大学生の新生活

そのSNS発信大丈夫? 軽い気持ちが招く罠、学生生活での【デジタルタトゥー】に要注意!

ソーシャルメディアの発展により、誰でも簡単に情報を発信できるようになりました。SNSは大学生活を豊かにする上で重要なツールと言えるでしょう。しかし、使い方を間違えると大変です。問題ある言動や失言などがインターネットから容易に消せなくなってしまう「デジタルタトゥー」が問題となっています。今回はデジタルタトゥーについて解説します。

誰にでもある、思い出したくない「苦い思い出」

誰にでも失敗はあるもの。思い出すと赤面するような、忘れてしまいたい過去の思い出は多くの人が何かしら抱えていることでしょう。

失敗やミスは、成長するためのスパイスみたいなもの。失敗から学びつつ、自分や周囲の人の記憶からは徐々に忘れ去られ、何気ない日常に戻っていく……のはひと昔前の話です。

デジタル技術が発展した今日、そのような単純な話ではなくなりました。「黒歴史」とも言える「消し去りたい過去」は、本人の意思に関係なくインターネット上に残り続けるリスクが存在しているのです。

消せない「デジタルタトゥー」の怖さ

インターネットより消すことが難しい個人の情報は、「デジタルタトゥー」とも呼ばれています。「digital(デジタル)」と「tattoo(入れ墨)」を組み合わせた造語です。

「入れ墨」は、わざと皮膚に傷をつけ、色素を沈着させて、模様や文字を描くものです。一度彫ってしまうと、簡単には消せなくなります。

今でこそ「入れ墨」はファッションであったり、アートとも解釈されることがありますが、歴史をひもとくと、その性質から、刑罰として入れられたり、囚人の識別子に利用された暗い過去もあります。

サイバー空間において消したくても消せない個人に関する情報が、本人の意図に反して残り続ける問題を、入れ墨にたとえたのが、デジタルタトゥーなのです。

<福岡県警察公式チャンネル STOP!デジタルタトゥー>

ちょっとした過ちが忘れ去られない世の中

完璧な人間などいません。誰でもうっかり失言や不適切な行動を取ってしまったり、ときには罪を犯してしまうこともあります。そのような場合も、謝罪や反省したり、罪を償うことで、社会に復帰し、再チャレンジする機会が与えられています。

「人の噂も七十五日」ということわざがあります。口づてだったアナログの世界では、ときとともに情報の正確さが失われ、徐々に人々の記憶からも忘れ去られていきました。

しかし、デジタルの世界は少し違います。「デジタルデータ」は、完全かつ容易に複製したり、再利用できることが強みです。

失言や問題ある言動、炎上騒ぎ、ニュース報道など、「過ち」の記録についても、デジタルタトゥーとしてサイバー空間に蓄積されていきます。

しかも、こうしたデータは検索エンジンによって簡単に探し出すことができ、大量のデータに埋もれてしまうこともありません。時間が経過しても風化せず、昨日の出来事のように掘り起こされてしまうのです。

炎上との相乗効果

特に社会的に非難されるような発言、行動などは瞬く間に「炎上」し、情報が複製され、多方面へ拡散します。そしてデジタルタトゥーとして残ってしまうのです。

コンビニや飲食店のアルバイト店員がイタズラした動画などをTwitterへ投稿し、拡散炎上する事件もたびたび発生しています。

匿名アカウントであっても、投稿内容などから本人の素性が特定されることも少なくありません。実際にこうした炎上騒ぎから、学生が退学となってしまうこともあります。

本人はちょっと目立ちたい程度のつもりだったのかもしれません。しかも、問題が解決しても、記録がデジタルの世界へ半永久的に刻まれてしまえば、忘れ去られることはありません。

さらに臆測や誤解、デマなども一緒に記録され、ときには就職活動や結婚など人生にも影響を与えてしまうことさえもあるのです。

デジタルタトゥーの問題に巻き込まれないためには

たしかに問題行為は非難されるべきものかもしれません。しかし、ちょっとした過ちによって人生そのものが狂ってしまうのは明らかに行き過ぎで、おかしな話です。

社会では「デジタルタトゥー」に対してどのように向き合っていけばよいのでしょうか。また学生として普段から気をつけるべきことについても考えてみます。

注目される「忘れられる権利」

合理性に欠いた過度なデータの記録について、「忘れ去られる権利」の必要性も指摘されています。一定の期間を経たものは、正当な理由なく記録されておくべきではなく、忘れ去られることも「人権のひとつ」であるとの考え方です。

日本の法律には明文化されていませんが、事実であっても名誉毀損(きそん)などにあたり、削除が認められることもあります。海外の法制度では、忘れられる権利が言及されるケースも出てきました。

とはいえ、問題の解決にはまだまだ時間がかかりそうです。データが多方面に拡散してしまうと、所在する場所を調べたり、書き込んだ人物などを特定しなくてはなりません。被害の回復には膨大なコストと労力がかかるのです。

こうした問題に対し、欧州連合(EU)では検索結果に表示させなくすることを「忘れられる権利」として認める方向に動きました。

一方「忘れられる権利」と同時に、私たちは「表現の自由」「知る権利」といった別の権利も有しています。例えば、再犯率が高いとされる犯罪に関する情報などは知りたいと考える人もいるでしょう。これら権利は対立する側面があり、いかにバランスを取っていくべきか課題となっているのです。

<中央大学公式 知の回廊 第111回「忘れられる権利」>

そもそもデジタルタトゥーを作り出さないようにする

何気ない発言や言動が、思いがけず「デジタルタトゥー」となってしまうこともあります。注意すべきポイントを考えてみましょう。

ブログやソーシャルメディアへの書き込みは、フォロワーだけでなく、不特定多数が閲覧しています。投稿の内容が、人格への攻撃や差別、ハラスメントなどにあたらないか、気を配らなければなりません。あとから削除しても誰かがスクリーンショットなどを撮影しており、手遅れとなることもあります。

思ったことをすぐに書き込むのではなく、第三者が読んだらどのように感じるか想像してみるなど、ひと呼吸おいてから投稿するよう心がけてください。

いつまでも学生時代が続くわけではありません。年齢によって立場が変わることも意識しましょう。学生時代の内輪によるちょっとした「おふざけ」の投稿であっても、就職活動の際、面接官に目に触れる、という可能性もあるのです。

「匿名だから大丈夫」はキケン

「匿名だから」との油断は禁物です。投稿内容や写真などから本人を特定されることもあります。

また第三者が閲覧できないプライベートなチャットであっても、注意してください。良好な関係であれば問題にならなくとも、関係が悪化した場合など、発言内容が外部に暴露されてしまう、といったこともあります。

特に性的な写真などは絶対に撮影しない、送信しないこと。脅しの道具として悪用されたり、腹いせなどの「リベンジポルノ」として悪用されるおそれもあります。パートナーであっても要求に応じない、要求しないことが大切です。

デジタルタトゥーが厄介なのは、「ついうっかり」「大丈夫だろう」といったちょっとした甘さによって生じてしまうことです。「注目されたい」「ノリが悪いと思われたくない」「相手に嫌われたくない」といった軽い気持ちで行ったことが、思わぬ形で残ってしまうかもしれません。

デジタル社会において、自分の身は自分で守るという意識はとても大切です。大学生活において発言に責任を持って十分注意しつつ、有効にデジタル技術を活用していく必要があります。

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