「霊感商法」の対策として、政府は2018年に消費者契約法を改正し、2019年に施行となりました。合理的に判断することができない事情を利用して、不安をあおって契約させた場合、契約を取り消しすることができます。

悪徳商法より消費者を守る内容となっており、「霊感商法」はもちろん、恋愛感情を悪用した「恋人商法」や、就職などの不安を悪用して契約を迫った場合などにも有効です。ぜひ覚えておきたい法律のひとつです。

しかし、法律も万能ではありません。あくまでも消費者契約が対象であり、寄付行為などが返金されるとは限りません。「霊感商法」に関しては、その性質上、当事者がだまされたと感じず、そのまま信じ込んでしまう問題もはらんでいます。身を守るには、できるだけカルトに近づかないようにすることが一番といえるでしょう。

・消費者庁:早分かり! 消費者契約法(PDF)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/public_relations/pdf/public_relations_190401_0001.pdf